年内最後の第4回公募がスタート! 締切りは2025年11月下旬予定
最低賃金の年平均成長率の上昇に伴い、給与支給総額の目標設定値アップが必要
最低賃金引上げ特例の要件緩和 ⇒ 対象拡大の可能性
最低賃金引上げ特例の適用事業者は、加点措置による採択可能性アップ
事業場内最低賃金を63円以上引き上げる事業者にも加点措置が追加
今年から新たにスタートした省力化投資補助金(一般型)は、すでに第2回までの採択発表が行われていますが、9月19日より第4回公募がスタートしました。
省力化投資補助金(一般型)は、年3~4回実施される予定であることが公表されていたので、今回が年内最後の公募になるかと思われます。この記事では、第4回公募の概要と、3回公募からの変更点を中心に解説します。
省力化投資補助金(一般型)第4回公募のスケジュール
省力化投資補助金第4回公募のスケジュールは以下の通りです。公募開始日 | 2025年9月19日(金) |
申請受付開始日 | 2025年 11月上旬(予定) |
公募締切日 | 2025年 11月下旬(予定) |
採択発表日 | 後日発表 |
具体的な日付はまだ発表されていませんが、概ねのスケジュールが発表されました。必要書類の準備や加点項目の申請、事業計画書の策定にも時間がかかります。内容を吟味してブラッシュアップするためにも、早めに準備を始めましょう。省力化投資補助金(一般型)は、生産・業務プロセスなどの効率化を目的として、オーダーメイド設備や個別の現場に応じて組み合わせた汎用設備、システム等を導入する事業計画を支援する補助金です。基本要件や補助上限額、補助率については、以下の通りです。
省力化投資補助金(一般型)の基本要件
基本要件は、以下の①~④を満たす3~5年の事業計画を策定し、それに向けて取り組むことになります。
① 労働生産性の年平均成長率+4.0%以上増加
② 給与支給総額の年平均成長率+2.0%以上増加、
又は1人あたり給与支給総額の年平均成長率が事業実施場所の地域別最低賃金直近5年間の年平均成長率以上
③ 事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上の水準
④ 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表等
(従業員21名以上の場合のみ)
最低賃金引上げ特例適用事業者の場合、 基本要件は①、②、④のみとなり、地域別最低賃金を上回っていれば、問題ありません。
最低賃金引上げ特例適用事業者でなく、要件②③が未達の場合は、返還が求められます。
省力化投資補助金(一般型)の補助上限額及び補助率
省力化投資補助金(一般型)の補助金額等は以下の通りです。
従業員数 | 補助上限額 | 補助率 |
---|
5人以下 | 750万円(1,000万円) | 中小企業1/2 小規模企業者・小規模事業者、再生事業者2/3 補助金額1,500万円を超える部分はいずれも1/3 |
6~20人 | 1,500万円(2,000万円) |
21~50人 | 3,000万円(4,000万円) |
51~100人 | 5,000万円(6,500万円) |
101人以上 | 8,000万円(1億円) |
補助事業期間内に①給与支給総額を年平均+6%以上増加 ②事業場内最低賃金を年額+50円以上増加させる事業計画を策定して申請する事業者は、()の値に補助上限額が引き上げられます。申請時に賃金引上げ計画を従業員に表明する必要があります。達成できない場合は、引き上げ前の金額に減額されます。
主な変更点① 1人あたり給与支給総額の目標設定の目安となる年平均成長率が上昇
基本要件②については、要件を満たす数値を目標値として設定し、それを達成することが要件となります。達成の判定には、「給与支給総額」か「1人あたり給与支給総額」のどちらか一方が用いられますが、応募時点では、両方の目標値を策定する必要があります。
地域別の最低賃金は、毎年改定されますが、2025年度は過去最高の引上げ額となりました。省力化投資補助金(一般型)の第4回公募からは、2020年度を基準とし、2021年度~2025年度の5年間の都道府県別の年平均成長率以上となる目標値を設定しなければならないため、大幅な引き上げとなります。
参考資料によると、直近5年間の年平均成長率は一番低い東京都・神奈川県で3.9%、一番高い徳島県は5.6%になっており、これまでより高い目標設定が求められます。
達成の判定は、「給与支給総額」か「1人あたり給与支給総額」のどちらかが達成していれば問題ありませんが、いずれも達成できない場合は、補助金の返還が求められるため、目標設定について自社の実現可能性を慎重に検討することが大切です。
また、今年度、地域別最低賃金が大幅に引き上げられたことに対する支援策として、最低賃金引上げ特例の対象が拡大しました。最低賃金引上げ特例の要件を満たす中小企業は、通常1/2の補助率が2/3に引き上げられます。
≪第3回公募まで≫
2023年10月~2024年9月の間で、3か月以上地域別最低賃金+50円以内で雇用している従業員が全業員数の30%以上いる中小企業
≪第4回公募≫2024年10月~2025年9月の間で、3か月以上地域別最低賃金未満で雇用している従業員が全業員数の30%以上いる中小企業
体的に東京都にある従業員100人の事業者の場合を例に挙げます。
2025年10月2日までの東京都の最低賃金は1,163円、10月3日の改定後は1,226円です。
第3回公募では、2023年10月~2024年9月の間で3か月以上、1,213円(1,163円+50円)以下で雇用している従業員が30人以上いなければ、対象になりませんでした。
今回の要件緩和により、東京都の改定後の最低賃金1,226円以下で雇用している従業員が30人いれば、補助率引上げの対象となります。
この要件緩和により、第3回公募では特例適用対象外でも、新たに対象となる場合もあるので、改めて自社の状況を確認してみてください。
第3回公募までの加点項目6項目に加え、2項目が追加されました。
第3回公募までの加点項目
事業承継又はM&A を実施した事業者(申請者)に対する加点
事業継続力強化計画/連携事業継続力強化計画に対する加点
成長加速マッチングサービスに登録している事業者に対する加点
賃上げ加点(事業計画期間了時点における給与支給総額の年平均成長率 4.0%以上増加及び、事業場内最低賃金を毎年3月に事業実施都道府県における最低賃金より+40 円以上の水準)
第4回公募から追加された加点項目
地域別最低賃金引き上げに係る加点(上述、主な変更点②の最低賃金引上げ特例の対象となっている事業者)
事業場内最低賃金引き上げに係る加点(2025年7月と応募申請直近月の事業場内最低賃金を比較し、「全国目安で示された額(63円)」以上の賃上げをした事業者)
「地域別最低賃金引き上げに係る加点」については、最低賃金引上げ要件を満たす事業者は、補助率も引上げとなり、加点の対象にもなるということです。
「事業場内最低賃金引き上げに係る加点」について補足すると、地域別最低賃金は、まず中央最低賃金審議会が示す引上げ目安をもとに、各地方最低賃金審議会で話し合われ、最終的には各都道府県の労働局長が具体的な額を決定します。この目安額は、地域によって63円と64円で提示されていましたが、多くの地域で目安額以上の引上げで決定しました。
今回の大幅賃上げの発表を受け、厳しい経営状況においても、全国的な最低賃金の引上げ幅以上に賃上げの努力を行った企業を応援するため、採択審査において加点措置を実施されることになりました。
この「事業場内最低賃金引き上げに係る加点」は、最低賃金引上げ特例の対象外の事業者でも、事業場内最低賃金引き上げることで、加点を得ることができます。
省力化投資補助金(一般型)の採択率は、第1回公募が68.5%、第2回公募60.9%と、中小企業を支援する他の国の補助金に比べ、非常に高い水準となっています。また、今回公募の変更点により、最低賃金引上げ特例の対象となっている事業者にとっては、優遇措置による採択可能性の向上が期待できそうです。
省力化投資補助金(一般型)は、人手不足や生産性向上といった課題に対し、実効性の高い支援策です。上手に活用することで、単なる設備投資にとどまらず、「働き方の見直し」や「収益構造の改善」につなげることも可能でしょう。今後の経営基盤を強化するためにも、ぜひこの機会を前向きに検討してみてください。