製造業は使えない・使いにくい補助金!?

2024/11/05
令和5年補正予算で事業再構築補助金が再編された省力化投資補助金(正式名称:中小企業省力化投資補助事業)。カタログから省力化製品を選び、早期の省力化を実現することで付加価値や生産性の向上、賃上げなどにつなげることを目的とした補助金です。
導入したい設備がカタログに登録されていない場合、導入ができないので「使えない・使いにくい補助金」と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
現状、特定の業種や業務に特化したものが多く、製造業の方は、自社に適した設備が無いと感じて省力化投資補助金を活用できていない実情も多いかと思います。
しかし、制度としては非常に利用価値が高く、整備されつつあるので、今後にぜひ期待したいところ。
本記事では製造業にとって省力化投資補助金の制度が使いやすいのかどうか考えてみたいと思います。

結論:今はまだ使いにくい。今後は製造業にも使いやすい補助金に

省力化投資補助金は、省力化効果が既に審査されている製品をカタログから選べば良く、事業計画の策定にかかる負担も比較的少ないことから、期間や手間が大幅にかからず制度としては非常に使いやすい補助金と言えます。
カタログに登録されている省力化製品は、公募開始当初は数種類のみで、対象となる業界が限定的でしたが、現在は登録製品も徐々に追加されています。2024年10月21日に工作機械(5軸制御マシニングセンタ)がカテゴリとして追加されたことで、今後は製造業(金属加工業者)の方も使いやすい補助金になっていくと考えられます。

現在の省力化投資補助金のカテゴリ種類

2024年11月1日時点で登録されている製品カテゴリは、29種あります。
製品カテゴリ一例
清掃ロボット、配膳ロボット、自動倉庫、無人搬送車(AGV・AMR)、検品・仕分けシステム、スチームコンベクションオーブン、自動精算機、鋳物用自動バリ取り装置 等
製造業といっても、何を製造するかはピンキリですが、総務省統計局と経済産業局にて5年毎に実施される「経済センサス-活動調査」の2022年9月に発表された2021年の調査によると、製造事業所数は全国で17万事業所、産業中分類別では「金属製品製造業」が13.6%と最も多いのです。次いで「食品製造業(12.2%)」、「生産用機械器具製造業(10.3%)」となっています。生産用機械器具製造業も金属加工を兼ねていることが多く見受けられるため、製造業と言っても金属加工を行う製造業の与える影響は大きいものです。
しかし、省力化投資補助金で製造業が「加工・生産」業務で使えそうな製品は限られていて、印刷業向けが多い印象。他に、金属製品製造業が使えるのは、鋳物用自動バリ取り装置くらいでした。
新たなトピックとして、10月21日に工作機械である5軸制御マシニングセンタの登録が行われたことは、製造業界としても朗報で活用したいという企業も多くなったのではないでしょうか。
5軸制御マシニングセンタの登録を機に、今後は他の工作機械や産業ロボット、溶接ロボットなど、金属加工に活かせそうな省力化製品が登録されるのではないか、と期待できます。

製造業向けの製品カテゴリ

随時申請が可能に

2024年6月に公募が開始され第1回の公募が実施されましたが、第2回以降は8月から締切がなく随時応募・交付申請が可能になりました。現時点では、2026年9月末頃までが申請受付期間となっており、予算に達するまでは随時応募していますので、中小企業者が適切だと判断するタイミングで申請することが可能になりました。日程が決まっている公募回の締め切りに間に合わせるために、通常業務があるなかで提出書類の作成を急ぐなど無理をする必要がなく、閑散期に合わせるなど、希望する投資のタイミングで利用できます。また、審査にかかる期間も1~2か月と、他の補助金に比べて短くなっています。

販売事業者と共に申請が必要

随時申請することが可能ですが、省力化投資補助金は商社や販売店・代理店などの販売事業者との共同申請が必要ですので注意しておきましょう。省力化投資補助金における販売事業者とは、製造事業者から受けた招待を受領して販売事業者として登録する必要があります。その後、製造事業者が登録する製品のカタログ登録を行います。中小企業者は販売事業者が登録したカタログから省力化製品を選定する、という流れです。
また、共同申請になるため、事業計画書の策定を販売事業者と行い、応募・交付申請の際にも販売事業者の招待を受けてから中小企業者が必要項目を入力して申請する必要があり、連携を取る回数も多くなるでしょう。
そのため、省力化投資補助金の販売事業者として登録している、もしくは登録していなくても登録に協力できる先に依頼する必要があります。必ずしも懇意にしている販売店・代理店から購入が可能になるわけではないので注意しておきましょう。

早期の事業実施が可能な補助金

導入する製品は既に事務局にて省力化効果が検証され、審査に通ったものが登録されています。省力化投資補助金と同じく経済産業省関連の補助金で、製造業も利用しやすいものづくり補助金や事業再構築補助金等の補助金では、採択した後に事業実施を行おうにも、相見積りの取得や他書類を提出して交付決定となりやっと設備購入、事業を実施できる運びになります。そのため、事務局からの修正依頼を繰り返すことになれば、交付決定が数ヵ月伸び、中々事業が実施できないという場合もあります。
省力化投資補助金だと、申請と同時に交付申請が行われ、採択すれば交付決定となり、スピーディに事業を実施することができます。

申請書類のボリュームは比較的少なめ

省力化投資補助金で必要となる事業計画は比較的ボリュームが少なめ。他の補助金であれば10~15ページの事業計画書を策定して提出する必要があります。
しかし、省力化投資補助金であれば、必要書類の提出と事業計画はA4サイズ1ページ分程度が必要となるくらい。事業計画の内容によって採択・不採択が左右されるため、本来事業計画書の策定にあたって準備段階で長期間縛られ、負担がかかるもの。
省力化投資補助金の場合はそこまでの労力は必要なく、簡便に申請ができるので、中小企業者の負担としては少なく申請が可能と言えます。

今後は置き換えも対象に

新たに、省力化投資補助金では一定条件を満たした場合に限り、既存設備との置き換えが可能になりました。他補助金の場合、例えば事業再構築補助金12回公募から提出書類に固定資産台帳が求められるようになり、単に設備の老朽化などによる入れ替えかどうか固定資産台帳で確認されてしまいます。ものづくり補助金でも老朽化した既存設備との入れ替えは不採択になる可能性が高いように、入れ替えだと判断されると補助対象外とみなされるようになりました。このように、既存設備との単なる置き換え・入れ替えはチェックが厳しくなっています。
省力化投資補助金も単なる置き換えでは認められませんが、同様の設備でも、販売事業者が指定する「置き換えが可能となる機能・性能」の条件を以下の①と②を満たす場合は認められます。
①「置き換えが可能となる機能・性能」を有する製品への置き換えであること
②「置き換えが可能となる機能・性能」を新規で1点以上持った設備
11月1日時点ではスチームコンベクションと券売機のみ「置き換えが可能となる機能・性能」が設定されており、置き換え対象となります。今後、置き換えが可能となる機能・性能が他の省力化製品にも拡充される予定となっています。

受かるには専門家を交えた準備が必要

事業計画のボリュームが少ないとはいえ、審査員に優秀な事業内容であるとしっかりと伝えることができなければ採択は難しいでしょう。そのため、現在の状況や省力化効果が高いことを具体的に示す必要があります。
販売事業者と共同申請となりますが、販売事業者は補助金に精通しているとは限りません。申請を検討している中小企業者は、補助金の傾向を掴み、対策するために認定支援機関等の専門家と相談しつつ事前準備して対策していきましょう。

まとめ

省力化投資補助金は製造業にとって簡便かつ迅速な事業計画が進められ、使いやすい補助金です。食品加工用だけでなく、製造業の中でも多く占める金属加工の省力化に適した5軸制御マシニングセンタも製品カテゴリに追加されたばかり。他にも工作機械などが追加されるのではと期待が高まっています。徐々に更新されてラインナップの整備が進められているので、「使いたい設備がない…」と悲観するのは時期尚早。申請方法も他補助金と比較して負担も少なく、迅速な事業計画の遂行が可能になります。
人手不足に悩み、申請を検討している事業者様は、補助金情報に精通している認定支援機関等の専門家と相談しながら、販売事業者の選定や事業計画の策定をあらかじめ行い、より採択されやすいよう準備を進めましょう。
筆者・監修

省力化補助金編集部

シェアビジョン株式会社

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