令和5年度補正予算、中堅企業が申請できる省力化補助金は?

2024/01/25

はじめに

2024年4月から改正される物流業や建設業の長時間労働の規制は、企業の人手不足を余儀なくしている状況です。企業は、現状のまま対処していなければ人手不足が深刻化するかもしれません。そのような2024年問題への対策には、原則返済不要の省力化補助金が利用できます。

令和5年度補正予算では、持続的賃上げや所得向上、地方の成長などは、新しい資本主義を推進するテーマとして政府が重視しています。物価高への対策では、持続的な賃上げを企業に求めなければなりません。持続的な賃上げには、職場の省力化で生産性を向上させる狙いが考えられます。

そのため、省力化をキーワードとした、さまざまな補助金が発表されています。

今回は、「中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金(以下、大規模成長補助金)」について解説します。また、「中小企業省力化投資補助事業 省力化投資補助枠(カタログ型)」(以下、カタログ型省力化補助金)と「ものづくり補助金 省力化(オーダーメイド)枠」(以下、省力化オーダーメイド枠)の違いについて比較しているので、ぜひ参考にしてください。

令和5年度補正予算の省力化補助金、中堅企業は申請できない?

令和5年度補正予算の省力化に係る補助金では、カタログ型省力化補助金が注目されています。注目されている理由は、補助金対象の設備投資の製品をカタログから選ぶという新しい形式だからです。ただ、カタログ型省力化補助金は中小企業や小規模企業者・事業者向けの補助金となっています。

では、中小企業よりも規模の大きな事業者が活用できる省力化補助金はないのでしょうか。

結論から言うと、中小企業の定義を超えた中堅企業でも申請ができる省力化に係る補助金では、「中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金」があります。
大規模成長補助金の補助対象者
補助対象者は、従業員数2,000人以下の中堅・中小企業者となっています。(みなし大企業を除く)中小企業の範囲を超える中堅企業向けの支援として申請できます。

その区分を超える企業は、大企業に該当するため、応募できません。また、従業員数が2,000人以下でもみなし大企業(大企業傘下の企業)は、補助金対象外となるので注意が必要です。
みなし大企業とは、実質的に大企業とみなされる企業のことです。法律での定義はなく、事業再構築補助金やものづくり補助金では以下のように規定されています。
等があります。
出典:事業再構築補助金、ものづくり補助金 公募要領
みなし大企業の定義や補助対象者の規定は補助金や制度によって異なります。
申請時に「実は対象外だった」なんてことがないよう、申請準備を進める前に、自社は該当するのかどうか注意しておきましょう。

大規模な投資が可能な大規模成長補助金

中堅企業が大規模な投資をするには、中堅・中小企業向けの大規模成長補助金が活用できます。補助金の投資範囲は、事業の部分的な設備投資だけではなく、工場等の拠点新設等、事業全体を見据えた検討が可能です。事業全体の生産性向上を目指す大規模な設備投資に役立つでしょう。具体的な内容は、次のとおりです。
大規模成長補助金とは、令和5年度の補正予算では、予算額1,000億円を確保している補助金です。国庫債務負担を含めれば総額3,000億円規模になります。

大規模成長補助金は、補助上限額が50億円まで支援を受けることが可能な、大規模が設備投資に対して支援する制度です。
補助率が3分の1のため、最大150億円の投資を行った場合、最大の補助金額50億円を受け取る可能性がある、という計算です。
ただし、投資下限額が10億円と定められているため、10億円未満の設備投資は補助対象外となります。

補助事業者(事務局)については、民間企業を対象に公募していましたが、2024年1月12日に、㈱博報堂とTOPPAN㈱がコンソーシアム形式による申請で採択されました。
※コンソーシアムとは:複数の企業が共同企業体を組成して1つのサービスを共同で行うこと

カタログ型省力化補助金・ものづくり補助金の省力化オーダーメイド枠との違いは?

カタログ型省力化補助金とものづくり補助金の省力化オーダーメイド枠には、次の違いがあります。
カタログ型省力化補助金
省力化補助金には、中堅・中小企業を対象にした補助金以外にカタログ型省力化補助金があります。カタログ型省力化補助金は、中小企業や小規模事業者向けの補助金です。補助事業の内容は、製造業の賃上げや飲食店の人手不足などの解消が目的になっています。そのうえで生産性の向上も目指す取り組みになるでしょう。

カタログ型省力化補助金は、設備投資で導入する製品やサービスをカタログから選べる点が特徴です。カタログで提示されている製品やサービスは、省力化補助金の対象となっているため、企業ごとの条件に適したものを選ぶだけで進められます。補助を受ける企業だけではなく、仲介する補助事業者にとっても効率的な仕組みの補助金システムではないでしょうか。
ものづくり補助金
中小企業を対象とした補助金事業には、同じく生産性向上を目的とする、ものづくり補助金もあります。ものづくり補助金の支援目的は、次のとおりです。
これらを目的にする中小企業を支援する補助金となっています。ものづくり補助金の事業枠には、もの補助金の省力化オーダーメイド枠があります。ものづくり補助金の省力化オーダーメイド枠は、令和5年度補正予算で新設された補助金です。カタログ型省力化補助金とは異なり、企業ごとのビジネスプロセスに適するように専用で設計されたオーダーメイドの機械装置やシステムなどの省力化投資などを支援します。

カタログ型省力化補助金と比較!

令和5年度補正予算の省力化補助金は、中小企業を対象とした補助金と中堅企業も含めた補助金の2種類があります。ここでは、2つの省力化補助金を比較してみましょう。
2つの省力化補助金は、事業スキームにおいて国を仲介する補助事業者が異なります。
カタログ型省力化補助金は、再編前の中小企業等事業再構築促進事業のスキームで行われます。予算規模
中堅・中小企業向けの省力化補助金とカタログ型省力化補助金の予算規模は、どちらも1,000億円規模になっています。

ただし、中堅・中小企業向けの大規模成長補助金は、国庫債務負担を含めると総額で3,000億円までの予算額です。
カタログ型省力化補助金は、従来の中小企業等事業再構築促進事業(事業再構築補助金)が再編され、総額5,000億円の予算額となります。
目的
中堅・中小企業向けの大規模成長補助金とカタログ型省力化補助金の目的は、どちらも人手不足解消と生産性向上による賃上げとなっています。目的に対して、補助対象の企業規模や補助額などで補助額範囲が異なってくるでしょう。

また、目的の先にある成果目標は、次のとおりです。
事業概要
中堅・中小企業向けの大規模成長補助金とカタログ型省力化補助金の事業概要は、大規模成長投資と即効性のある点で変わってきます。

中堅・中小企業向けの大規模成長補助金の概要
中堅・中小企業向けの大規模成長補助金の概要は、次のとおりです。
中堅・中小企業向けの省力化補助金は、企業全体の大規模な成長に向けた補助と考えられます。カタログ型省力化補助金の概要は、中堅・中小企業向けの省力化補助金より小さな規模で取り組める補助金です。カタログ型省力化補助金
カタログ型省力化補助金が補助枠となる中小企業省力化投資補助事業は、補助対象の汎用製品を選択する形式になっています。あらかじめ導入可能な省力化となる汎用製品をカタログから選ぶことで、効率的な省力化投資になるでしょう。
補助上限金額
中堅・中小企業向けの大規模成長補助金とカタログ型省力化補助金の補助上限金額は、次のように定められています。
中堅・中小企業向けの大規模成長補助金の補助上限額50億円に対して、10億円の投資下限額が設定されています。ただし、複数の企業が共同で事業を運営するコンソーシアム形式の場合は、参加企業の投資合計額で判断するとのことです。

複数企業で構成される共同企業体が同じサービスで事業展開していれば、合算で10億円以上が対象になるでしょう。
対象設備
中堅・中小企業向けの大規模成長補助金とカタログ型省力化補助金の補助対象となる設備は、規模的な違いになるでしょう。
中堅・中小企業向けの大規模成長補助金の対象設備では、新しい工場の設置費用などのように、建設等施設に関する経費が含まれることが特徴です。投資金額の3分の1までの補助が期待できます。

カタログ型省力化補助金の場合は、事業全体というより部分的な省力化への補助となるでしょう。たとえば、宿泊業のフロント受付にAIやロボットで動作する汎用製品を導入するなどが考えられます。大規模成長補助金のように、建物費などは補助対象経費には含まれないと想定され、より身近で取り組みやすい投資となるでしょう。

まとめ

令和5年度補正予算の省力化補助金には、新しく導入されたカタログ型が注目されています。ただし、カタログ型省力化補助金の対象は中小企業や小規模事業者などが対象です。そのため、中堅企業は省力化補助金の対象ではないと考えているかもしれません。

しかし、中堅企業でも申請できる補助金があります。中堅企業で省力化投資を検討している場合、中堅・中小企業向けの大規模成長補助金の利用が可能です。中堅・中小企業向けの省力化補助金は、大規模な成長投資を目指している中堅企業や中小企業が対象になります。

また、今回は他にも設備投資を支援する補助金の参考として、ものづくり補助金とカタログ型省力化補助金の違いも紹介してきました。ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者向けのオーダーメイドの省力化投資を支援する補助金で、カタログ型省力化補助金はカタログに掲載された設備の投資が可能になります。

今回紹介した補助金は、企業が抱える課題の人手不足解消や賃上げを目指す取り組みとなります。補助金は、要件を満たしている企業が受け取る権利のある原則返済不要なお金です。自社の目的と導入後のビジョンを見据え、検討してみてはいかがでしょうか。
筆者・監修

省力化補助金編集部

シェアビジョン株式会社

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