新たに省力化投資補助金のカテゴリに複合加工機が追加!

2024/12/20

はじめに

5軸制御マシニングセンタ(5軸マシニング)に続いて、今回新たに省力化投資補助金の製品カテゴリに「複合加工機」が登録されました。
これにより、省力化投資補助金を活用して複合加工機を導入することができるようになります。

今回は、複合加工機の概要や導入するメリットのいついて詳しく説明します。

省力化投資補助金とは?

省力化投資補助金(正式名称:中小企業省力化投資補助事業)は、人手不足解消に効果があるロボットやIoTなどの製品を導入するための経費を国が補助することにより、簡易で即効性がある中小企業の省力化を促進し、売上拡大や生産性向上を図るとともに賃上げにつなげることを目的とした補助金です。

省力化製品を製造する製造業者などがカタログに自社の製品を登録し、中小企業等はそのカタログの中から製品を選択して導入する形式となっています。

これまでカタログに登録されている省力化製品は、飲食サービス業や印刷業向けの製品登録が多く、製造業が「加工・生産」業務で使えそうな製品が限られていたことから、活用が見込めないと諦めていた事業の方も少なくないはずです。

しかし、2024年10月に工作機械としては初めてとなる5軸制御マシニングセンタが製品カテゴリとして登録され、新たに製造業向けの6つのカテゴリ(一本バー搬送ロボット、プレス用多関節ロボット、鋳造用自動注湯機、複合加工機、鍛圧・板金加工用バリ取り
装置、パイプベンダー用投入・搬出ロボット)が追加となり、登録製品数は201から232に拡充しました。
参考:https://shoryokuka.smrj.go.jp/assets/pdf/product_catalog.pdf
(令和6年12月12日時点) 

複合加工機とは?

製造業はIoTやビッグデータなど革新的なテクノロジーの活用が進む一方で、深刻な人手不足が問題となっています。そのような社会環境を背景にして、近年導入が進んでいるのが「複合加工機」です。

複合加工機とは、工具の自動交換機能を備え、工作物の段取り替えなしに、フライス削り、旋削、研削などの多種類の加工のできる数値制御工作機械のことです。

機械としての最も大きな特徴は、複合加工機一台で複数工程の加工を終わらせることができる点です。多くの場合、1つの部品を素材から完成品にまで仕上げるには、旋盤とマシニングセンタなど最低2つの工作機械を用意する必要がありましたが、複合加工機はそれらすべての工程を一台で済ませることができます。

そのため、加工時間の大幅な短縮や作業効率の向上につながることから、導入する製造業者が急速に増えています。

マシニングセンタ、ターニングセンタとの違い

工作機械の多様化に伴って、「マシニングセンタ」や「ターニングセンタ」といった言葉をよく耳にすることはありませんか?それぞれどのような違いがあるのかを確認しておきましょう。

・マシニングセンタ
マシニングセンタはフライス盤が発展し複合化したもので、NC旋盤が発展し複合化した複合加工機とは、それぞれメインとなる加工の種類が異なります。マシニングセンタはフライス盤と同様に、被加工物に対して回転する工具を3次元的に移動させて加工することに主眼を置いているのが特徴です。近年は工具軸も旋回させることで、5軸制御を可能としたマシニングセンタが普及しています。

一方の複合加工機は、旋盤からの発展で被加工物を回転させることから進化がスタートした工作機械です。被加工物を回転させるという点において、マシニングセンタにはない動きが実現できるため、あらゆる面の加工を可能としています。

・ターニングセンタ
ターニングセンタはNC旋盤をベースとしたものに、マシニングセンタの機能を付与した工作機械を表しているため、複合加工機の1種といえます。

複合加工機のメリット

複合加工機は多種多様な加工を一台で実行できる工作機械のため、導入することによって以下のようなメリットが得られます。
・作業効率の向上
・人手不足の解消
・加工精度の向上
・多品種少量生産への対応
・コストの削減
・作業効率の向上
一台の機械で複数の加工ができる複合加工機は、製造現場の生産性向上に寄与します。製品を製造する際は、工程に従って複数の工作機械を使用しなければいけません。
しかし、複合加工機であれば、さまざまな機械で行っていた工程も1つの機械で続けて加工できます。そのため、工程を簡略化でき、移動時間や機械の段取り時間の短縮にもつながり、生産性の向上が期待できるでしょう。

・人手不足の解消
多くの加工工程を一気通貫で行えるため、複合加工機は生産工程の省人化につながります。技術や経験が要求される加工でも自動で精密に行えることから、熟練工が不足している現場でも高品質な生産体制を構築しやすくなります。また、複合加工機は24時間連続稼働できるため、夜間や休日など人手が足りない時間帯でも生産をしやすくなるでしょう。

・加工精度の向上
製品を加工する際には、人の手で被加工物を固定する必要があり、小さなズレが生じる可能性があります。しかし、複合加工機では、被加工物を1度固定すれば製品の完成まで人の手が触れることはありません。そのため、小さなズレによる品質のバラツキがなくなり、加工精度と品質の向上が期待できるでしょう。

・多品種少量生産への対応
複合加工機は一度のセットアップで旋削やフライス削りなど複数の加工を行うため、何千個、何万個と生産するような製品には不向きです。一方、小ロットの加工には向いており、複合加工機を導入することで小ロットの案件も受注できるようになるでしょう。多品種少量生産に取り組み、事業構造を変革できれば利益率改善も期待できます。

・コストの削減
工作機械を多数取り揃えていると、機械1つ1つに保守管理・減価償却の処理・修理や点検の維持コストが発生します。しかし、複合加工機であれば維持コストが1台分で済み、手間と時間を削減することができます。
また、自動で工具の交換も行ってくれる複合加工機は、作業する人件費のコスト削減にもつながります。

複合加工機のデメリット

複合加工機を使用するメリットがある一方で、デメリットとしては以下の点があげられます。
・設備の導入コストが高い
・大量生産に向いていない
・プログラミングなどの知識が必要
・設備の導入コストが高い
複合加工機そのものの値段は高額で、NC工作機械やプログラムなど周辺機器の導入も検討しなければいけません。
また、機械の扱い方やプログラミング設定の仕方など、機械を使う人の教育・育成も必要です。

・大量生産に向いていない
通常の生産であれば、1つの工程が終われば次の工程に送り、機械を同時に動かして大量生産も可能です。しかし、複合加工機は1度セットすれば完成させられる特性上、大量生産に不向きであると言えます。

・プログラミングなどの知識が必要
複合加工機は、NC工作機械の設定など、プログラミングの知識も必要です。また、複数の工作機械が1つに集約していることから、幅広い工作機械の知識も求められます。

旋盤を複合化したNC工作機械である複合加工機は、作業の効率化や加工精度の向上、完全自動化の実現などさまざまなメリットが考えられます。その反面、注意しておきたいデメリットもありますので、さまざまな面から比較したうえで、導入を検討することがおすすめといえるでしょう。


複合加工機の活用による具体的な省力化事例
複合加工機の活用による省力化の具体例には、以下のような場面があります。
・加工工程の集約化
従来、複数種類の金属加工を行う場合は複数台の工作機械を併用していましたが、本機器の導入により機械1台で加工を完結出来る様になり複数台の工作機械の段取り替え時間が削減、大幅な生産性向上が見込めます。

・高品質、高効率加工
夜間の連続運転や、ワークの取付誤差に起因する精度のバラつき抑制、歩留率の改善、加工精度の向上、加工時間の削減といった生産性向上の効果が期待できます。
このように、複合加工機の導入により、効率的で安定した生産プロセスが実現し、企業全体の競争力向上につながることが期待できます。

複合加工機の価格と導入費用(目安)                        

現在、公開されている製品カテゴリの一覧には、2,500万円程度から導入可能と記載があります。2024年12月12日時点では、登録製品数0件と、どのメーカーのどの型番が登録されるかは決まっていません。(商品カタログに補助対象となる製品が登録されて初めて省力化投資補助金へ申請できることになります。)

しかし、公開されている製品カテゴリでは、複合加工機の製品イメージ(例)として、中村留精密工業㈱の製品が使用されているため、型番は分かりませんが中村留精密工業㈱の複合加工機は製品登録される可能性が高いと思われます。

また、オークマ㈱、DMG森精機㈱、ヤマザキマザック㈱は国内三大工作機械メーカーとも呼ばれているため、製品登録されるのではないかと考えられます。

まとめ

2024年12月12日のカタログ更新では、製造業では5軸制御マシニングセンタに続いて、複合加工機を含む6つの製品カテゴリが追加されました。
・一本バー搬送ロボット
・プレス用多関節ロボット
・鋳造用自動注湯機
・複合加工機
・鍛圧・板金加工用バリ取り装置
・パイプベンダー用投入・搬出ロボット
現在は、まだ具体的な製品登録が進んでおらず、すぐに申請できる状態ではありませんが、今後はカテゴリ、製品ともに徐々に登録が進んでいくと思われます。

省力化投資補助金は2025年最も注目される補助金となることが想定されるため、補助金を通して人手不足を解消したいという事業者にとっては大きなチャンスとなっています。活用できる製品や申請の精度も随時更新されていますので、定期的に情報収集を行っていきましょう。
筆者・監修

省力化補助金編集部

シェアビジョン株式会社

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