中小企業省力化投資補助事業における補助金活用のメリット・デメリットとは

2024/01/10

中小企業省力化投資補助事業についてはじめに

中小企業省力化投資補助事業は2023年11月29日に成立された令和5年度の補正予算に含まれている補助金制度です。

主に中小企業に対し人手不足を解消する目的でAIやロボット、IoTといったハイテク製品に対して補助金を交付すると言うものです。

本記事では補助金を活用するメリットやデメリットを踏まえ、特に注目されている中小企業省力化投資補助事業は活用すべきかについて解説します。

補助金とは

補助金とは原則返済不要のお金を国が法人や団体、個人事業主などに給付することです。日々事業に取り組む事業者の活動を補助する制度となります。補助金においては経済産業省がWebサイトに説明文を記載しています。

‘’補助金は、国や自治体の政策目標(目指す姿)に合わせて、さまざまな分野で募集されており、事業者の取り組みをサポートするために資金の一部を給付するというものです。‘’

引用:経済産業省 中小企業向け補助金・総合支援サイト ミラサポplus

補助金には様々な種類があり、国の政策ごとに違う補助金制度が設けられています。中でも人気が高い補助金としては、令和5年度補正予算で再編された「事業再構築補助金」や、「ものづくり補助金」「IT導入補助金」などがあります。

補助金を活用するメリット

一般的に、補助金を活用するメリットとしては以下が挙げられます。
返済不要で資金が調達できる
中小企業省力化投資補助事業をはじめ、「事業再構築補助金」「ものづくり補助金」「IT導入補助金」などで給付された補助金は基本的に返済する必要がありません

これらの補助金は、企業及び労働者が支払う国税や地方税などが原資になっており、補助金対象者に採択された企業や個人は当然ながら、これらのお金を受け取る権利を有しているからです。

本来、自己資金だけでは足りない場合、金融機関等からの融資を受けると利息を含めて返済しなければなりません。しかし、補助金の支援を受ければ数百万円~数千万円の設備投資に対して、およそ2分の1の費用が返済不要で調達できることは、事業者にとって資金繰りの面でもメンタル面でも大きな支えとなります。事業の立て直しにも意欲が持てるという意味において、非常に存在意義の大きい制度と言えるでしょう。

融資が受けやすくなる
中小企業省力化投資補助事業をはじめ各々の補助金制度の交付候補者として採択されれば、融資が受けやすくなるというメリットもあります。経済産業省や厚生労働省の定める要件を満たした事業者として社会的信用が高まるからです。

社会的信用が高ければ、金融機関において融資が行われる際にも評価されますので、融資が受けやすくなります。また金融機関において、融資が受けやすくなる重要なポイントのひとつがしっかりと作り込まれた事業計画書の提出です。

金融機関を納得させる事業計画書を提出することは、金融機関がその事業者に融資するか否かを決定する重要な要素のひとつとなります。補助金の交付候補者として採択されている場合、すでにこの事業計画書が国の審査に通っているため、事業の実現性が高く、返済能力に問題がないと判断されているといえます。そういった理由からも融資が受けやすくなるのです。

客観的な自社分析ができる
中小企業省力化投資補助事業を申請する際には、しっかりとした事業計画書を作成する必要があります。この事業計画書を作成する上で必要なプロセスが自社分析です。

SWOT分析というフレームワークを活用することにより、自社の内部環境だけでなく、自社を取り巻く市場などの外部環境も分析します。既存事業の改善点や伸ばすべきポイント、新規事業の将来的なリスクなど、戦略策定やマーケティングの意思決定、経営資源の最適化を把握できます。

これにより、自社が今後どういった方向性で事業を進めていくのかを検討する際に役立ちます。事業計画書を作成する際にはこういった経営戦略を盛り込む必要があるため、必然的に自社の客観的分析ができるのです。

事業計画が明確になる
中小企業省力化投資補助事業の審査に通るためには、作り込まれた事業計画書の提出が必須となります。作り込まれた事業計画書を作成することにより、改めて自社が行おうとしている事業計画が明確になります。

事業計画が明確になればなるほど、自社に不足している点や無駄な箇所、非効率なプロセスが見えてくるようになります。そしてそれらを改善していく上で思考や経営ビジョンも整理され、KPI(重要業績評価指標)やKGI(重要目標達成指標)といった目標値、具体的な事業期間なども可視化されます。

このような事業計画書は企業内の違う部署において、従業員同士でビジョンを共有できるきっかけともなります。すると従業員の企業に対するエンゲージメントも高まり、生産性向上にも結びつきます。

補助金を活用するデメリット

一般的に補助金を活用するデメリットとしては以下が挙げられます。
事務手続きの煩雑さ
補助金を申請するための事務手続きは非常に煩雑です。本業で忙しく日々稼働している中で、申請作業に時間を割くことができるかどうかを懸念して、補助金のメリットを理解しながらも、躊躇している事業者の方も多いかと思います。中小企業省力化投資補助事業の事務手続きプロセスの詳細は、2024年1月時点においてまだ発表されていませんが、基本的には他の補助金と同じようなプロセスになると想定されます。

必要書類の整理、事業計画書の作成、gBizIDを使用した電子申請、交付申請に必要な見積書の取得、設備導入後の実績報告書の提出等、時間と労力の負担は、少なくありません

設備導入スケジュールの制約
補助金を活用した設備導入では、補助金の交付決定が完了する前に事業を開始することができません。申請後、応募締め切り後から事務局での審査期間があり、採択結果の発表後に交付申請を行い、交付決定が下りて初めて販売店への発注が可能になります。つまり、事業計画を立てて設備導入をしたいと思っても、希望通りのスケジュールでは進められない可能性があります。この採択までの審査期間や交付決定までの期間は補助金や事業者によって異なりますが、4~6か月程度かかることも少なくありません。

事業再構築補助金では、コロナの影響を受けた事業者への救済措置として、一部申請枠に限り交付決定前でも設備の発注ができる事前着手承認申請という制度がありました。しかし、早期に事業を早めることによる早急な事業の立て直しを目的としており、補助金の制度としては特殊なシステムです。そのため、今回の省力化補助事業において事前着手承認申請制度が採用される見込みは低いと言えるでしょう。

もらえるものはもらっておこうという安易な考えで申請すると、プロセスの大変さに後悔することにもなりかねません。以下では設備導入スケジュールの制約について解説します。
審査に時間がかかる
補助金の原資は国民の税金ですから、しっかりと成果をあげてくれると思われる補助金給付の対象を採択するために審査には時間がかかります。この審査の期間は、補助金の種類や公募回によって異なりますが、人気の補助金であるものづくり補助金では、応募締め切りから採択発表まで約2か月近くかかります。また令和5年10月6日に締め切られた第11回事業再構築補助金では、採択発表が令和5年12月下旬~令和6年1月上旬と約3か月近くとなると予定されていましたが、審査に時間を要しているため、令和6年1月下旬~2月上旬に延期になることが発表されています。その場合、審査にかかる時間は約4か月かかることになります。

交付申請に時間がかかる
補助金が無事に採択されても、交付申請をして交付決定通知書が下りてからしか、設備の発注ができません

交付申請では、販売店からの見積書や、価格の妥当性を示すための相見積書等の提出が求められます。必要書類を提出しても、事務局から差し戻しを受けて修正を求められることがあります。この交付申請から交付決定までも事業者によっては、1ヶ月以上かかることがあります。

補助金が入金されるまでの資金繰りが必要
中小企業省力化投資補助事業をはじめ、補助金は後払い制となっています。補助率が2分の1で返済不要だと言っても、半額で設備が導入できるわけではありません。そのため、販売店に支払いをしてから補助金が入金されるまでの間は、自社で資金繰りを行う必要があります。通常補助金は、補助事業終了後(設備の導入後、支払や実績報告を経て、補助事業が終了となります)に精算払の請求手続きをおこなったのちに振り込まれます。

例えば中小企業省力化投資補助事業の補助率は2分の1ですので、補助上限額500万の給付対象となった場合の補助対象事業の総額は1,000万円となります。この1,000万円をまず自社で捻出しておく必要があります。一時的とはいえ高額を負担することになりますので、受給のタイミングについてもしっかり把握しておきましょう。

設備導入後も報告義務がある
中小企業省力化投資補助事業の補助対象に採択されると、設備導入後や補助金の交付後も一定期間事業の状況を報告する義務が発生します。

上項目「返済不要で資金が調達できる」でも解説した通り、補助金は企業及び労働者が支払う国税や地方税、雇用保険料などが原資となっており、補助金の交付条件については厳しく定められています。

もしこれらの報告義務を怠ったり、本来の趣旨と異なる目的で使用されていることが発覚したりした場合は、補助金の返還を求められることもあります

中小企業省力化投資補助事業を活用するメリット

以上の補助金活用のメリット・デメリットを踏まえた上で、令和5年度補正予算で新設されたカタログ型省力化補助金を活用するメリットとしては以下が挙げられます。
カタログ型のため設備の選択が容易
カタログ型省力化補助金では、事業者の省力化を促す産業用ロボット等の汎用製品がカタログとして登録され、事業者は登録された製品の中から、自社で導入する機器を選択します。あらかじめ選択肢が決められているため、情報の取捨選択の手間を一段階省くことができるといっても良いかもしれません。
また、省力化投資補助枠(カタログ型)のカタログに掲載される製品は、事務局によってピックアップされた製品群です。製品を登録するための審査等もしっかり行われることから、
どの製品を選択してもある程度の品質が保証されていると判断ができます。

申請から導入までの期間が短い
今回の中小企業省力化投資補助事業は、中小企業等が簡易で即効性がある省力化投資を促進することを目的とし、審査にかかる時間を短くするためにカタログ型にしていくことが予想できます。そのため、ものづくり補助金や事業再構築補助金と比較して、採択発表までや交付申請後の審査機関が短くなる可能性があります。

まとめ

本記事では、補助金活用のメリット・デメリットについて解説しました。補助金は返済の義務がなく、補助金対象に採択されれば融資を受けやすくなるなどのメリットがあります。

しかし一方で、細かい規定やルールを遵守する必要もあり、審査の難しさや事務手続きの煩雑さなどでリソースが割かれてしまうこともあります。

2024年度から新たに実施されるカタログ型の省力化補助金は、これまでの補助金活用でハードルとなっていた、申請に向けた準備の煩雑さや審査期間の長さといったデメリットが一部軽減されるといえるでしょう。補助金を活用したいと思いながらも二の足を踏んでいた事業者の方は、最初の補助金活用として、中小企業省力化投資補助事業(カタログ型省力化補助金)を検討してみてはいかがでしょうか。
筆者・監修

省力化補助金編集部

シェアビジョン株式会社

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