はじめに
今年の6月から新たにスタートした省力化投資補助金(正式名称:中小企業省力化投資補助事業)ですが、これまで飲食サービス業向けの製品登録が多く、活用が見込めないとあきらめていた事業者の方も多いのではないでしょうか。現在、製造業が活用できる対象製品カテゴリは18件ありますが、これまで金属加工業者向けで「加工・生産」が対象業務プロセスとなっているカテゴリは、「鋳物用自動バリ取り装置」のみでした。他は検品・仕分けシステムや無人搬送車(AGV・AMR)、印刷関連等、加工そのものに活用できる製品の登録はありませんでした。
金属加工を行う事業者の皆様で人手不足に悩まれている方はぜひ、参考にしてみてください。
人手不足に悩んでいませんか?
厚生労働省が出した令和5年12月分及び令和5年分の「一般職業紹介状況」によると、2023年12月の製造業の有効求人倍率は約1.74倍で全国平均の1.27倍と比較しても深刻な人手不足に陥っていると言えます。
教育体制を整備している企業も増えた中で、見て覚える教育体制も実情としてままあります。また、熟練技術者の退職により技術継承が上手くいかず、若手を育てられないといった環境から、離職に繋がる企業も多くあります。
さらに、近年の原材料の高騰により、人手不足にもかかわらず新規採用を控える企業もあるなど、利益創出に課題を抱える企業も少なくありません。
新たに開始された省力化補助金は、そういった人手不足を課題としている企業の解決に活用できる補助金です。
5軸制御マシニングセンタとは?
そのため、3軸のみの立形マシニングセンタや横形マシニングセンタのような、従来主軸のみが移動するマシニングセンタでは難しい、単純な数式では表せられない自由曲面など、より複雑な形状や角度を持つ製品の加工が可能です。
例えば、ポンプや過給機に使用されるインペラ、歯車にもスパイラルギヤやヘリカルギヤなどのような自由曲面で構成された面を持つ部品が特徴的です。
5軸マシニングのメリット
段取り替え削減 ⇒加工時間の短縮、加工精度の向上
特殊工具が不要 ⇒加工コストの削減、加工精度の向上
専用治具が不要 ⇒加工コストの削減
ワークの取り付け角度を変更して加工面を都度かえる必要がなくなるため、1度設置してしまえばテーブルが稼働することでテーブル面以外の面を加工することができます。
・特殊工具が不要
3軸の場合、工具の突き出し量を長くしなければ届かなかった箇所も、ワーク角度をかえることで突き出し量を抑えて加工することが可能になります。工具の突き出し量が長くなればなるほど工具のブレが生じやすく、加工面の精度も低下してしまうことがあります。そのため、工具の突き出し量を抑えて加工できる5軸加工だと加工精度が良くなる傾向にあります。
・専用治具が不要
加工面に合わせてワークを設置し直す必要が無くなるため、加工形状に合わせて専用治具を用意する必要も無くなります。治具の製作にもノウハウや製作期間、コストがかかりますが、5軸制御マシニングセンタだと削減することができます。
これまで複数台で段取り替えをしながら加工していた複雑形状の加工を1台で完結できるため、オペレーターが管理する機械の台数を減らすことができる他、工程毎の段取り変えが不要になり、人による作業を削減できます。また、専用治具が不要になるので、加工コストを引き下げることができます。
また、工場環境、加工物などによって異なるものの、連続使用による工具交換時間の削減や、精度向上による工程間検査の削減、台数減による定期点検作業の削減効果もあります。
さらに、段取り替えが不要な為、時間のかかる加工に関して、夜間の連続運転などの運用も可能となる可能性もあり、生産性の向上にもつながります。
5軸マシニングのデメリット
機械やソフトウェアのコストが高い
操作の複雑さ
5軸マシニングは高度な操作ノウハウが必要となり、従来の3軸マシニングと比較しても難易度の高い設備と言えます。しかしながら、人手不足に悩む金属加工業者の省力化効果が大いに期待できる設備ですので、購入を検討している金属加工業者は、これらのメリットとデメリット、投資回収計画も加味しながら検討しましょう。
「5軸制御マシニングセンタを導入しようとしているが、適した補助金がわからない」といった事業者の方には、政府としても推進している省力化補助金が活用できると言えます。
5軸制御マシニングセンタの価格と導入費用の目安
省力化投資補助金の補助率及び補助上限額は、以下のようになっています。
従業員数 | 補助率 | 補助上限額(大幅な賃上げを行う場合※) |
5人以下 | 1/2以下 | 200万円(300万円) |
6~20人以下 | 500万円(750万円) | |
21人以上 | 1,000万円(1,500万円) |
(a)事業場内最低賃金45円以上増加させること
(b)給与支給総額6%以上増加させること
置き換えのチャンスも
しかし、既存設備と省力化製品との置き換えが可能となった設備があります。スチームコンベクションなど一部製品に限られるため、10月23日時点では5軸制御マシニングが対象となるかは未定です。
今後、置き換え対象範囲も拡大するのではと予想されますので、現在の事業で5軸制御マシニングを使用している中小企業者等の方は、今後の情報を待ちましょう。
想定できる工作機械メーカー(製造事業者)
想定できるメーカーは以下の通りです。
三大工作機械メーカーといわれるオークマ㈱、DMG森精機㈱、ヤマザキマザック㈱を始め、㈱牧野フライス製作所、㈱北川鉄工所、ニデックマシンツール㈱などが考えられます。
今後、他の工作機械の登録も期待
マシニングセンタ以外の工作機械や加工機械の設備導入を検討している方は、随時更新されている製品カタログを確認しておきましょう。
製品登録の流れをおさらい
省力化投資補助金は、補助の対象として登録された省力化製品カタログの中から、製品を選んで申請する「カタログ型」の補助金です。あらかじめ審査され、決められた製品のリストから選択することで、交付申請の審査期間を短くし、導入までをスピーディーに行うことができる制度になっています。
流れとしては、まず省力化製品を生産することが想定される事業者(メーカー等)を主な会員とする工業会が、製品カテゴリごとに省力化効果を産出するための省力化指標を策定に必要な情報を提出します。その後、事務局で業務プロセス・指標の策定を行い、工業会がそれを承認第三者員会での意見招聘を経て、中小企業庁が審査・承認を行い、製品カテゴリ登録が完了となります。
先日カテゴリ登録された「5軸制御マシニングセンタ」は、現在この段階です。この後、メーカー等の製品製造事業者が、製造事業者登録の申請を行います。工業会で製品性能審査が行われたのちは、事務局の審査、外部委員会による意見招聘、中企庁の審査・承認を経て、製品・製造事業者の登録が完了し、工業会より証明書が発行されます。
その後、製造事業者(メーカー)が工業会証明書とともにカタログ申請提出し、製品のカタログ登録が完了となります。
また、省力化投資補助金は、中小企業等の事業者と販売事業者(販売店)が共同申請する形となっており、それぞれの登録製品に紐づいた販売事業者からしか導入することができません。工業会証明書が発行された時点で、製造事業者は販売事業者の招待が可能となり、販売店が登録申請を提出、事務局の審査と外部委員会の承認を経て販売事業者登録が完了します。
ここでようやく、省力化投資補助金を活用して導入できる製品の具体的な型番等が分かり、申請ができるようになります。
シェアビジョンでは、製造事業者、販売事業者となるメーカー・商社・販売店の方との連携、サポートも行っています。中小企業省力投資補助事業を活用したいメーカー・商社・販売店の方はぜひ一度ご相談ください。
まとめ
省力化投資補助金は、新しい補助金制度ということもあり、活用できる製品も申請の制度もどんどん更新されていきます。定期的に情報収集につとめ、自社での活用を検討していきましょう。設備導入を検討している事業者の方、補助金の専門家との連携をお考えのメーカー・商社・販売店の方は、ぜひ一度シェアビジョンへご相談ください。
省力化補助金編集部
シェアビジョン株式会社
認定支援機関(認定経営革新等支援機関※)である、シェアビジョン株式会社において、80%以上の採択率を誇る申請書を作成してきたメンバーによる編集部が監修・執筆しています。
当社は、2017年の会社設立以来、ものづくり補助金や事業再構築補助金等の補助金申請サポートをはじめとしたコンサルティングサービスを提供してまいりました。『顧客・従業員のビジョンを共有し、その実現をサポートすることで社会の発展と幸福を追求する』を経営理念とし、中小企業の経営者のビジョンに寄り添い、ビジネスの課題を解決するための手助けをしています。支援してきたクライアントは1,300社以上、業界は製造業、建設業、卸売業、小売業、飲食業など多岐に渡ります。このブログでは、中小企業の経営者にとって有益な情報を分かりやすくお届けしてまいります。
※認定経営革新等支援機関とは?
中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にあると国が認定した経営相談先です。全国各地に3万箇所以上の認定支援機関があり、税理士、税理士法人、公認会計士、中小企業診断士、商工会・商工会議所、金融機関、経営コンサルティング会社等が選出されています。認定支援機関を活用することで、補助金申請だけでなく、財務状況、財務内容、経営状況に関する調査・分析までを支援するため、自社の経営課題の「見える化」に役立ちます。
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