カタログ枠の対象製品について

2024/04/02

はじめに

省力化投資補助金(中小企業省力化投資補助事業)とは、国が、中小企業等の売上拡大や生産性向上を後押しするため、人手不足に悩む中小企業等が、IoT、ロボット等の人手不足解消に効果がある汎用製品を導入しやすいよう、中小企業等の省人化や効率化を支援する補助金です。

これまで政府は中小企業の生産性の向上や効率化を支援するため様々な事業を実施してきましたが、人手不足の解消を目的とした補助金はありませんでした。省力化補助金は、深刻化する人手不足に悩む中小企業等にむけて、人工知能(AI)やロボットをはじめとする省人化・省力化技術の導入に向けた投資を促進することで賃上げにつなげることを目的として実施されます。人が行っていた作業を機械に代替し、作業負担や無駄な工程を削減することで、売上拡大や生産性向上を図ることができ、中小企業による新たな事業への挑戦の後押しとなります。

省力化投資補助金では、カタログに掲載されている製品しか補助金を活用して購入することはできません。あらかじめ事務局が指定した製品をカタログから選択するシンプルな申請プロセスであることも、スピーディな人手不足解消対策としての特徴といえます。

補助対象となる業種と製品

先日、中小企業省力化投資補助金の公式サイト(https://shoryokuka.smrj.go.jp/)がオープンし、承認カテゴリ一覧が公開されました。カタログへの製品登録は、承認されたカテゴリの製品しか行うことはできません。現在は、以下の9つの製品カテゴリが承認されています。

製品カテゴリ① 券売機

製品カテゴリ定義:券売機とは注文受付、券類の発行、支払・決済業務を自動的に行う機器と定義する。

対象業種:飲食サービス業

対象業務領域:注文受付、請求・支払、顧客対応

審査担当工業会名:一般社団法人 日本自動販売システム機械工業会

券売機は、販売から生産までの業務を効率的に支える設備であり、少人数での店舗運営を可能にします。また、直接現金に触れることがないため衛生面においても向上し、売上管理も行えることから、売上データの分析・不正の防止にも役立ちます。近年は電子マネー対応機種も増えています。

製品カテゴリ② 自動精算機

製品カテゴリ定義:自動精算機は、主に商品販売時及びサービス提供時における支払・精算対応又はつり銭等現金の受け渡しを自動的に行う機器と定義する。

対象業種:飲食サービス業、小売業

対象業務領域: 注文受付、請求・支払、顧客対応

審査担当工業会名:一般社団法人 日本自動販売システム機械工業会

自動精算機は、券売機と同様、業務効率化により人手不足を解消し、会計までの待ち時間を短縮することで顧客にもメリットが生まれます。また、金額の登録間違いや、釣銭間違いといったヒューマンエラーによる違算も減少し、ロス率を低下することが見込まれます。

製品カテゴリ③ 自動チェックイン機

製品カテゴリ定義: 予約管理機能/チェックイン機能/精算・会計機能、上記機能に加え、省力化に資する観点から次の機能を具備するものが望ましい。チェックアウト機能/カードキー発行機能

対象業種: 宿泊業

対象業務領域: 受付案内、予約管理、請求・支払、顧客対応

審査担当工業会名:一般社団法人 日本自動販売システム機械工業会

自動チェックイン機は、チェックイン・チェックアウト等、宿泊施設で混雑しがちなフロント精算業務を簡素化・簡便化することができます。多言語に対応する設備を導入することでインバウンド対策も可能となり、サービスの向上と確実な現金管理、フロント業務の省力化を同時に実現できます。

製品カテゴリ④ スチームコンベクションオーブン

製品カテゴリ定義:スチームコンベクションオーブンとは、コンベクションオーブン(ファンにより熱風を強制対流させるオーブン)に、蒸気発生装置を取り付け、熱風、水蒸気、熱風+水蒸気を利用し、焼く、蒸す、煮る、炊く、炒めるなど多様な加熱調理を1台で担うことができる調理機器のこと。また、プログラム機能を持ち、料理、食材ごとの加熱時間、温度等を登録でき、使用する人間を問わず調理品質を保つことができる。

対象業種: 宿泊業、飲食サービス業、小売業

対象業務領域: 保管・在庫管理、調理

審査担当工業会名:一般社団法人 日本厨房工業会

スチームコンベクションオーブンは、オーブンにスチーム発生装置を取り付けて熱と蒸気をコントロールすることにより、1台で複数の加熱調理法を可能とした多機能の加熱調理機器です。主に蒸し料理や焼き料理に適しており、短時間・高温での調理や大量調理も可能であることから、調理時間の大幅改善や調理スペースの効率化が実現します。また、操作が簡単で、調理方法や温度・時間を設定することにより味や仕上がりを均一にし、工程を平準化することが可能となります。

製品カテゴリ⑤ 無人搬送車(AGV・AMR)

製品カテゴリ定義:自動で走行する車両または台車で、もの(パレット、ケース、台車など)を移載やけん引できる機能を有する。位置の認識やルートについては、機器に組み込まれたマップ、決められた位置情報やルートに基づき、自動で移動が可能なもの。
※税法上の機械設備又は器具備品であるものが対象となる。

対象業種: 製造業、倉庫業、卸売業、小売業

対象業務領域: 資材調達、加工・生産、検査、保管・在庫管理、入出庫

審査担当工業会名:一般社団法人日本物流システム機器協会

無人搬送車(AVG・AMR)は、工場や倉庫内で荷物を運ぶために活用されている自動搬送装置です。無人搬送車を導入することで、作業者は荷物の積み下ろしをするだけでよくなり、荷物の落下や転倒による事故が大幅に減少します。機械化することで積載量が増加するため搬送回数を減らすこともでき、ベルトコンベアなどの設置と比較して省スペースでの導入が可能となります。AVGは誘導走行方式、AMRは自立走行方式で、徐々にAMRへの移行が進んでいるといえます。

製品カテゴリ⑥ 検品・仕分システム

製品カテゴリ定義:多くのものを、ある目的で仕分けるためには、そのものを認識し、仕分けのための情報を得なければならない。そのために、ものの検品が必要であり、それによって、目的に沿って仕分けることになる。検品と仕分けが一体で完成するシステムである。 
対象業種:製造業、倉庫業、卸売業、小売業

対象業務領域:資材調達、加工・生産、検査、保管・在庫管理、入出庫

審査担当工業会名:一般社団法人日本物流システム機器協会

検品・仕分システムは、資材の入荷時や製品の出荷時、棚卸時のチェック作業を効率化し、人為的なミスを抑止できることが特徴です。自動化によって一度に処理できる作業量が増えることから、人手が足りない現場での作業者の負担を大幅に削減します。また、正確性も向上するため、人為的ミスへの対策であるWチェック等の工程を削減し、業務品質を改善することができます。

製品カテゴリ⑦ 自動倉庫

製品カテゴリ定義:パレットやケース、コンテナを自動的に入出庫・保管できる倉庫。保管する棚、出し入れする機械、前後の荷受け・荷渡し装置で構成。コントロール、管理するシステムも含む。

対象業種:製造業、倉庫業、卸売業、小売業

対象業務領域:保管・在庫管理、入出庫

審査担当工業会名:一般社団法人日本物流システム機器協会

自動倉庫とは、製品の保管や出荷を自動化させるシステムのことをいいます。従来の倉庫作業を自動化し、入庫・保管・出荷の工程を効率的に行い、倉庫内スペースを有効活用することが目的です。倉庫内でのピッキング作業は、作業者が倉庫内の棚を整理・保管して秩序を維持し、常に分かりやすい分類が必要でした。しかしながら自動化によって入出荷情報をPCで一元管理できるようになり、人為的ミスを削減されます。また、人の目による視認性や分類は不要となるため、限られた倉庫内スペースを最大限に活用することができます。それに加えて、冷蔵・冷凍庫などの環境でも、機械ならば休むことなく稼働できるため生産性が向上します。

製品カテゴリ⑧ 清掃ロボット

製品カテゴリ定義:各種センサにより人や障害物を回避しながら自律走行で床を清掃(湿式、乾式等)するロボット。

対象業種:飲食サービス業、宿泊業

対象業務領域:清掃業務

審査担当工業会名:一般社団法人日本ロボット工業会

清掃ロボットは、清掃箇所を学習し、障害物を避けながら自律清掃を行うロボットです。業務用清掃ロボットは、家庭用ロボットに比較して長時間運転や大容量のごみ収集が可能であり、毎日の清掃をロボットに任せることで他の業務に人材を配置することができ、業務効率を改善できます。また、均一に全面清掃できるため清掃品質が安定し、広大な敷地であっても作業員に負担をかけることはありません。

製品カテゴリ⑨ 配膳ロボット

製品カテゴリ定義:
各種センサにより人や障害物を回避しながら自律走行により料理や飲み物等(導入する業種によっては、物資・部品や梱包物等)を人に代わって配膳するロボット。 
対象業種:飲食サービス業、宿泊業

対象業務領域:配膳業務

審査担当工業会名:一般社団法人日本ロボット工業会

配膳ロボットは、接客品質や感染症対策に効果的なロボットです。一度に運搬できる量が増え、配膳・下げ善がスムーズになることで座席回転率の向上が見込まれ、売上への貢献が可能です。広いフロアでの配膳や熱くて重い料理の長距離運搬などをロボットが担うことで、年配のスタッフでも働きやすい環境を提供することができます。また、配膳業務をロボットに任せることで、ホールスタッフは直接の接客や電話対応などに注力でき、店舗全体でのホスピタリティ向上が見込めます。

カテゴリの登録は、一般事業者やメーカーが行うことができないため、該当する機器が属する工業会によって、登録できる機器に差が出てくるかもしれません。

(出典:中小企業省力化投資補助事業・製品カテゴリ 登録指針 
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/gijut/2024/240209shoryokuka_01.pdf)

今後、登録が予想される製品は?

製品カテゴリ登録指針によると、製品カテゴリは、人手不足解消に効果がある汎用製品であり、中小企業等が導入することにより、設定される対象業種の対象業務領域において、生産工程・サービス提供の業務フローにおける課題の解決に資することにより当該業務の効率化・省力化が期待され、ひいては中小企業等の付加価値額や生産性向上を図ることができる製品の種類であることが求められています。

また、以下の業種・業務領域が提示されています。

●    共通:施設管理、人事・労務管理、財務・経理
●    建設業:企画・営業、見積・契約、資材調達、調査・測量、施工、検査、引渡、アフターサービス
●    製造業:企画・営業、見積・契約、資材調達、加工・生産、検査、保管・在庫管理、入出庫、販売・納品、アフターサービス
●    倉庫業:企画・営業、見積・契約、仕入、保管・在庫管理、入出庫、梱包・加工、出荷、返品対応
●    卸売業:企画・営業、見積・契約、仕入、保管・在庫管理、入出庫、梱包・加工、出荷、請求・支払、顧客対応
●    小売業:企画・営業、見積・契約、仕入、保管・在庫管理、店舗運営、請求・支払、販売・納品、アフターサービス
●    宿泊業:企画・営業、受付案内、予約管理、調理、配膳・下膳、請求・支払、客室清掃、顧客対応
●    飲食業:企画・営業、仕入、注文受付、調理、配膳・下膳、請求・支払、顧客対応

製造業においては、加工・生産のプロセスで、協働ロボットや溶接ロボット等さまざまな産業用ロボットが対象になりそうです。また、倉庫業では、ピッキングロボット、パレタイジングロボット等の登録が予想できます。飲食業では、POSレジや調理ロボット等が登録されていくと思われます。

まとめ

具体的な型番など、製品機器のカタログへの掲載は、①工業会によるカテゴリの登録・承認、②製造事業者(メーカー)による製品機器の登録・承認を経て、行われます。現在は、引き続き①の工業会によるカテゴリの登録が受付中となっており、承認された9つのカテゴリのみ製品登録が可能となっています。

カテゴリの承認や製品登録は順次行われ、公開されていくようですので、自社で活用できる設備が登録されるかどうかは、今後の動向を注視しましょう。

3月15日に実施された『令和6年度当初予算・令和5年度補正予算 関連施策説明会』によると、想定スケジュールとして、

●     3月下旬  事業者向け公募開始
●     6~7月  申請受付開始

と発表があり、これから順次、製品登録や製造事業者登録が進んでいくと思われます。

カタログ型である省力化補助金は、人手不足に悩む中小企業にとって迅速な効果をもたらす可能性があるうえ比較的容易に挑戦できる支援です。
最新の技術を取り入れた効率的な経営にむけて、ぜひこの補助金の活用をご検討ください。
筆者・監修

省力化補助金編集部

シェアビジョン株式会社

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