令和5年度補正予算で注目の新補助金!カタログ型の省力化投資補助事業とは?

2024/01/10

はじめに

日本は、長引くデフレ状態から完全に脱却することが課題となっています。デフレ脱却に向けた経済対策として、参院本会議で令和5年度の補正予算が可決されました。補正予算規模は、一般会計の総額が13兆1,992億円とのことです。そのうち経済産業省の施策には、4.5兆円が割り当てられました。

今回の参院本会議で創設された補助金事業には、持続的な賃上げを目的とした中小企業省力化投資補助事業があります。本記事では、令和5年度の補正予算で注目されるカタログ型の省力化投資補助事業について解説します。

令和5年度補正予算のポイント

令和5年度の補正予算は、2023年11月29日に可決されました。デフレからの完全な脱却を目的にした5つの総合経済対策に振り分けられています。5つの経済対策における予算規模や概要は、次のとおりです。
経済産業省の補足予算枠は、国庫債務負担行為による複数年度分を含めた場合、合計で4.9億円(GX1.0億円含む)とのことです。

持続的賃上げや所得向上、地方の成長などは、新しい資本主義を推進するテーマとして政府が重視しています。物価高への対策では、持続的な賃上げを企業に求めなければなりません。持続的な賃上げには、職場の省力化で生産性を向上させる狙いが考えられます。

省力化は、人が担当する作業を産業ロボットやIoT(モノのインターネット)の導入で自動化する取り組みです。政府は、省力化に向けた設備投資の補助金事業を通して、これらの機器の導入を後押ししようというわけです。

省力化投資補助金導入の背景と目的

省力化投資補助金は、令和5年度の補正予算より導入された新補助金です。ここでは、新しく導入となった背景と目的について解説します。

1990年以降、日本は経費削減を最優先とする経済でした。経費削減の対象は、次のとおりです。
企業では、これらの積極的な経費削減が行われ、結果として消費と投資が停滞しました。このまま国民の消費や投資活動が停滞してしまえば、変革も進まずデフレ型の縮小経済になるかもしれません。

ところが、2023年の日本経済は経費を削減する経済からの変革期とも言われています。内閣府の広報・報道では、新しい日本経済の追い風として3つの要因を掲げています。
政府は、これらの要因を経済変革の機会と判断しています。経済変革の機会になるこれらの要因は、新しい総合経済対策の始動へとつながりました。中小企業が直面する課題や競争環境の変化
中小企業が直面する課題は、物価高騰による収益減少ではないでしょうか。中小企業庁の見解では、感染拡大以降、物価は急激に上昇しているものの、円安為替によって輸入物価が減少している状況から、今後は企業間で売買されるモノの値上がりを示す「企業物価」や消費者が購入するモノやサービスの物価の指数を示す「消費者物価」も減少することが予測されています。輸入物価の減少は、石炭や石油などの鉱物性燃料の価格下落や、為替の変動による判断です。

しかしながら、上昇分の価格転嫁が行えている事業者は多くはなく、物価高による中小企業の収益減少は課題となっています。このような課題に対して中小企業は、物価高騰を受けた値上げだけではなく、経費削減と業務効率化に着手している状況です。
中小企業白書では、中小企業に直面する課題に深刻な人手不足にも言及しています。少子高齢化や労働市場の需給バランスの低下などが要因です。

さらに現状では、2024年4月から改正される時間外労働の上限規制適用で、物流業(自動車運転業務)や建設業、医師などの働き方に規制が掛かります。人手不足と労働時間の規制への対応が急がれる状況です。

また、中小企業の競争環境にも変化があらわれています。人手不足への対応では、省力化投資で生産性向上に取り組む企業も存在します。中小企業白書では、人手不足への対応として省力化に取り組む企業の割合が示されていました。
中小企業の多くは、人手不足を正社員やパートタイマーの採用で乗り切ろうとしています。そのような中でも、採用活動だけに捉われず、業務プロセスや人材開発、IT化に取り組む企業も全体の3割程度存在します。省力化による生産性の向上は、新たな競争のテーマではないでしょうか。労働力の効率化と省力化が企業にとってなぜ重要か
労働力の効率化と省力化は、企業にとって重要な取り組みです。その理由は、省力化の先にある売上拡大や生産性向上という成果があるからです。

補足予算のテーマとなる新しい総合経済対策では、「持続的な賃上げと活発な投資がけん引する成長型経済」への変革が掲げられています。この経済変革では、物価高を乗り切るための賃上げが優先課題です。

省力化投資補助金は、人手不足に悩む中小企業への省力化投資を支援する目的で創設されました。省力化投資補助金の導入で目指す成果は、次のとおりです。
省力化投資補助金は、中小企業の持続的な賃上げ促進や、非正規雇用労働者の所得向上が支援目的となります。企業が省力化投資補助金を導入することは、「年収の壁」の突破や構造的な賃上げの実現となるでしょう。

企業にとっての省力化は、売上拡大や生産性の向上です。それにより収益を増加できれば、賃上げが実現できます。労働力を効率化することの重要性が見直される機会とも考えられます。

省力化投資補助事業の特徴

省力化投資補助事業は、中小企業等事業再構築促進事業が再編された補助金事業です。深刻な人手不足の問題を抱える中小企業の省力化投資支援として活用できます。事業スキームは、次のとおりです。
事業スキームは、従来の中小企業等事業再構築促進事業で実施されてきた方法で行われます。補助金の予算規模
省力化投資補助事業の予算規模は、令和5年度の補正予算額のうち1,000億円が割り当てられました。中小企業等事業再構築基金の活用なども含めて合算すれば、総額5,000億円規模の予算枠です。

省力化投資補助金は、企業規模によって補助上限額が異なります。
省力化投資補助金は、これらの補助上限額を基準に、投資金額に補助率2分の1をかけた金額が支給されます。補助対象となる投資項目
省力化投資補助事業は、公募開始されていないため、補助対象となる投資項目が予測の範囲内です。ここでは、各業種の省力化に役立つ投資項目を紹介します。あくまでも投資対象候補の予測と判断してください。
省力化には、これらIoTやロボットなどのデジタル技術の活用により、人手不足解消を目指します。省力化投資補助事業では、補助対象となる投資製品をカタログから選択して導入するカタログ型の補助金システムです。申請方法について
省力化投資補助金は、2024年度から始まると想定される補助金支援事業です。申請者は、事前登録のうえで共有するカタログから、投資対象の製品やサービスを選択します。カタログ型の仕組みは、申請者だけではなくカタログに掲載される製品やサービスの販売元にも大きなビジネス機会となるでしょう。
また、全て電子申請となりますので、GビズIDプライムアカウントの取得が必要です。
準備期間
省力化投資補助金の申請は、2024年4月以降になると見込まれています。公募要領の発表から申請締切りまでの期間が短いことも想定されるため、今のうちに、自社の経営課題や課題解決につながるデジタル技術の知識を深めて、準備しておきましょう。
従来の事業再構築補助金について
従来の事業再構築補助金は、次の対象者向けに変更となります。
など、支援の対象者が限定的になる点に注意が必要です。事業再構築補助金の場合だと、現状の事業形態からV字回復を目的にしている中小企業などが該当します。対象となる事業者には、次の変革への意欲が求められるでしょう。

まとめ

今回は、令和5年度の補足予算で可決された新しい補助金の仕組み、省力化投資補助金について解説してきました。2024年度から公募開始の補助金となるため、今後の案内に期待がかかります。

省力化投資補助金の特徴は、カタログ型という点です。自社の経営課題の解決になる製品をカタログの投資項目から選択するシンプルな申請プロセスです。利用する企業の人手不足解消に役立てば、カタログ型の申請方法が定着するかもしれません。省力化投資補助金は、今後の動向が注目されるでしょう。
筆者・監修

省力化補助金編集部

シェアビジョン株式会社

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