2024年6月から公募が開始された省力化投資補助金ですが、新しい補助金制度ということもあり、公募開始以降もさまざまな変更がされています。
「導入したいはん用製品がなかなか製品カタログに登録されず、活用できない!」という事業者の声を受けてか、2024年11月1日には、カテゴリ登録に関する制度の見直しが行われ、また製品カテゴリ登録・製品登録のサポート体制を強化することが発表されました。
最近では、省力化投資補助金の「製品カタログ」「製品カテゴリ」の更新頻度が徐々に上がってきています。申請サポートの強化で、製品カタログの拡充に弾みがつくことを期待したいですね。
2024年11月5日のカタログ更新では、対象となる業種に「自動車整備業」が追加されました。
現在、登録されている対象となる業種は以下の14業種となっています。
飲食サービス業、卸売業、小売業、その他の事業サービス業、倉庫業、宿泊業、製造業、印刷・同関連業、建設業、専門・技術サービス業、廃棄物処理業、娯楽業、サービス業(他に分類されないもの)、自動車整備業
また、製品カテゴリには、自動車向け溶接機(スポット溶接機)と、自動車向け溶接機(パルス制御溶接機)が追加されました。
省力化投資補助金は、以下のような流れで製品登録が行われます。
工業会等がカテゴリの登録申請を行い、有識者委員会にて意見招聘を行った上で中小企業庁がカテゴリの承認を行う
製造事業者は工業会を通じて省力化製品及び製造事業者の登録申請を行う
有識者委員会の意見招聘を経て中小企業庁が省力化製品及び製造事業者の承認を行う
③を経て登録された製品について製造事業者がカタログ申請を行い製品カタログに掲載
自動車向けの溶接機は、製品カテゴリが登録された①の段階です。ここから②~④の工程を経て製品がカタログに掲載されます。また、この製品登録の流れとは別で、販売事業者の登録が進められます。
事業者が実際に申請可能となるのは、製品登録と販売事業者登録が完了した後になります(この補助金は、販売事業者との共同申請となるため、製品に紐づいた販売事業者を選択する必要があります)。
カテゴリに登録されたからといって、すぐに設備導入に向けた申請ができるわけではありませんが、今後、これらの製品で補助金が使える見通しが立ったことは、該当する事業者の方には良いニュースですね。
● 自動車向け溶接機(スポット溶接機)の省力化効果と価格の目安
自動車向けの溶接機は、自動車の鈑金修理に特化して溶接を行える設備で、自動車に穴が空いたり、傷ができたりした際の修理に活用することができます。
自動車の鉄板が重なっている箇所を溶接する際、プラグ溶接からスポット溶接へ変更することで、品質向上や工程の短縮、作業ミスの削減といった大幅な省力化が見込めます。
自動車用のスポット溶接機は溶接パラメータを自動的に設定するため、溶接条件の設定ミスがなく、ヒューマンエラーを大幅に減らすことができます。これにより、溶接不良や手直しの頻度が下がり、生産性の向上が見込めます。
価格の目安は300万円からとなっています。
● 自動車向け溶接機(パルス制御溶接機)の省力化効果と価格の目安
パルス制御溶接機は物理的に鉄板が挟めない箇所の溶接を行う設備です。自動車のボディ構造やフレーム部分など、非常に高い精度で溶接を行う必要がある部位の修理で使われます。
パルス制御は、溶接電流を細かくコントロールできるため、均一で安定した溶接品質が実現できます。パルス制御で温度を最適(高温や低温)に調整しながら溶接することで、品質不良による手直しが減少し、生産性の向上および省力化が可能となります。自動で設定される溶接条件により、溶接設定のミスが減少し、作業者によるヒューマンエラーのリスクが低減され、生産性向上します。
価格の目安は200万円からとなっています。
溶接機が導入したくても活用できない事業者もある!?
ここで注意しなくてはならないのは、製品カタログに登録されている製品は、対象業種と対象業務プロセスでしか使えないということです。上は、公式サイトにアップされている製品カテゴリPDFの一部です。製品カテゴリには、対象業種と対象業務プロセスが記載されています。
例えば、「清掃ロボット」であれば、対象業種に「飲食サービス業」「製造業」「小売業」等さまざまな業種が登録されているので、どの業種であっても清掃業務のために活用することができます。
ところが、今回登録された「自動車向け溶接機(スポット溶接機)」「自動車向け溶接機(パルス制御溶接機)」は、対象業種が「自動車整備業」のみであり、対象業務プロセスも「整備・修理」のみとなっています。
カテゴリの登録は、工業会が行いますが、今回カテゴリ登録された溶接機は、(一社)日本自動車車体補修協会が審査担当をしています。2件とも自動車向け溶接機であるため、一般的な金属加工業等で活用される溶接機は製品登録されないと思われます。しかし、仮に、導入したい溶接機がカタログに登録されたとしても、「製造業」の「加工・生産」プロセス等では活用することができないので注意しましょう。
以下、改めて省力化投資補助金の概要を記載します。
● 省力化投資補助金スケジュール
応募・交付申請 | 随時 |
採択・交付決定 | 1~2か月程度 |
補助事業実施期間 | 原則、交付決定日から12か月以内 |
応募受付期間 | 令和8年9月末まで(予定) |
● 補助対象経費
IoT、ロボット等の人手不足解消に簡易で即効的な効果がある汎用製品で、国の提示する「カタログ」に掲載されている製品の①製品本体価格と②導入に要する費用(導入経費)が補助対象経費となります。省力化が目的の補助金のため、新規事業で活用する設備は対象になりません。
製品カテゴリや登録製品は随時更新されており、現在32カテゴリ、201製品が登録されています。今後もカテゴリ及び登録製品は拡充されていく見込みです。
※登録製品はこちらから検索できます。
製品カタログ⇒https://shoryokuka.smrj.go.jp/product_catalog/
● 補助対象事業者
人手不足の状況にある日本国内の中小企業・小規模事業者で、すべての従業員の賃金が最低賃金を超えている企業が対象です。個人事業主も申請可能です。
● 補助事業の要件
補助事業終了後3年間で毎年、労働生産性を年平均成長率3%以上向上させる事業計画を策定することが必要です。
● 補助上限額と補助率
省力化投資補助金の補助上限額は、従業員数によって異なります。
従業員数 | 補助率 | 補助上限額(大幅な賃上げを行う場合) |
5人以下 | 1/2以下 | 200万円(300万円) |
6~20人以下 | 1/2以下 | 500万円(750万円) |
21人以上 | 1/2以下 | 1,000万円(1,500万円) |
補助上限を引き上げる場合は、申請時と比較して以下の(a)(b)両方を、補助事業期間終了時点で達成する必要があります。
(a)事業場内最低賃金45円以上増加させること
(b)給与支給総額6%以上増加させること
賃上げの目標が達成できなかった場合には、補助上限額の引き上げを行わなかった場合の補助上限額まで減額されます。
このカテゴリ製品を活用できるのは「自動車整備業」の「整備・修理」のみ
11月に入り、省力化投資補助金公式サイトの更新頻度が上がってきています。この勢いで製品登録がどんどん進めば、補助金活用の幅も広がりますね。省力化投資補助金は新しい補助金制度ということもあり、制度内容も登録製品もどんどん更新されています。省力化のための設備導入を検討されている事業者の方は、今すぐ使えないからといってあきらめず、定期的に情報収集をしていきましょう。主な変更点等は、このブログでも、随時お知らせしていきます。