省力化投資補助金(カタログ注文型)の公募結果情報が公開!

2025/10/06

この記事の重要ポイント

はじめに

2025年度から新たに創設され、中小企業の人手不足解消の切り札として注目されている「省力化投資補助金(カタログ注文型)」、2024年6月に公募が開始してからしばらくは、なかなかカタログ製品の登録が進まず、活用できる事業者も限られていました。

審査結果もこれまでは申請した事業者へ個別に通知されていましたが、2025年9月19日、初めて公募結果情報(2025年8月末時点)が公開されました。
本コラムでは、公表されたデータを分析し、採択の傾向や今後の申請に向けたポイントを分かりやすく解説します。

省力化投資補助金(カタログ型)の採択率

省力化投資補助金(カタログ注文型)とは、人手不足に悩む中小企業等が、IoTやロボットなどの省力化製品を導入する際に活用できる補助金です。ものづくり補助金などの他の補助金と比べて書類作成の負担が軽く、事務局が審査し、省力化効果が保証され、あらかじめ登録された「カタログ掲載製品」のみが対象となるため、採択率は高いだろうと予想されていました。
出典:中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)公募結果『交付申請数及び交付決定数の推移』
今回の発表では、累計交付決定数1,173件に対し、累計交付申請数の具体的な申請数は公表されていませんが、グラフから推察すると約1,650件、8月末時点での採択率は約70%前後であることがわかります。審査時間のラグもあるため、最終的な採択率はもっと高くなると思われます。

交付決定データから見る採択の傾向

次に、今回公表された1,173件の交付決定データを基に、どのような傾向が見られるかを見ていきましょう。

①業種別採択割合

まず、採択された事業者の業種を見ると、「建設業」(40.5%)が最も多く、次いで「製造業」(18.4%)、「飲食サービス業」(13.4%)と続きます。これら3業種で全体の7割以上を占めており、特に人手不足が深刻な業種での活用が進んでいることが分かります。

一方で、「小売業」(7.8%)や「学術研究、専門・技術サービス業」(9.4%)、「宿泊業」(2.8%)など、非常に幅広い業種で採択されています。このことから、特定の業種に限らず、多くの事業者にとって活用のチャンスがある補助金と言えます。

②都道府県別採択件数

都道府県別に見ると、採択件数は「愛知県」(78件)が最も多く、次いで「福岡県」(66件)、「大阪府」(58件)、「東京都」(52件)、「静岡県」(50件)と続きます。

大都市圏や製造業が盛んな地域での活用が目立ちますが、47都道府県すべてで交付決定が下りており、地域を問わず全国の事業者に活用されていることが分かります。


③補助金申請額の分布
出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構
最も多い申請額は「50万円以上~100万円未満」(35.7%)でした。これは、設備投資額に換算すると100万円~200万円規模に相当し、多くの事業者がこの価格帯の製品で省力化の第一歩を踏み出していることが分かります。

注目すべきは、その申請金額範囲の幅広さです。

データを見ると、設備投資額で300万円未満(補助金額150万円未満)の申請が全体の約7割を占め、比較的手軽な投資で活用されている実態がある一方で、1,000万円を超えるような高額な設備投資(補助金額500万円以上)も全体の1割以上を占めています。

さらに、最大で3,000万円規模の大型投資(補助金額1,500万円)まで、幅広い採択実績があります。

製品カタログへの幅広い製品登録が進み、比較的手軽に投資金額100万円台の機器から試したいという事業者から、数千万円規模の本格的な設備投資で一気に生産性を向上させたいという事業者まで、企業の様々なステージやニーズに対応できる、非常に柔軟性の高い制度になっていることがわかります。

④従業員数別の採択件数割合
出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構
採択された事業者の従業員数を見ると、「5人以下」が16.9%と最も多く、次いで「6~10人」(14.7%)、「21~30人」(12.4%)と続きます。

「5人以下」の事業者が最も多いという結果は、人手が限られている小規模事業者こそ、この補助金を積極的に活用し、省力化の恩恵を受けている証拠と言えるでしょう。

このデータを見ると、小規模な事業者の方が採択されやすいのではないかと思われるかもしれませんが、従業員数が501名以上の事業者(0.9%)まで、幅広い規模の企業が採択されています。

資本金についても同様に、2,000万円~3,000万円未満、 1,000万円~2,000万円未満が多くなっていますが、資本金1億円以上の企業も採択されており、公募要領で定義されている中小企業に該当すれば、企業規模によって採択可能性が変わるということはなさそうです。


⑤製品カテゴリ別採択件数
製品カテゴリ別の採択状況を見ると、業種ごとの特徴が明確に表れています。

最も採択件数が多かったのは、建設業で広く活用される「測量機(高機能トータルステーション)」で、全体の44.3%を占めました。

採択件数で2番目に多かった製造業では、事業内容の多様性を反映し、幅広い製品が採択されています。具体的には、「産業用枚葉デジタル印刷機」(印刷業)、「スチームコンベクションオーブン」(食品製造業)、「段ボール製箱機」(紙加工品製造業)、「鍛圧・板金加工用バリ取り装置」(金属加工)などが挙げられます。

また、飲食サービス業や宿泊業では「スチームコンベクションオーブン」「券売機」、小売業では「タブレット型給油許可システム」、ビルメンテナンス業などでは「清掃ロボット」が多く採択される傾向にありました。

製品カテゴリは随時更新されているので、自社で活用できる製品が登録されていないか、改めて確認してみましょう。

今回の結果から見えたこと

今回、初の交付決定概要の公表から、この補助金が「企業の業種や規模、投資の大小を問わず、全国の中小企業が人手不足という共通課題の解決のために活用できる、非常に間口の広い制度である」ということが明確になりました。

採択率も高いため、製品カタログに掲載されている製品が自社の省力化にマッチさえすれば、非常に魅力的な補助金制度だと言えるでしょう。

申請成功のポイント

これから申請を検討される事業者の方は、ぜひ以下のポイントを押さえて準備を進めてください。

①投資対効果を見据えた課題の明確化
「どの業務に時間がかかっているか」という現状分析に加え、「その課題を解決することで、どれだけの生産性向上やコスト削減が見込めるか」という投資対効果の視点を持つことが、説得力のある申請に繋がります。
自社の人手不足や作業負担の現状が、カタログ製品の導入でどう解決するかを明確にしましょう。

②適切な省力化製品の選定
カタログに登録されている製品であれば何でも対象になるわけではありません。自社の業務課題に直結する製品を選ぶ必要があります。
  例)「溶接工が一人しかいない」→「溶接ロボットを導入し、生産性向上」
  例)「出荷作業に時間がかかる」→「自動梱包機を導入し人員削減」
なぜその製品が必要なのか、導入によって自社課題がどう解決するかを明確にした上で、カタログに掲載されている製品を検討しましょう。

まとめ

省力化投資補助金(カタログ注文型)は、多くの中小企業にとって、人手不足を乗り越え、生産性を向上させるための大きなチャンスです。

書類準備などの負担は比較的少ない補助金ですが、申請には事業計画の策定や効果報告など、慣れない作業も多く含まれます。本業が忙しい中で、補助金申請の準備を進めることに躊躇している事業者の方もいらっしゃるかもしれません。

そのような事業者の方は、補助金活用のサポートに精通した認定支援機関に、ぜひ気軽にお問い合わせください。
筆者・監修

省力化補助金編集部

シェアビジョン株式会社

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