カタログ型省力化補助金、IT導入補助金とはどこが違う!?

2024/01/10

はじめに

令和5年度の補正予算として公開された省力化投資補助事業に、注目している方も多いでしょう。しかし、補助金について勉強している方なら省力化投資補助事業が、既存のIT導入補助金と似ていると気づくはずです。実は、よく比較すると両者の違いが浮かびあがります。

この記事では、IT導入補助金と省力化投資補助事業の特徴について両制度を比較しながら紹介します。ぜひ、制度を理解する際の参考にしてください。

IT導入補助金の特徴

IT導入補助金は、中小企業等を対象として業務効率化やDX等を達成するためのソフトウェア、アプリ、サービスなど各種ITツール(ソフトウェア、アプリ、サービス等)の導入をサポートするための補助制度です。

特筆すべき点として、業務の自動化・効率化、労働時間短縮化・省人化、管理体制の強化、販路拡大などを通して、労働生産性向上を目的としている点が挙げられます。

そのため、補助制度を適切に利用するためには、自社の置かれた状況の理解が不可欠です。デジタル化の推進状況や現状の強み・弱みを正しく認識したうえで、経営課題を解決できるツール選定を行う必要があります。自社に合っていないITツールを採用しても、労働生産性は向上しないからです。

補助制度の正しい活用を推進するため、IT導入補助金にはIT導入支援事業者という制度が設けられています。IT導入支援事業者は申請作業を一緒に行う共同事業者(パートナー)です。使用するITツールの提案や運用方法の相談、経営診断ツールに基づく事業計画の策定支援など、IT導入補助金の利用に伴う生産性の向上に向けて幅広い分野でサポートしてくれます。

補助金の枠組
なお、導入する対象によって、補助金の枠組は下記の3つに分かれています。
いずれにしても、補助対象としては基本的にソフトウェアやシステムといったITツールになっています。

省力化投資補助事業(カタログ型)の特徴

省力化投資を支援
省力化投資補助事業は令和5年度補正予算として公開された事業の一つです。人手不足に悩む中小企業等の売上拡大や生産性向上を促進するため、IoTやロボット等の導入を通して業務省力化への投資を支援する制度です。最終的な目標として従業員の持続的賃上げが掲げられており、賃上げ要件を達成すると補助額が引上げられます。

設備をカタログから選定する
また、汎用性の高い製品を「カタログ」から選べる体制になっているのも注目すべきポイントです。専門的知識を有していなくとも、簡易で即効性の高いサービスを導入できる仕組みが構築されています。

現在のところ、カタログ自体は未公表です。しかし、内閣府のホームページで公開されている総合経済対策政策ファイルには、飲食業における自動清掃機ロボットや自動配膳ロボットが紹介されています。また製造業で活用される産業型ロボットも対象となる見込みが高いでしょう。労働時間の削減が導入の具体的な効果として説明されているため、同様の効果を持つ製品がカタログに掲載される可能性があります。

事業再構築補助金が再編
省力化投資補助事業はポストコロナ・ウィズコロナ時代の社会的変化への適応を目指す中小企業等の事業再構築を支援する中小企業等事業再構築促進事業(事業再構築補助金)を再編したものです。従来制度の活用を含めると、予算規模は総額5,000億円となる大規模な事業です。

また、中小企業等事業再構築促進基金として補助を行ってきた、いわゆる「事業再構築補助金」については、必要な見直しを実施すると明記されています。

令和6年1月中旬時点において、中小企業省力化投資補助事業の詳しい制度内容は未公表です。関心のある方は、公式サイトの確認をこまめに行いましょう。

省力化投資補助金とIT導入補助金との違い

ここでは、省力化投資補助金とIT導入補助金の違いについて、5つのポイントに分けて比較しながら紹介します。目を通せば、両方の制度の概略を把握できるようになります。①スケジュール
省力化投資補助金
省力化投資補助金のスケジュールはまだ公表されていません。しかし、11月末に令和5年度の補正予算が成立したため、令和6年度に公募が始まると予想されています。カタログ型という形式上、年度が変わる前には製品・設備のカタログ登録・認定に関しての公表も当然あるはずで、公募自体は新年度が始まる4月以降に受付が始まると思われます

IT導入補助金
一方、IT導入補助金は平成28年度から実施されている補助制度です。年度によって回数は異なりますが、申請期間は複数回設けられています。

令和5年度については
となっています。

複数回設定されている締め切りの、おおむね一か月後に交付決定がなされています。事業報告の締め切りは前期分については全て11月30日です。しかし、後期分については半年前後の間をおいて締め切りが設定されています。

②申請方法
省力化投資補助金
省力化投資補助金の詳細な申請方法は、まだ公表されていませんが、GビズIDプライムアカウントを使用した電子申請になります。事業再構築補助金とカタログを見たうえで、該当する製品を選んで申請をする流れになると予想されます。

採択や交付決定などもメールで送られてきます。また、事業開始後の事業計画変更や実績報告もGビズIDを使用してjGrantsを通して行います。

IT導入補助金
GビズIDを使用した電子申請であることや、必要書類の提出など、申請方法等は、大きく異ならないことが予想されますが、以下のステップが提示されています。
③対象業種、領域
省力化投資補助金
今後、公開されるカタログに目を通せば、対象となる業種・領域が分かるでしょう。現状において詳細な情報は明らかになっていませんが、内閣府のホームページで公開されている総合経済対策政策ファイルには、飲食業が対象業種の具体例として挙げられています。

また、自動清掃ロボットや自動配膳ロボットなど例とされていることは注目すべきファクターです。作業負担の削減に即効性のある設備が選ばれているため、同様の製品が効果を発揮する下記のような業種が対象となると思われます。
・IT導入補助金
一方、IT導入補助金は飲食、宿泊、卸・小売、運輸、医療、介護、保育といったサービス、製造業や建設業等が対象となっています。
④投資規模と補助金額
・省力化投資補助金(カタログ型)
投資対象となっているのは、人手不足に悩む中小企業等の従業員の賃上げにつながるIoTやロボットなどです。売上拡大や生産性向上に向けた省力化投資を支えることを目的としています。

省力化投資補助金は小規模事業者及び中小企業等を対象としています。補助金の上限額名から20名は500万円、21名以上は1,000万円です。

ただし、本補助制度の目的である従業員の賃上げ要件を達成した場合は、補助上限額が5名以下の場合は300万円、6名から20名は750万円、21名以上は1,500万円に引き上げられます。なお、補助率は従業員数に関わらず、一律で1/2に設定されています。

・IT導入補助金
IT導入補助金は、従業員数による補助上限額の違いはありません。
また、補助額が申請する枠や類型により、細かく規定されています。通常枠の場合は対応できる業務プロセス数に応じてA類型とB類型に分かれており、それぞれ補助額は5万円から150万円未満、150万円から450万円以下で、どちらも補助率は1/2です。

セキュリティ対策推進枠の場合は5万円~100万円で補助率は1/2です。デジタル化基盤導入枠は350万円まで、補助率については50万円以下の場合は3/4、50万円以上は2/3と規定されています。PCを購入する場合は10万円まで、レジは20万円までです。どちらも補助率は1/2です。
⑤対象設備
・省力化投資補助金
省力化投資補助金の対象設備は2024年1月中旬においてまだ公開されていません。しかし、内閣府のホームページで閲覧できる総合経済対策政策ファイルには、具体例として飲食業が取り上げられ、自動清掃ロボットや自動配膳ロボットが対象の設備として紹介されています。作業負担や労働時間の削減に貢献する設備として記載されているため、他業種においても同じ目的を持つ下記のようなIoTやロボットが対象設備となるでしょう。
・IT導入補助金
IT導入補助金は自社の課題やニーズに合ったITツール、サイバーセキュリティを向上させるためのソフト、インボイス対応に必要な会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフト、複数社での導入するITツールなどが対象となっています。

おわりに

この記事ではIT導入補助金と省力化投資補助事業(カタログ型)の特徴について両制度を比較しながら紹介しました。IT導入補助金は労働生産性の向上を目的としていますが、省力化投資補助事業は業務効率化を通して従業員の賃上げを実現することを目的としています。また、IT導入補助金はITツールの導入を主目的としているのに対して、省力化投資補助事業(カタログ型)はロボットやIoTの導入に力を入れる可能性があります。

そのため、自社の経営課題に応じた補助制度の選択が必要です。この記事を参考にしながら、最適な補助制度を選ぶようにしましょう。
筆者・監修

省力化補助金編集部

シェアビジョン株式会社

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