省力化投資補助金公募要領発表!

2024/04/04

はじめに

今年から新たに導入される補助金として注目されている、カタログ型の省力化投資補助事業(省力化投資補助金)の公募要領が3月29日に発表となりました。申請受付時期及び終了時期は省力化補助金のHP上で公開するとなっており、現在も明らかになっていませんが、この記事では、公募要領で明らかになった要件のポイントを絞って解説していきます。

1. 補助額について

補助率及び補助上限額は、以前から公表されている通りで、以下のようになっています。
※賃上げ要件
(a)事業場内最低賃金45円以上増加させること
(b)給与支給総額6%以上増加させること

2. 補助対象経費

この補助金では、(1)製品本体価格と(2)導入に要する経費(導入経費)の二つが補助対象経費となります。省力化製品がカタログに掲載される際、(1)、(2)が事前登録される他、参考値として(3)保守・サポートに要する費用の目安も登録されるため、必要経費を事前に把握することができ、事業計画が立てやすくなります。

3. 事業実施の流れ

全体のフローとしては、以下のような流れになります。
(1)事前準備(事業計画の策定)
この補助金は、登録されている製品カタログの中から、登録されている販売事業者を通して、機器を導入する必要があります。事業計画の策定にあたっては、まずカタログから導入予定の導入製品を選択します。その上で、人手不足の状態であることを確認し、省力化を進めるための計画を作成します。

(2)交付申請 
交付申請は、中小企業等の事業者と販売事業者の共同申請となります。申請は、GビズIDプライムアカウントを用いた、電子申請となります。

(3)採択通知および交付決定
審査を経て、採択発表が行われますが、この補助金では、採択発表と同時に交付決定が行われます。

(4)補助事業期間
採択発表と交付決定が同時となるため、速やかに事業を進めることができます。交付決定日から原則12か月以内が補助事業期間となっており、その間に、発注、省力化製品の導入、検収、支払いを行い、実績報告を提出します。

(5)補助額の確定及び補助金の支払い
実績報告が受理されると、事務局が補助額を確定します。補助額の確定後、支払い請求を経て、補助金が支払われます。

(6)効果報告期間
補助事業終了後、毎年度4月から6月までに効果報告を行う必要があります。効果報告期間は5年となっており、期限までに効果報告が提出されないと、交付決定が取り消され、補助金の返還を求められることがありますので、必ず行うようにしましょう。

(7)財産管理期間
補助金で取得する資産については、その処分に制限が課されます。補助事業が終了し、効果報告期間が終了しても、法定耐用年数を経過するまでの間は、適切な財産管理を行う必要があり、勝手に処分などをしてはいけません。

4. 採択における基本要件

採択に向けた基本要件として、以下のものを満たす必要があります。
①補助対象事業の要件

(1)導入する省力化製品に紐付けられた業種のうち少なくとも1つ以上が、補助事業者の営む事業の業種と合致している
この補助金は省力化を目的としているため、新規事業は対象とはなりません。自社で行っている事業内容と、導入する省力化製品に紐づけられた業種が関連している必要があります。

(2)カタログに登録された価格以内の製品本体価格・導入経費を補助対象として事業計画に組み込む
補助額の範囲外で、自費により経費(導入する設備)を追加することは認められます。また、複数の機器を導入することができますが、採択された後、同じ事業者が再度、別の公募回に申請することはできません(不採択となった場合に、再度応募することはできます)。そのため、導入したい設備が複数ある時は、補助上限額を鑑みながら、一回の公募で申請する必要があります。

(3)労働生産性の向上目標を設定し、その実現に向けて取り組むこと。
補助事業終了後3年間で毎年、申請時と比較して労働生産性を年平均成長率(CAGR)3.0%以上向上させる事業計画を策定する必要があります。

(付加価値額)=(営業利益)+(人件費)+(減価償却費) 
(労働生産性)=(付加価値額)÷(従業員数) 
(労働生産性の年率平均成長率)=
[{(効果報告時の労働生産性)÷(交付申請時の労働生産性)}^(効果報告回数※)-1 -1]×100% ※当該報告を含める。つまり、過去に効果報告を行った回数に1を加えた値となる。

(4)補助上限額の引き上げを行う場合は、賃上げの目標を設定し、その計画を従業員に対して表明するとともに、その実現に向けて取り組むこと。

申請時と比較して、

     (a)事業場内最低賃金を 45 円以上増加させること
     (b)給与支給総額を 6%以上増加させること


の双方を補助事業期間終了時点で達成する見込みの事業計画を策定することで、補助上限額を引き上げることができます。なお、補助上限額の引き上げを行わない場合は、事業場内最低賃金の増加や給与支給総額の増加は要件になっていません。

(5)省力化製品を登録されている業種・業務プロセス以外の用途に供する事業ではないこと
事業計画の中で、導入製品の使用方法について記載する必要があります。導入する省力化製品には、業種や業務プロセスが紐づけられるため、それ以外の用途の事業で活用することはできません。

(6)労働生産性の向上に係る目標を合理的に達成することが可能な事業計画に沿って実施されること
事業計画の中で、製品の導入により期待される省力化の効果を記載する必要があります。

(7)効果報告期間が終了するまでの間、省力化製品の導入を契機として、自然退職や自己都合退職によらない従業員の解雇を積極的に行わないこと
補助事業終了後のフォローアップ期間の報告で、省力化を通じて人員整理や解雇を行っていた場合には、補助金の返還対象となります。また、労働生産性の向上に係る目標が未達の場合や、賃上げによる補助上限額の引き上げを適用後、賃金を引き下げていた場合も、補助金返還の対象となるので、注意しましょう。

(8)補助額が500万円を超える場合は、保険又は共済への加入を必須とする。
補助額が500万円以上(購入額 1,000 万円以上)となる場合、事業計画期間終了までの間、火災等による取得財産の損失(及びそれによって補助事業を完遂し得ない事による交付取消)に備えて、付保割合が補助率(1/2)以上である保険又は共済への加入が必須となります。※補助事業実績報告書提出時に、保険・共済への加入を示す書類の提出が必要となります。なお、保険料は補助対象外です。

(9)既に所有する製品の置き換えを行うものでは無いこと。
同じ用途ですでに使用している製品を、新しい製品に更新する置き換えは対象にならないようです。

(10)GビズIDプライムを取得していること。
この補助金は、電子申請で行われ、交付決定通知や実績報告の提出も申請受付システムを通じて行われます。GビズIDプライムは、いつでも申請可能です。まだ取得していない事業者の方は、早めの申請をお勧めします。



② 補助事業対象者の要件

(1)人手不足の状態にあることが確認できること
これについては、以下から当てはまるものを一つ以上選択し、省力化を進める必要があることを事業計画の中で説明する必要があります。

①限られた人手で業務を遂行するため、直近の従業員の平均残業時間が30時間を超えている。
②整理解雇に依らない離職・退職によって従業員が前年度比で5%以上減少している。※ただし、非正規雇用が主体の事業者については総労働時間を従業員数で代替する。
③採用活動を行い求人を掲載したものの、充足には至らなかった。
④その他、省力化を推し進める必要に迫られている。

①~③に当てはまる事業者は、証憑を添付すること(具体的には後日発表)で、要件を満たすことが確認できますが、④のみを選択している場合は例外的な扱いとなり、具体的な省力化投資の必要性の説明を含め、以下の内容を記載した、より詳細な事業計画の策定が必要となります。

A.省力化量計算書
現在の受注状況が継続すると仮定したときに、既存の業務と製品導入後の業務それぞれでどの程度の工数が発生しているかを計算し、製品導入による省力化の割合(省力化指標)を自身の導入環境において試算する。

B.機器配置予定図
現在の事業所の物理的な状況を説明し、導入後にどのように変化するかを従業員の動きを含めて説明する。

≪補助対象外となる場合≫
また、他の補助金であっても、以下に当てはまる事業者は対象外となります。過去に国の補助金を活用したことがある事業者の方は、計画を進める前に確認しましょう。

・過去に「ものづくり補助金」の交付決定を受け、それから10ヶ月を経過していない事業者
・過去3年間に2回以上「ものづくり補助金」の交付決定を受けた事業者
・「事業再構築補助金」で採択された事業者であって、その補助対象である事業に用いるための機器を本事業で導入する場合

この省力化投資補助金は、令和8年9月末頃まで、複数回の公募が行われることになっています。第1回の公募では、補助対象外になったとしても、それ以降の公募で応募できることもあるので、確認してみましょう。

(2)全ての従業員の賃金が最低賃金を超えていること
最低賃金額は交付申請を行った日及び実績報告を行った日の最低賃金を基準となります。
厚生労働省 HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/)の地域別最低賃金額を参照すること。

≪審査の着眼点≫
審査の着眼点として、上記の要件を満たしているかどうかに加え、以下の点が挙げられています。

(1)事業計画に記載の省力化の効果が合理的に説明されており、省力化への投資により高い労働生産性の向上が期待できるかどうか。
また、既存業務の省力化により新しい取組を行う・高付加価値業務へのシフトを行うなど、単なる工数削減以上の付加価値の増加が期待できるか。

(2)大幅な賃上げによる補助上限額引き上げの適用を含め、賃上げに積極的に取り組んでいる、あるいは取り組む予定であるかどうか。

やはり、今回の補助金の目的である、「省力化の効果」「労働生産性の向上」「賃上げ」が、ポイントになりそうです。事業計画を策定する際には、要件を満たすだけでなく、これらの審査の着眼点を意識することが重要です。

まとめ

今回の発表では、具体的な申請受付の開始時期は分かりませんでしたが、全体のフローや基本要件などは詳細が明らかになりました。
これまでに別の補助金で採択された実績がある事業者の方は、その交付決定時期等を確認して、いつから公募が可能であるか、確認しておくとよいでしょう。
また、省力化投資補助金では、これまでの補助金にはなかった、「人手不足の状態にあることが確認できること」という要件が入っています。まずは、自社が「人手不足の状態である」と言えるかどうか、直近の従業員の平均残業時間や従業員数の変化等を確認しておくとよいでしょう。

具体的な事業計画の策定は、製品カタログが発表になってからになると思われますが、公募要領を確認しつつ、製品カタログの発表を待ちましょう。このブログでも、随時情報を追加していく予定です。
筆者・監修

省力化補助金編集部

シェアビジョン株式会社

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