はじめに
昨年11月に令和5年度補正予算の概要が発表され、「中小企業省力化投資補助事業」(以下、カタログ型省力化補助金)については、補助金の概要や補助上限額、補助率等が公表されていましたが、スケジュールや公募回数等については、分かりませんでした。
今回は、補助対象者となる事業者向けの発表ではありませんが、事務局を行う事業者向けへの公募要領から、新しいことがいくつか分かったので、お知らせしていきます。
補助金の実施期間と公募回数
補助金の実施期間としては、令和8年度9月末まで、公募回数は15回程度(公募頻度は2ヵ月に1 回)ということが発表されました。
これにより、今回のカタログ型省力化補助金が、1年だけで終了するのではなく、約3年にわたって実施される補助金であることが分かりました。
採択予定件数は計12万件程度と発表されました。
補助金の予算規模と一社あたりの補助金額から、ある程度は予想していましたが、大型補助金として注目された事業再構築補助金の第1回から第10回までの採択数が約7万6,000件ですから、今回の12万件が非常に大きな数字であることが分かるでしょう。幅広く多くの事業者を支援したいという政府の意図がうかがえます。
また、補助要件等について、記載の内容は差し当たってのものであり、今後、補助対象者の実情等を踏まえて変更となる可能性があるとしながらも、以下、これまでの発表よりも踏み込んだ内容が記載されています。
1. 補助対象事業
省力化投資補助枠(カタログ型)という名称と、「IoT、ロボット等の人手不足解消に効果がある汎用製品を「カタログ」に掲載し、中小企業等が選択して導入できるようにすることで、簡易で即効性がある省力化投資を促進する」という事業概要から、IT導入補助金に似たような仕組みで補助事業が行われるのではないかと予想されていましたが、やはりそのようになりそうです。
今回の公募発表では、「カタログ」に掲載されている機器を、「省力化支援事業者」から導入する事業が補助対象となるということが記載されました。この「省力化支援事業者」は、IT導入補助金における「IT導入支援事業者」のような役割が求められると予想できそうです。
事務局が決定され次第、最初にカタログに掲載される機器や省力化支援事業者の登録が始まるでしょう。
2. 補助対象者
(1)人手不足の状態にある中小企業や小規模事業者が対象
人手不足を客観的に示す証憑を提示するか、人手不足が経営課題となっている旨を申告することが必要とされています。人手不足であることを客観的に示す証憑が何を指すかは、現時点では分かりませんが、「人手不足」が重要なキーワードとなりそうです。
(2)事業終了後1~3年で付加価値額を増加させる計画が必要
ものづくり補助金や事業再構築補助金では、事業終了後3~5年で付加価値額を増加させる事業計画を策定することが要件として課されていましたが、今回のカタログ型省力化補助金では、事業終了後1~3年で付加価値額の従業員一人当たり付加価値が年率平均3%以上増加する見込みの事業計画を策定すること(以下、「付加価値額要件」という)が求められるようです。(付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費)
これにより、政府がより賃上げ等に対して危機感を持ち、スピーディーな効果を求めていることが分かります。
(3)賃上げ計画を従業員に表明しないと、補助金の増額分は返還
賃上げによる補助上限の変更を適用する場合は、申請時点で、申請要件を満たす賃金引上げ計画を従業員に表明することが求められます。交付後に表明していないことが発覚した場合は、補助金の増額分の返還を求めるとあります。
3. その他条件
これまでは、賃上げ要件について詳しくは記載されていませんでしたが、今回の発表により、具体的な賃上げ要件が明らかになりました。
補助事業終了時点において
(a)事業所内最低賃金を年額45円以上の水準で引き上げること
(b)給与支給総額を年率平均6%以上増加させること
の双方を申請時に宣言(以下「賃上げ要件」)した場合は、「大幅な賃上げを行う場合」の補助上限を適用するとあります。
(2)補助金の返還等
また、補助金の返還等についても、詳しい情報が追加されました。それによると、以下に該当する場合は、補助金の一部または全額を返還、または納付しなければならないことになります。
付加価値額要件の目標を達成できなかったとき
賃上げ要件の目標を達成できなかったとき
本事業の成果により収益が得られたと認められる場合
4. 補助率等
従業員数による企業規模 | 補助率 | 補助上限額 | 賃上げ要件を達成した企業 |
---|---|---|---|
従業員5名以下 | 1/2 | 200万円 | 300万円 |
従業員6~20名 | 500万円 | 750万円 | |
従業員21名以上 | 1,000万円 | 1,500万円 |
5. 補助予定件数
6. 募集方法と申請受付期間
スケジュールとしては、事務局の公募締切りが令和6年2月20日となっており、審査ののちに事務局が決定されます。その後、速やかにカタログに掲載する機器や、省力化支援事業者の登録と審査が行われます。カタログに掲載する省力化支援事業者と機器の選定後、令和6年3月より公募を行うとされていることから、ここはかなりタイトなスケジュールで公募の準備が進められると思われます。ここが予定通り整えば、4月の年度替わりを待たずに、公募が始まりそうです。
≪2024年3月27日追記≫
中小企業省力化投資補助金 公式サイト https://shoryokuka.smrj.go.jp/
現在は、2月9日から始まった工業会等の業界団体による製品カテゴリの登録が、引き続き行われています。また、すでに承認された製品カテゴリである、券売機、自動精算機、自動チェックイン機、スチームコンベクションの製品登録、製造事業者登録が行われています。
中小企業等の事業者の申請開始時期や、販売事業者登録開始時期などのスケジュールは、未定となっていますが、3月15日に実施された『令和6年度当初予算・令和5年度補正予算 関連施策説明会』によると、想定スケジュールとして、
3月下旬 事業者向け公募開始
6~7月 申請受付開始
と発表があるため、間もなく公募が発表となり、製品登録や製造事業者登録が行われていくと思われます。
カタログは順次追加されていくようですので、自社で活用できる設備が登録されているかどうか、こまめなチェックが必要です。新しい情報が公開されたら、このブログでもお知らせしていきます。
まとめ
カタログ型省力化補助金は、比較的低いハードルで中小企業の省力化投資を支援し、人手不足の克服や経済的な効果を期待できるものです。ぜひ積極的に活用を検討されてはいかがでしょうか。
省力化補助金編集部
シェアビジョン株式会社
認定支援機関(認定経営革新等支援機関※)である、シェアビジョン株式会社において、80%以上の採択率を誇る申請書を作成してきたメンバーによる編集部が監修・執筆しています。
当社は、2017年の会社設立以来、ものづくり補助金や事業再構築補助金等の補助金申請サポートをはじめとしたコンサルティングサービスを提供してまいりました。『顧客・従業員のビジョンを共有し、その実現をサポートすることで社会の発展と幸福を追求する』を経営理念とし、中小企業の経営者のビジョンに寄り添い、ビジネスの課題を解決するための手助けをしています。支援してきたクライアントは1,300社以上、業界は製造業、建設業、卸売業、小売業、飲食業など多岐に渡ります。このブログでは、中小企業の経営者にとって有益な情報を分かりやすくお届けしてまいります。
※認定経営革新等支援機関とは?
中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にあると国が認定した経営相談先です。全国各地に3万箇所以上の認定支援機関があり、税理士、税理士法人、公認会計士、中小企業診断士、商工会・商工会議所、金融機関、経営コンサルティング会社等が選出されています。認定支援機関を活用することで、補助金申請だけでなく、財務状況、財務内容、経営状況に関する調査・分析までを支援するため、自社の経営課題の「見える化」に役立ちます。
カテゴリー
最新の記事
- 続報! 中小企業省力化投資補助金 応募・交付申請は随時受付に
- 中小企業省力化投資補助金第2回公募の申請受付がまもなくスタート!
- 省力化投資補助金第1回公募回のスケジュールが発表!
- 省力化製品販売事業者登録要領が発表!
- 省力化投資補助金 製品カタログ公開スタート!
- 省力化投資補助金公募要領発表!
- カタログ枠の対象製品について
- 省力化投資補助事業 補助金申請・カタログ登録の流れ
- 速報!省力化補助金 基本要件等 最新情報(事務局 公募要領より)
- 令和5年度補正予算、中堅企業が申請できる省力化補助金は?
- 中小企業省力化投資補助事業における補助金活用のメリット・デメリットとは
- カタログ型省力化補助金、IT導入補助金とはどこが違う!?
- 注目の新補助金!中小企業省力化投資補助事業 ものづくり補助金とはどこが違う!?
- 注目の新補助金!中小企業省力化投資補助事業・業界別対象設備予想!
- 注目の新補助金! 省力化投資補助枠(カタログ型)について徹底解説!
- 令和5年度補正予算で注目の新補助金!カタログ型の省力化投資補助事業とは?