省力化投資補助金(一般型)第1回公募採択結果の傾向と分析

2025/07/01

この記事の重要ポイント

はじめに

 今年、ものづくり補助金の「省力化(オーダーメイド)枠」を引き継ぐ形で新設された省力化投資促進補助金(一般型)は、令和6年度補正予算で3,000億円規模での運用が決定された、中小企業者等を対象とした業務プロセスの「省力化」を推進するための補助金です。
 そんな省力化補助金(一般型)ですが、2025年6月16日に待望の第1回公募の補助金交付候補者が発表されました。発表に伴い、事業計画名や統計結果も公表されており、おおよその傾向分析も可能となっています。
 本コラムでは、その傾向とまとめについて詳しく説明していきます。

傾向①・採択率

まずは、一番気になる第1回公募の採択率を確認していきましょう。

省力化投資補助金(一般型)第1回公募採択者発表

 第1回公募の結果は上記の通りとなりました。最近は補助金の審査が厳格化しており、ものづくり補助金18次公募の採択率が35.8%、事業再構築補助金12回公募の採択率が26.5%と比較すると、かなり高い採択率となりました。省力化による生産能力アップという計画をしっかり明確化すれば比較的受かりやすい補助金だとも言えそうです。

しかし、補助金の第1回公募は比較的採択率が高くなりやすい傾向があるため、この採択率を目安に今後安易な申請を行うのは、やや危険と言えるかもしれません。

 省力化投資補助金(一般型)の第1回公募は、公募発表から申請受付締切までが約2か月、申請様式発表から締切まで約1か月、申請受付期間約2週間と、非常にタイトなスケジュールで実施されました。ものづくり補助金18次公募で5,777者の申請数があったことを考えると、申請準備が間に合わずに、申請を諦めた事業者も多かったのではないかと予想されます。

過去のものづくり補助金でも、申請が集中する公募回は一気に採択率が下がる傾向も確認されています。今後は、今回の高い採択率に惹かれて申請が集中する状況と相まって、採択率が下がる可能性もあります。


《参考・ものづくり補助金「申請件数の推移」》

傾向②・業種

各業種における採択件数は以下の通りとなりました。
 業種別の採択件数割合においては、製造業が全体の61.7%を占めるという結果になりました。これは、製造業という業種が元々設備投資の盛んな業種であるという要因に加えて、昨今の製造業全体の人手不足の影響が強く表れていると考えることもできます。
 専用機を用いて人手不足を解消していく、という省力化補助金の本旨が明瞭に表れている採択結果と言えるでしょう。

 一方で、割合としては大きくないものの、サービス業、卸売業、小売業等からも採択されています。実際に採択された事例を参考にすると、自社の取り組みで活用できるヒントが見つかるかもしれません。


● オーダーメイド性の高い設備を導入することで、高い省力化効果が見込まれる事例



●一連の業務プロセスを全て自動化することで、高い省力化効果が見込まれる事例




● 複数の汎用設備を組み合わせて導入することで、高い省力化効果が見込まれる事例

傾向③・都道府県

都道府県別の採択件数及び割合は以下の通りとなりました。
47都道府県全てにおいて採択者が存在するものの、大阪・愛知・東京に採択件数が突出して多いという結果となりました。
 また、中四国における採択率の低さが目立ち、設備投資への意欲の地域差が露わとなるような結果となりました。

傾向④・補助金申請額

採択者全体における補助金申請額の分布は以下の通りとなりました。
 結果としては、1,500万円以上~1,750万円未満で採択された事業者が最も多く申請額が高くなるほど採択者は減っていく、という傾向が確認できました。
 これはもちろん高額での申請が可能な事業者=従業員人数の多い事業者のパーセンテージがそれほど高くないことも関係していますが、口頭審査による厳密な審査も関連していることが考えられます。

 本補助金では、公募要領にて「口頭審査は、補助申請額が一定規模以上の申請を行う事業者を対象にオンラインにて実施いたします。」と明記されており、申請額が大きい事業者に対しては書面審査に加えて口頭審査が実施されていることがわかります。
 そのため、申請額が高額になる場合は特に、「事業者自身が計画の内容を明確に理解し、自身の言葉で説明できること」がより一層求められていると言えるでしょう。

傾向⑤・従業員数

 省力化補助金(一般型)第1回公募における「従業員数別の採択件数割合」は、次のようになりました。
 従業員数別の採択件数割合を見ると、21~30人以下が最も多く13.2%となっていますが、従業員数20人以下の企業の合計は44.4%となっており、比較的小規模な事業者が意欲的に省力化投資に挑戦し、採択されていることが分かります。
 ただし、101~200人以下の従業員数の事業者も8.0%を占めており、求められる賃上げに対する費用対効果が薄いと思われる層も多く申請していることから、申請者がもともと作成・検討していた賃上げ計画が本制度(設備投資計画)と合致していたことも特筆すべき点かと思います。

傾向⑥・事業計画名

 採択結果には、採択者の名称以外にも事業計画名が公表されています。その中からいくつか特徴的なワードをピックアップしたところ、以下の結果が確認できました。
 本補助金の趣旨に関与してくる特徴的なワードにおいては、省力化の源泉となる「ロボット」や「ライン」等を含む計画名が平均1割ほど確認されました。
 また、更に本旨に寄った「自動」に関する計画名はさらに増えて3割、「省力」に至っては全体の半数を占めるという結果となりました。
 事業計画名は審査員に与える最初の印象であり、趣旨に沿った内容であるかを一目で判断できる必要があります。そのため、このような特徴的なワードが多く確認できるのは至極当然と考えることができるでしょう。
 計画名を策定する際は、まず本旨と親和性の高いワードを選択するのも1つの手と言えるかもしれません。

まとめ

 省力化投資補助金(一般型)第1回公募の採択率は1,809者の申請数に対し、採択数は1,240者(全体平均採択率68.5%)と比較的高い結果となりました。

業種別では、建設業・製造業からの採択者が7割以上を占める結果となったものの、サービス業、卸売業、小売業等、幅広い業種から採択されています。採択された案件の概要や、採択決定事業者一覧の事業計画名等から、自社の取り組みで活用できるヒントが見つかるかもしれません。

第1回公募では、公募発表から締切までの期間が短かったため、申請数が少なく、その結果、採択率が高くなった可能性があります。今後、申請数が増えてくると、採択率も低くなっていく可能性があるため、確実な採択をつかみ取っていくためには、まず早めに準備に着手し、自社理解を確実に行っていくという基本的な部分が重要になってくると言えるでしょう。

 省力化投資について具体的な検討をされている事業者の方は、ぜひ一度、シェアビジョンにご相談ください。

筆者・監修

省力化補助金編集部

シェアビジョン株式会社

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