この記事の重要ポイント
来年も省力化投資支援は既存基金の活用により1,800億円規模で実施
製品カテゴリ総件数135、製品登録総件数は1,639(2025年12月4日時点)
2025年後半以降、製造業向け製品登録が続々と進む
はじめに
≪参考≫
中小企業庁 令和7年度補正予算案(中小企業・小規模事業者等関連予算)
2024年6月に運用が開始された中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)は、現在どのような状況なのでしょうか。本コラムでは、公募開始当初と最新情報を比較し、本補助金の現状と今後の見通しを解説します。
省力化投資補助金(カタログ注文型)の概要と特徴
省力化投資補助金(一般型)やものづくり補助金など、他の国の補助金のように、事業ごとの詳細な計画書や収益予測を作成する必要がなく、迅速かつ簡便に設備導入を進められます。
この制度の大きな特徴は、以下の通りです。
①効果実証済みの設備のみが対象
カタログに掲載される製品は、事前に事務局による省力化効果の審査を通過しており、「省人化」「生産性向上」の効果が保証されています。申請者は効果予測や複雑な数値計画を自ら立てる必要がなく、導入後の効果も想定しやすい制度設計です。
《参考》
中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)HP「カタログ注文型とは」
②申請手続きの簡便さとスピード
汎用設備があらかじめ選定されているため、仕様書作成や詳細な事業計画の作成負荷が軽減されます。また、補助金交付決定までの審査期間も短く、製造業を含む中小企業がスピーディに設備導入を進めやすい制度になっています。
《参考》
中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)HP「申請・手続きの流れ」
③中小企業・小規模事業者にも活用しやすい制度
小規模な設備投資から補助対象となるため、人手不足対策や部分的な自動化を検討する中小企業にとって、ハードルが低く利用しやすいのが魅力です。
このように、省力化投資補助金(カタログ注文型)は「手軽」「迅速」「現実的」という実用性を重視した補助制度として設計されています。しかし、自社が導入を希望している設備機器がカタログに登録されていないために、活用をあきらめたという事業者の方も多いのではないでしょうか。
特に製造業の方々からは、使いにくいという声をしばしば耳にしました。
一般事業者は製品登録ができない
① 製品カテゴリの登録
最初のステップは、製品をどのカテゴリに属するものとして扱うかを工業会が事務局に申請する「カテゴリ登録」です。カタログ注文型では製品がカテゴリごとに整理される仕組みのため、新しい分野の製品については、このカテゴリ登録が必要になります。
② メーカー(製造事業者)の登録
次に、製品を提供するメーカーが「メーカー登録」を行います。
この段階では、企業情報、保証体制、製品の取り扱い体制など、補助金制度を安全に利用できるかどうかに関わる項目が審査されます。メーカー登録が完了することで、次に進む「製品登録」の準備が整います。
《参考》
省力化投資補助金(カタログ注文型)「製造事業者向け申請の流れ」
③ 製品の登録申請(エビデンス提出)
続いて、メーカーは実際に補助金の対象としたい製品について「製品登録申請」を行います。
この手続きが、製品登録の可否を左右する工程です。提出する主なエビデンスは次のとおりです。
• 省力化効果の根拠資料(作業時間削減、工程自動化など)
• 製品仕様書・カタログ
• 実績や活用事例
• 必要に応じた試験データ
事務局は、これらの資料を基に「省力化効果が客観的に確認できるか」「補助金の目的に合致しているか」を審査します。承認されれば、製品は晴れてカタログに掲載される流れとなります。

カタログ注文型では、補助事業者に対して見積提出や設置を行う販売店も事前に事務局の登録を受ける必要があります。メーカーから委託を受けた販売代理店・商社などが登録し、審査を経て承認されることで、補助事業者に提供できる体制が整います。販売店が登録されていない製品は、補助金申請に利用できない点に注意が必要です。
⑤ 申請
カテゴリ・メーカー・製品・販売店の登録がすべて完了して、ようやく正式に申請可能な状態になります。事業者はカタログから自身の業種や業態にあった製品を選択し、販売事業者と共同で補助金申請を行います。

省力化投資補助金(カタログ型)HP「販売事業者向け」
このように、申請ができるまで工業会、メーカー、販売店等、多くの機関による手続きを段階的に踏むことで製品が「省力化製品カタログ」に掲載され、ようやく事業者が申請できるようになります。
カテゴリ登録の偏り
「省力化製品カタログ」が初めて公開され始めた2024年4月時点では、このカテゴリ自体がサービス業・小売・物流系に大きく寄っていました。具体的には、
・ 清掃ロボット
・ 配膳ロボット
・ 自動倉庫
・ 検品・仕分システム
・ 無人搬送車(AGV・AMR)
・ スチームコンベクションオーブン
・ 券売機
・ 自動チェックイン機
・ 自動精算機
といった製品カテゴリであり、いわゆる製造業の生産ラインを構成する設備(加工機械、搬送装置、検査装置など)は登録されていない状態でした。付け加えると、カタログ公開段階で具体的な製品が掲載されていたのは無人搬送車、スチームコンベクションオーブン、券売機の3カテゴリのみでした。
《参考》
シェアビジョンコラム「省力化投資補助金製品カタログ公開スタート!」(2024/04/24)
こうした偏りが生じた背景としては、以下のような制度構造的な理由があります。
① 「汎用性の高い業務プロセス」が前提の制度設計
制度が導入された当初は、ロボティクス・DXツール・店舗業務効率化ソリューションなど、業種横断で利用しやすいツールを中心にカテゴリ設計が行われました。これらは業務プロセスが比較的共通しており、標準化された省力化効果が提示しやすいため、早期にカテゴリ化が進んだと考えられます。
②多様かつ個別性が高く、カテゴリ化が難しい製造業設備
製造ラインは業種、工程、ロット、生産方式によって大きく異なり、標準化されたカテゴリを設定することが難しい領域です。そのため、制度の初期段階では登録カテゴリが設定されず、メーカー側が登録申請をしようとしても「カテゴリ該当なし」となってしまい、結果的に掲載が進まない状況となっていました。
③整合性が取りづらかった設備のエビデンス要件
カタログ注文型では、省力化効果を定量的に示すエビデンス提出が必須です。しかし、製造ライン設備は、根拠として提示する数値が、工程条件に左右されるため、サービス業向けソフトウェアや清掃ロボットと比べ、統一的な削減効果を示しにくい傾向があります。これも事務局側が初期カテゴリに製造業設備を含めにくかった理由の一つと考えられます。
2024年後半~2025年前半製造業向けのカテゴリ開放
《参考》
シェアビジョンコラム「省力化投資補助金のカテゴリに工作機械(5軸マシニング)が登場!」(2024/10/24)
《参考》
シェアビジョンコラム「省力化投資補助金の製品カテゴリに溶接機が追加」(2024/11/13)
《参考》
シェアビジョンコラム「新たに省力化投資補助金のカテゴリに複合加工機が追加!」(2024/12/20)
2025年後半~製品登録の増加
《参考》中小企業省力化投資補助HP「製品カタログ」
従来「清掃ロボット」や「店舗・物流向け省力化機器」が中心だったカタログに対し、
工場の製造ラインで使われる典型的な機械・装置であり、いわゆる製造業の現場の改善ニーズに応える製品です。このような設備の登録拡大は、製造業にとって「選べる対象の幅が広がった」ことを意味し、制度の実用性を高めています。
実際、公開当初は9カテゴリしかなかった製品カテゴリですが、2025年12月現在、公式サイト上で公開されている情報によると製品カテゴリは135と大幅に増加しています。また、中でも製造業で申請が可能な製品カテゴリは100と大半を占めており、公開当初は活用が難しかった製造業の方々でも申請が可能な体制が整ってきました。今後も、随時製品登録が進み、ますます使いやすくなることが予想されます。
《参考》省力化投資補助金(カタログ注文型)「製品カテゴリ」
今後の見通し

多くの補助金では公募回毎に締切が設けられていますが、省力化投資補助金(カタログ注文型)は随時受付となっており、申請順に審査が行われます。現在、導入したい設備がカタログ登録されている場合は、ぜひ早めに申請準備を始めることをお勧めいたします。
まとめ
以前カタログを確認したことがある事業者の方も、ぜひ今一度、カタログをご覧いただき、自社に合う設備がないか確認してみることをお勧めします。
また、シェアビジョンでは、メーカー・商社・販売店の方向けの登録サポートも行っています。省力化投資補助金(カタログ注文型)を活用したいという事業者の方は、どうぞご相談ください。
筆者・監修
省力化補助金編集部
シェアビジョン株式会社
認定支援機関(認定経営革新等支援機関※)である、シェアビジョン株式会社において、80%以上の採択率を誇る申請書を作成してきたメンバーによる編集部が監修・執筆しています。
当社は、2017年の会社設立以来、ものづくり補助金や事業再構築補助金等の補助金申請サポートをはじめとしたコンサルティングサービスを提供してまいりました。『顧客・従業員のビジョンを共有し、その実現をサポートすることで社会の発展と幸福を追求する』を経営理念とし、中小企業の経営者のビジョンに寄り添い、ビジネスの課題を解決するための手助けをしています。支援してきたクライアントは1,300社以上、業界は製造業、建設業、卸売業、小売業、飲食業など多岐に渡ります。このブログでは、中小企業の経営者にとって有益な情報を分かりやすくお届けしてまいります。
※認定経営革新等支援機関とは?
中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にあると国が認定した経営相談先です。全国各地に3万箇所以上の認定支援機関があり、税理士、税理士法人、公認会計士、中小企業診断士、商工会・商工会議所、金融機関、経営コンサルティング会社等が選出されています。認定支援機関を活用することで、補助金申請だけでなく、財務状況、財務内容、経営状況に関する調査・分析までを支援するため、自社の経営課題の「見える化」に役立ちます。
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