省力化投資補助金のカテゴリに工作機械(5軸マシニング)が登場!

2024/10/24

はじめに

金属加工を行う製造業の方に朗報です。省力化投資補助金のカテゴリに、5軸制御マシニングセンタ(5軸マシニング)が登録されました!

今年の6月から新たにスタートした省力化投資補助金(正式名称:中小企業省力化投資補助事業)ですが、これまで飲食サービス業向けの製品登録が多く、活用が見込めないとあきらめていた事業者の方も多いのではないでしょうか。現在、製造業が活用できる対象製品カテゴリは18件ありますが、これまで金属加工業者向けで「加工・生産」が対象業務プロセスとなっているカテゴリは、「鋳物用自動バリ取り装置」のみでした。他は検品・仕分けシステムや無人搬送車(AGV・AMR)、印刷関連等、加工そのものに活用できる製品の登録はありませんでした。
≪参考≫製品カテゴリ
今回、初めて製品カテゴリに工作機械が登録されたことで、今後、他の工業会にも動きがあるかもしれません。
金属加工を行う事業者の皆様で人手不足に悩まれている方はぜひ、参考にしてみてください。

人手不足に悩んでいませんか?

そもそも現在の製造業は作業員の高齢化や人手不足が深刻化しています。少子高齢化による労働人口の減少や専門的かつ高度な技術が必要なため、若手作業員の教育にも長期間が必要とされています。
厚生労働省が出した令和5年12月分及び令和5年分の「一般職業紹介状況」によると、2023年12月の製造業の有効求人倍率は約1.74倍で全国平均の1.27倍と比較しても深刻な人手不足に陥っていると言えます。
教育体制を整備している企業も増えた中で、見て覚える教育体制も実情としてままあります。また、熟練技術者の退職により技術継承が上手くいかず、若手を育てられないといった環境から、離職に繋がる企業も多くあります。
さらに、近年の原材料の高騰により、人手不足にもかかわらず新規採用を控える企業もあるなど、利益創出に課題を抱える企業も少なくありません。
新たに開始された省力化補助金は、そういった人手不足を課題としている企業の解決に活用できる補助金です。

5軸制御マシニングセンタとは?

今回、カテゴリ登録された5軸制御マシニングセンタとは、どのような機械でしょうか? メリット・デメリットを踏まえて、自社での活用の可能性について、検討してみましょう。

5軸制御マシニングセンタは、複雑な形状の部品や製品を加工するための高性能な工作機械です。通常の3軸マシニングセンタでは、「X軸」(左右)、「Y軸」(前後)、「Z軸」(上下)の3方向に動きます。 ただし、5軸制御ではこれに加え、次の2つの回転軸が加わり、工具やワークを回転させながら、様々な角度からアプローチすることができます。

そのため、3軸のみの立形マシニングセンタや横形マシニングセンタのような、従来主軸のみが移動するマシニングセンタでは難しい、単純な数式では表せられない自由曲面など、より複雑な形状や角度を持つ製品の加工が可能です。
例えば、ポンプや過給機に使用されるインペラ、歯車にもスパイラルギヤやヘリカルギヤなどのような自由曲面で構成された面を持つ部品が特徴的です。

5軸マシニングのメリット

5軸マシニングセンタは、曲線加工のような複雑形状の加工でしか活用できないと思われている方もいるかもしれませんが、3軸マシニングセンタで加工ができる一般的な形状の加工についても、5軸加工に置き換えることで、たくさんのメリットがあります。
・段取り替え削減
ワークの取り付け角度を変更して加工面を都度かえる必要がなくなるため、1度設置してしまえばテーブルが稼働することでテーブル面以外の面を加工することができます。

・特殊工具が不要
3軸の場合、工具の突き出し量を長くしなければ届かなかった箇所も、ワーク角度をかえることで突き出し量を抑えて加工することが可能になります。工具の突き出し量が長くなればなるほど工具のブレが生じやすく、加工面の精度も低下してしまうことがあります。そのため、工具の突き出し量を抑えて加工できる5軸加工だと加工精度が良くなる傾向にあります。

・専用治具が不要
加工面に合わせてワークを設置し直す必要が無くなるため、加工形状に合わせて専用治具を用意する必要も無くなります。治具の製作にもノウハウや製作期間、コストがかかりますが、5軸制御マシニングセンタだと削減することができます。

これまで複数台で段取り替えをしながら加工していた複雑形状の加工を1台で完結できるため、オペレーターが管理する機械の台数を減らすことができる他、工程毎の段取り変えが不要になり、人による作業を削減できます。また、専用治具が不要になるので、加工コストを引き下げることができます。
また、工場環境、加工物などによって異なるものの、連続使用による工具交換時間の削減や、精度向上による工程間検査の削減、台数減による定期点検作業の削減効果もあります。
さらに、段取り替えが不要な為、時間のかかる加工に関して、夜間の連続運転などの運用も可能となる可能性もあり、生産性の向上にもつながります。

5軸マシニングのデメリット

5軸マシニングセンタでは、特殊工具や専用治具が不要となることで、加工コストの削減ができますが、導入する機械自体は、価格水準が高めで、それを扱うためのソフトウェアも必要となります。また、3軸加工よりも高度なプログラミング技術が必要となります。高額な機械を導入しても、十分に活用できなければ費用対効果を見込むことができません。自社の事業内容と実施体制を十分に検討することが大切です。

5軸マシニングは高度な操作ノウハウが必要となり、従来の3軸マシニングと比較しても難易度の高い設備と言えます。しかしながら、人手不足に悩む金属加工業者の省力化効果が大いに期待できる設備ですので、購入を検討している金属加工業者は、これらのメリットとデメリット、投資回収計画も加味しながら検討しましょう。
「5軸制御マシニングセンタを導入しようとしているが、適した補助金がわからない」といった事業者の方には、政府としても推進している省力化補助金が活用できると言えます。

5軸制御マシニングセンタの価格と導入費用の目安

現在、公開されている製品カテゴリの一覧には、2,500万円程度から導入可能と記載があります。現段階では、どのメーカーのどの型番の製品が登録されるか分かりませんが、5軸制御マシニングセンタの価格は、機種や大きさによって大きく異なります。5軸マシニングセンタでは、上位機種や大型のものは8,000万円~1億円近くのものもありますが、ここに記載されている金額から推測すると、それほど高価格帯の製品は登録されないかもしれません。

省力化投資補助金の補助率及び補助上限額は、以下のようになっています。
※賃上げ要件
(a)事業場内最低賃金45円以上増加させること
(b)給与支給総額6%以上増加させること
補助上限金額は、従業員数によって変わってきます。従業員数21人以上の事業者の場合、2,500万円の設備投資に対しては1,000万円の補助金を受け取ることができる(大幅な賃上げを行わない場合)ので、自己負担は1,500万円になります。5軸制御マシニングセンタのような高額な製品の場合、従業員が少ない企業では自己負担の割合が大きくなるので、慎重に検討しましょう。

置き換えのチャンスも

本来、省力化補助金は既存設備との置き換えでの申請は不可能でした。
しかし、既存設備と省力化製品との置き換えが可能となった設備があります。スチームコンベクションなど一部製品に限られるため、10月23日時点では5軸制御マシニングが対象となるかは未定です。
今後、置き換え対象範囲も拡大するのではと予想されますので、現在の事業で5軸制御マシニングを使用している中小企業者等の方は、今後の情報を待ちましょう。

想定できる工作機械メーカー(製造事業者)

省力化投資補助金の公式サイトには対象製品カタログの一覧の中に製造事業者(メーカー)も記載されています。しかし、2024年10月23日時点では工作機械メーカーは決まっていません。

想定できるメーカーは以下の通りです。
三大工作機械メーカーといわれるオークマ㈱、DMG森精機㈱、ヤマザキマザック㈱を始め、㈱牧野フライス製作所、㈱北川鉄工所、ニデックマシンツール㈱などが考えられます。

今後、他の工作機械の登録も期待

今回5軸制御マシニングセンタの導入を皮切りに、他にも旋盤や他工作機械、加工機械も製品カタログへの登録が増える可能性があります。
マシニングセンタ以外の工作機械や加工機械の設備導入を検討している方は、随時更新されている製品カタログを確認しておきましょう。

製品登録の流れをおさらい

今回、製品カテゴリに「5軸制御マシニングセンタ」が登録されましたが、すぐに申請できるわけではありません。

省力化投資補助金は、補助の対象として登録された省力化製品カタログの中から、製品を選んで申請する「カタログ型」の補助金です。あらかじめ審査され、決められた製品のリストから選択することで、交付申請の審査期間を短くし、導入までをスピーディーに行うことができる制度になっています。

流れとしては、まず省力化製品を生産することが想定される事業者(メーカー等)を主な会員とする工業会が、製品カテゴリごとに省力化効果を産出するための省力化指標を策定に必要な情報を提出します。その後、事務局で業務プロセス・指標の策定を行い、工業会がそれを承認第三者員会での意見招聘を経て、中小企業庁が審査・承認を行い、製品カテゴリ登録が完了となります。

先日カテゴリ登録された「5軸制御マシニングセンタ」は、現在この段階です。この後、メーカー等の製品製造事業者が、製造事業者登録の申請を行います。工業会で製品性能審査が行われたのちは、事務局の審査、外部委員会による意見招聘、中企庁の審査・承認を経て、製品・製造事業者の登録が完了し、工業会より証明書が発行されます。

その後、製造事業者(メーカー)が工業会証明書とともにカタログ申請提出し、製品のカタログ登録が完了となります。

また、省力化投資補助金は、中小企業等の事業者と販売事業者(販売店)が共同申請する形となっており、それぞれの登録製品に紐づいた販売事業者からしか導入することができません。工業会証明書が発行された時点で、製造事業者は販売事業者の招待が可能となり、販売店が登録申請を提出、事務局の審査と外部委員会の承認を経て販売事業者登録が完了します。

ここでようやく、省力化投資補助金を活用して導入できる製品の具体的な型番等が分かり、申請ができるようになります。

シェアビジョンでは、製造事業者、販売事業者となるメーカー・商社・販売店の方との連携、サポートも行っています。中小企業省力投資補助事業を活用したいメーカー・商社・販売店の方はぜひ一度ご相談ください。

まとめ

これまで、飲食サービス業向けや印刷関連等、偏った業界での製品登録が目立っていた中小企業省力化投資補助金ですが、ここへきてようやく工作機械がカテゴリ登録されました。カタログ型の省力化補助金は2026年9月末が公募終了と言われているように、およそ3年に渡って国の予算が割かれる補助金ですので、ここから各メーカーや他の工業会の動きも活発になってくるのではないでしょうか。

省力化投資補助金は、新しい補助金制度ということもあり、活用できる製品も申請の制度もどんどん更新されていきます。定期的に情報収集につとめ、自社での活用を検討していきましょう。設備導入を検討している事業者の方、補助金の専門家との連携をお考えのメーカー・商社・販売店の方は、ぜひ一度シェアビジョンへご相談ください。
筆者・監修

省力化補助金編集部

シェアビジョン株式会社

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