ものづくり補助金「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」について

2023/02/28
ものづくり補助金は、正式名称を「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」といいます。中小企業・小規模事業者等が、今後複数年にわたって実施される様々な制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入等)等に対応するため、取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援し、中小企業・小規模事業者等の生産性向上を目的とした補助金です。 
よって、ものづくり補助金を申請する際、サービス産業で応募する事業者は、「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」との関連性を示す必要があります。しかしながら、一般的に「生産性向上」という言葉に結びつきやすいのは製造業などの業種で、サービス産業の場合はそもそも「生産」という言葉になじみがありません。製造業では、『製造工程の効率化や設備導入により生産性を向上する』等すぐに思い浮かべることができますが、サービス産業の場合は目に見えるものを提供しているわけではなく、具体的にイメージすることが難しいと言えます。 
「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」は、そのようなサービス産業の事業者にも「生産性向上」という言葉をあてはめ、経営課題を解決する際に取組みの方向性や具体的手法を考えるための参考になる指針です。 

審査項目の1つ

ものづくり補助金では、事業計画のその1「補助事業の具体的取り組み内容」に
応募申請する事業分野(「試作品開発・生産プロセス改善」又は「サービス開発・新提供方式導入」)に応じて、事業計画と「中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針」又は「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」との関連性を説明してください。 
と明確に記載があります。 
審査項目の「技術面」においても、第一に「「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」に沿った取り組みであるか(要約)」と記されており、非常に重要な項目として扱われていることが判ります。 

中小サービス業者が目指すべき生産性の向上

サービス業は現場でサービスを提供する「人」が付加価値の源泉となります。 
人手不足が顕在化する中、良い人材を確保するために相応の賃金とやりがいがある職場作りが必要とされ、事業者は賃金も利益も確保する経営を目指すことが求められます。 
このためには、労働者一人当たりの生産性を高めること、つまり「労働生産性」の向上が必要となります。
労働生産性を「一人当たりの付加価値額」として計算するには下記の計算式を用います。 
ということで、サービス業の生産性向上のためには、「付加価値額(営業利益、人件費、減価償却費)を高め」てゆき、効率化を図るということになります。 

労働生産性を向上するためには

労働生産性を向上するためには大きく分けて2つの方向があります。 
まず、売上の向上を考える場合は、客単価を揚げることや、客数を増やすこと等を考えることと思います。
これを実現する具体的な手法が以下にまとめられます。

「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」との関連性を示す

労働生産性の向上を果たす手法を考えたうえで、次にガイドラインとの関連性をどのように示すかを確認していきます。
労働生産性の向上のための具体策を示した表は、それぞれの項目をPDCAサイクルにザックリと分類しています。付加価値額向上のために「誰に」「何を」「どうやって」そして効率の向上の「どのように」を踏まえて、項目ごとに関連性を示し、要約して説明します。
2. 効率の向上(サービス提供プロセスの改善、IT利活用(効率の向上に繋がる活用)) 
人手不足でなかなか増員も難しい昨今、それでも付加価値を向上するためには、今あるリソースを再配置して効率化を進めたり、機械化をはかって無駄をなくし、コストの削減につなげる必要があります。ITの便利ツールを活用することも効率の向上に含まれます。 

なお、全ての手法に共通して重要なこととして、事業実施中の状況に応じて事業計画を修正できるよう、事前に業務改善にあたっての手順(PDCAサイクル)を定め、設定した事業目標に沿って柔軟かつ継続的に実施することが必要です。 
事業計画では、付加価値の向上や効率の向上が実現できる取り組みであるかを検証し、計画書内でガイドラインに沿った取り組みであると説明しましょう。 
著者

船着 貴弘

シェアビジョン株式会社取締役