この記事のポイント
ものづくり補助金の20次公募の申請締切は7月25日
申請枠、補助金額は、19次公募から変更なし
審査項目の政策面に「米国の追加関税措置による影響」が追加
はじめに
ものづくり補助金は、令和6年度補正予算での実施となった19次公募より、17次・18次公募で実施された省力化(オーダーメイド)枠の支援内容が、別の補助金である省力化投資補助金(一般型)で支援されることとなり、申請枠が製品・サービス高付加価値化枠とグローバル枠の2つとなりましたが、20次公募でもこの枠は変わりませんでした。
この記事ではものづくり補助金20次公募の基本要件や未達の際の補助金返還義務、審査項目、19次からの変更点について解説していきます。
ものづくり補助金とは
ものづくり補助金の目的は、中小企業・小規模事業者が、生産性向上に資する革新的な新製品・新サービス開発や海外需要開拓を行う事業のために必要な設備投資等に要する経費の一部を補助することにより、中小企業等の生産性向上を促進し、経済活性化を実現することです。
「ものづくり補助金」という名前から、製造業をイメージする人が多いかと思いますが、サービス業や卸・小売業等でも、目的に沿った内容であれば申請が可能です。
ものづくり補助金20次公募スケジュール
公募開始 | 2025年4月25日 |
電子申請受付 | 2025年7月1日 17:00から |
申請締切 | 2025年7月25日 17:00まで |
採択発表 | 2025年10月下旬頃予定 |
補助事業実施期間 | 交付決定日から10か月以内 |
この令和5年度補正予算は、事業年度内に補助金の支払いまで終わらせられるよう、いずれの公募回も、2024年12月10日までに実績報告を、2025年1月31日までに補助金の請求を行わなければならないという縛りがありました。令和6年度補正予算でスタートした19次公募からは、そのような縛りがなくなり、公募回毎に補助事業実施期間が設定されています。
公募が発表されてから申請締切までの期間は3か月と、補助金申請の準備期間としては、比較的ゆとりがあるスケジュールになっています。
ものづくり補助金20次公募の申請枠は2つ!
1. 製品・サービス高付加価値化枠
・製品・サービス高付加価値化枠とは?
革新的な新製品・新サービス開発の取り組みに必要な設備・システム投資等を支援する補助金制度です。
単に機械装置・システム等を導入するにとどまり、新製品・新サービスの開発を伴わないものは対象となりません。
今回から、既存の製品・サービスの生産等のプロセスについての改善・向上を図る事業は対象外と明記されており、革新的な新製品・新サービスが求められていることがより強調されています。
基本要件
基本要件は、以下の通りです。
以下の要件を全て満たす3~5年の事業計画書を策定及び実行すること
事業者全体の付加価値額の年平均成長率+3.0%以上増加させること
給与支給総額の年平均成長率を2.0%以上増加させること
事業場内最低賃金を毎年地域別最低賃金+30円以上の水準とすること
「両立支援のひろば」に一般事業主行動計画を公表すること
その際、目標に対しての達成状況が確認され、基本要件の②、③が未達の場合は補助金返還義務があります。
①について、付加価値額とは、営業利益、人件費、減価償却費を足したものです。
①~③については、事業者自身が要件を達成する基準値以上の目標値を設定し、それに取り組む必要があります。
②については、給与支給総額と従業員一人当たりの給与支給総額のいずれも目標値を設定し、いずれか一方の目標値を達成することが必須です。どちらも達成していない場合に補助金の返還を求められます。
②・③については、従業員に対し、給与支給総額や事業所内最低賃金の目標値を表明する必要があります。表明していない場合は、補助金の返還が求められます
④については、従業員数21名以上の場合のみ、必須となる要件です。次世代育成支援対策推進法に基づき、一般事業主行動計画を策定し、仕事と家庭の両立の取り組みを支援する情報サイト「両立支援のひろば」に公表します。
掲載にあたっては、1~2週間程度の期間を要するため、早めに準備しましょう。
補助金額・補助率
従業員数 | 補助金額 | 補助率 |
5人以下 | 100~750万円(850万) | 中小企業1/2 |
6~20人 | 100~1,000万円(1,250万) | |
21~50人 | 100~1,500万円(2,500万) | |
51人以上 | 100~2,500万円(3,500 万) |
・グローバル枠とは?
海外事業を実施し、国内の生産性を高める取り組みに必要な設備・システム投資等を支援する補助金制度です。
製品・サービス高付加価値化枠の基本要件に加え、以下のいずれかに該当する事業であることが要件となります
海外への直接投資 ※海外にも補助事業実施場所を有していること
海外市場開拓
インバウンド対応に関する事業
海外企業と共同で行う事業
補助金額・補助率
従業員数 | 補助金額 | 補助率 | |
5人以下 | 100万~3,000万円 | (3,100万円) | 中小企業1/2 |
6~20人 | (3,250万円) | ||
21~50人 | (4,000万円) |
大幅賃上げ特例要件の適用で補助金額アップ!
大幅賃上げ要件を適用するための要件は2つです。
①給与支給総額の年平均成長率+6.0%以上
基本要件の給与支給総額は、年平均成長率を2.0%以上増加させる目標を設定し、達成することが必要ですが、そこからさらに4.0%(合計で年平均成長率6.0%)増加させる目標を設定し、達成することが必要です。
②事業所内最低賃金+50円以上
基本要件では、事業所内最低賃金基準は、地域別最低賃金+30円の水準ですが、そこからさらに+20円(合計で+50円)の水準に引き上げる目標を設定し、達成することが必要です。
どちらも達成できなかった場合は、大幅賃上げ特例による引き上げ分が返還になるだけではなく、適用前の補助金額から、目標値に対する未達成率を乗じた額の返還が求められます。そのため、特例要件の申請にあたっては、しっかりとシミュレーションを行った上で、実現可能性を見極めて判断することが大切です。
なお、下記に記載する、最低賃金引上げに係る補助率引上げ特例を申請する事業者は、この大幅賃上げ特例を合わせて申請することはできません。
最低賃金引上げ要件の適用で補助率アップ!
小規模企業、小規模事業者は、すでに補助率2/3となっているため、適用対象外です。
ものづくり補助金20次公募の主な変更点
過去の補助金交付事業者の補助対象外の拡大
審査項目の政策面に「米国の追加関税措置による影響」が追加
減点項目に「他の補助事業の事業化が進展していない事業者」が追加
本補助金の申請締切日を起点にして16ヶ月以内に、ものづくり補助金、新事業進出補助金、事業再構築補助金に採択された事業者、交付決定を受けて補助事業実施中の事業者
②審査項目における政策面の追加
第2次トランプ政権の動向が、連日ニュースをにぎわせていますが、補助金の審査項目にも登場しています。
米国の追加関税措置により大きな影響を受ける事業者であること
③減点項目の追加
補助金受給後に義務化されている事業化状況報告ですが、その事業計画期間における事業の進捗が芳しくない場合は、減点されることとなりました。
具体的には、ものづくり補助金、事業再構築補助金、新事業進出補助金において、直近の事業化状況報告時における事業化段階が3段階以下の事業者が減点対象となります。
事業化段階とは、以下の通りです。
第1段階 | 製品の販売、又はサービスの提供に関する宣伝等を行っている |
第2段階 | 注文(契約)が取れている |
第3段階 | 製品が1つ以上販売されている、又はサービスが1回以上提供されている |
第4段階 | 継続的に販売・提供実績はあるが利益は上がっていない |
第5段階 | 継続的に販売・提供実績があり利益が上がっている |
まとめ
スケジュールとしては、19次公募は、申請受付開始から申請締切が2週間とタイトでしたが、今回は3週間超と少し余裕があります。しかし、公募要領に沿った事業計画書や必要書類の提出が必要となりますので、入念な準備をしておく必要があります。
そのため、補助金のご活用をご検討されている方においては、早め早めに動かれることをお勧めしています。ものづくり補助金20次公募を活用した設備投資をご検討中の事業者の方は、ぜひ一度シェアビジョンへご相談ください。
ものづくり補助金編集部
シェアビジョン株式会社
認定支援機関(認定経営革新等支援機関※)である、シェアビジョン株式会社において、80%以上の採択率を誇る申請書を作成してきたメンバーによる編集部が監修・執筆しています。
当社は、2017年の会社設立以来、ものづくり補助金や事業再構築補助金等の補助金申請サポートをはじめとしたコンサルティングサービスを提供してまいりました。『顧客・従業員のビジョンを共有し、その実現をサポートすることで社会の発展と幸福を追求する』を経営理念とし、中小企業の経営者のビジョンに寄り添い、ビジネスの課題を解決するための手助けをしています。支援してきたクライアントは1,300社以上、業界は製造業、建設業、卸売業、小売業、飲食業など多岐に渡ります。このブログでは、中小企業の経営者にとって有益な情報を分かりやすくお届けしてまいります。
※認定経営革新等支援機関とは?
中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にあると国が認定した経営相談先です。全国各地に3万箇所以上の認定支援機関があり、税理士、税理士法人、公認会計士、中小企業診断士、商工会・商工会議所、金融機関、経営コンサルティング会社等が選出されています。認定支援機関を活用することで、補助金申請だけでなく、財務状況、財務内容、経営状況に関する調査・分析までを支援するため、自社の経営課題の「見える化」に役立ちます。