ものづくり補助金20次公募の概要&19次からの変更点

2025/05/27

この記事のポイント

はじめに

前回のものづくり補助金19次公募は、2024年3月に締切だった18次公募から、約1年近い期間が空いて実施されましたが、2025年4月25日の19次公募の締め切り後すぐ、ものづくり補助金20次公募の公募要領が公開されました。
ものづくり補助金は、令和6年度補正予算での実施となった19次公募より、17次・18次公募で実施された省力化(オーダーメイド)枠の支援内容が、別の補助金である省力化投資補助金(一般型)で支援されることとなり、申請枠が製品・サービス高付加価値化枠とグローバル枠の2つとなりましたが、20次公募でもこの枠は変わりませんでした。
この記事ではものづくり補助金20次公募の基本要件や未達の際の補助金返還義務、審査項目、19次からの変更点について解説していきます。

ものづくり補助金とは

ものづくり補助金は、2013年に「ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金」という名称で始まった補助金制度で、以降も名前を変えながら、補正予算額で毎年実施されてきました。現在実施されている20次公募は、2019年(令和元年)から「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」という名称で、実施されています。
ものづくり補助金の目的は、中小企業・小規模事業者が、生産性向上に資する革新的な新製品・新サービス開発や海外需要開拓を行う事業のために必要な設備投資等に要する経費の一部を補助することにより、中小企業等の生産性向上を促進し、経済活性化を実現することです。
「ものづくり補助金」という名前から、製造業をイメージする人が多いかと思いますが、サービス業や卸・小売業等でも、目的に沿った内容であれば申請が可能です。

ものづくり補助金20次公募スケジュール

20次公募のスケジュールは以下の通りです。
昨年、ものづくり補助金は、17次公募(2024年3月1日締切)で省力化(オーダーメイド)枠のみが実施され、18次公募(2024年3月27日)で、省力化(オーダーメイド)枠、製品・サービス高付加価値額、グローバル枠の3つが公募されました。この2回の公募のみで、令和5年度補正予算に基づく公募は終了となりました。

この令和5年度補正予算は、事業年度内に補助金の支払いまで終わらせられるよう、いずれの公募回も、2024年12月10日までに実績報告を、2025年1月31日までに補助金の請求を行わなければならないという縛りがありました。令和6年度補正予算でスタートした19次公募からは、そのような縛りがなくなり、公募回毎に補助事業実施期間が設定されています。

公募が発表されてから申請締切までの期間は3か月と、補助金申請の準備期間としては、比較的ゆとりがあるスケジュールになっています。

ものづくり補助金20次公募の申請枠は2つ!

20次公募の申請枠は、19次公募と同じく「製品・サービス高付加価値化枠」と「グローバル枠」の2つです。それぞれの基本要件や補助金額などは、以下の通りです。

1. 製品・サービス高付加価値化枠
・製品・サービス高付加価値化枠とは?
革新的な新製品・新サービス開発の取り組みに必要な設備・システム投資等を支援する補助金制度です。

単に機械装置・システム等を導入するにとどまり、新製品・新サービスの開発を伴わないものは対象となりません。
今回から、既存の製品・サービスの生産等のプロセスについての改善・向上を図る事業は対象外と明記されており、革新的な新製品・新サービスが求められていることがより強調されています。

基本要件
基本要件は、以下の通りです。
3~5年の事業計画に基づいて事業を実施するとともに、毎年、事業化状況報告を提出しなくてはいけません。
その際、目標に対しての達成状況が確認され、基本要件の②、③が未達の場合は補助金返還義務があります。

①について、付加価値額とは、営業利益、人件費、減価償却費を足したものです。

①~③については、事業者自身が要件を達成する基準値以上の目標値を設定し、それに取り組む必要があります。

②については、給与支給総額と従業員一人当たりの給与支給総額のいずれも目標値を設定し、いずれか一方の目標値を達成することが必須です。どちらも達成していない場合に補助金の返還を求められます。

②・③については、従業員に対し、給与支給総額や事業所内最低賃金の目標値を表明する必要があります。表明していない場合は、補助金の返還が求められます

④については、従業員数21名以上の場合のみ、必須となる要件です。次世代育成支援対策推進法に基づき、一般事業主行動計画を策定し、仕事と家庭の両立の取り組みを支援する情報サイト「両立支援のひろば」に公表します。
掲載にあたっては、1~2週間程度の期間を要するため、早めに準備しましょう。

補助金額・補助率

2.グローバル枠
・グローバル枠とは?
海外事業を実施し、国内の生産性を高める取り組みに必要な設備・システム投資等を支援する補助金制度です。

製品・サービス高付加価値化枠の基本要件に加え、以下のいずれかに該当する事業であることが要件となります
グローバル枠で申請する際には、海外事業に関する実現可能性調査の実施や社内に海外事業の専門人材を有すること、海外事業に関する外部専門家と連携が求められます。

補助金額・補助率

大幅賃上げ特例要件の適用で補助金額アップ!

大幅な賃上げを実施する事業者は、補助上限額が上記表の()内に引き上げられます。

大幅賃上げ要件を適用するための要件は2つです。

①給与支給総額の年平均成長率+6.0%以上
基本要件の給与支給総額は、年平均成長率を2.0%以上増加させる目標を設定し、達成することが必要ですが、そこからさらに4.0%(合計で年平均成長率6.0%)増加させる目標を設定し、達成することが必要です。

②事業所内最低賃金+50円以上
基本要件では、事業所内最低賃金基準は、地域別最低賃金+30円の水準ですが、そこからさらに+20円(合計で+50円)の水準に引き上げる目標を設定し、達成することが必要です。

どちらも達成できなかった場合は、大幅賃上げ特例による引き上げ分が返還になるだけではなく、適用前の補助金額から、目標値に対する未達成率を乗じた額の返還が求められます。そのため、特例要件の申請にあたっては、しっかりとシミュレーションを行った上で、実現可能性を見極めて判断することが大切です。

なお、下記に記載する、最低賃金引上げに係る補助率引上げ特例を申請する事業者は、この大幅賃上げ特例を合わせて申請することはできません。

最低賃金引上げ要件の適用で補助率アップ!

2023年10月~2024年9月の間で3カ月以上、補助事業実施場所で雇用している全従業員のうち、事業実施都道府県の最低賃金+50円以内の従業員が30%以上いる中小企業は、補助率が1/2 ⇒ 2/3 に引き上げられます。

小規模企業、小規模事業者は、すでに補助率2/3となっているため、適用対象外です。

ものづくり補助金20次公募の主な変更点

公募要領の発表で明らかとなった20次公募の主な変更点は以下の通りです。
①補助対象外となる過去の補助金交付候補者及び補助事業実施中の事業者の変更
本補助金の申請締切日を起点にして16ヶ月以内に、ものづくり補助金、新事業進出補助金、事業再構築補助金に採択された事業者、交付決定を受けて補助事業実施中の事業者
19次公募では、申請締切日を起点として14ヶ月以内にものづくり補助金に採択された事業者、又は交付決定を受けた事業者でしたが、対象外となる期間の延長や中小企業新事業進出促進補助金と中小企業等事業再構築促進補助金が追加され、補助対象外となる事業者が広がりました。

②審査項目における政策面の追加
第2次トランプ政権の動向が、連日ニュースをにぎわせていますが、補助金の審査項目にも登場しています。
米国の追加関税措置により大きな影響を受ける事業者であること
米国の追加関税措置により影響を受けている場合は、審査上考慮されます。そのため、影響を受けている事業者は、事業計画書の中で、どのような因果関係で影響を受けているか等、詳細に記載すると良いでしょう。

③減点項目の追加
補助金受給後に義務化されている事業化状況報告ですが、その事業計画期間における事業の進捗が芳しくない場合は、減点されることとなりました。
具体的には、ものづくり補助金、事業再構築補助金、新事業進出補助金において、直近の事業化状況報告時における事業化段階が3段階以下の事業者が減点対象となります。

事業化段階とは、以下の通りです。
つまり、利益が上がっているかいないかに関わらず、継続的に受注がある状況に達している必要があります。これまで以上に事業化状況報告には注意を払わなければならなくなりました。

まとめ

20次公募は、19次公募が締め切られてすぐに公募が始まったこともあり、申請枠や基本要件等は、基本的に前回19次公募と変わりませんでした。

スケジュールとしては、19次公募は、申請受付開始から申請締切が2週間とタイトでしたが、今回は3週間超と少し余裕があります。しかし、公募要領に沿った事業計画書や必要書類の提出が必要となりますので、入念な準備をしておく必要があります。

そのため、補助金のご活用をご検討されている方においては、早め早めに動かれることをお勧めしています。ものづくり補助金20次公募を活用した設備投資をご検討中の事業者の方は、ぜひ一度シェアビジョンへご相談ください。
著者

ものづくり補助金編集部

シェアビジョン株式会社