今回も書面審査(システム入力)と口頭審査(オンライン)により選考
「米国の追加関税措置により大きな影響を受ける事業者」への審査項目が追加!
減点項目に「他の補助事業の事業化が進展していない事業者」が追加!
はじめに
公募要領には、事業計画書をどの基準で審査しているのか、書面審査上の審査ポイントが公表されています。
まず前提として、ものづくり補助金は、申請者全てが受け取ることができるものではありません。申請者が作成した「事業計画書」を事務局が審査し、補助金の支給にふさわしいと判断された場合のみ受け取ることができます。
この記事では、ものづくり補助金の審査ポイントと今回の20次公募で新たに追加された審査項目・減点項目について徹底解説します。
ものづくり補助金の審査とは
まず提出された申請書類等に基づいて、事務局が形式要件の確認を行います。この時点で不足書類があったり、要件を満たしていないと判断されたりすると、そもそも審査の土俵に乗ることもできません。
基本要件については、以下の記事を参考にしてください。
そして、申請要件を満たした事業者は、書面審査にて、策定した事業計画書を次に挙げる審査項目の様々な観点から採点され、点数が高い事業者は、より採択される可能性が高くなります。
ものづくり補助金 6つの審査項目
また、大幅賃上げ特例に申請する場合については⑥の項目の審査も追加されます。
審査項目①:補助事業の適格性
公募要領に記載の対象者、対象事業、対象要件等を満たしているか。
中小企業の生産性向上に資する革新的な新製品・新サービス開発や海外需要開拓を行う事業のために必要な設備投資等に要する経費の一部を補助することで、中小企業の生産性向上を促進し、経済活性化を実現すること。
上記の目的に記されている通り、「生産性向上に資する革新的な新製品・新サービス開発や海外需要開拓を行う事業であること」が採択のための前提条件です。
既存の製品・サービスの生産等のプロセスについて 改善・向上を図る事業は補助対象外のため、注意が必要です。
革新的な新製品・新サービス開発とは?
顧客等に新たな価値を提供するために、自社の技術力等を活かして新製品・新サービスを開発することを指します。
単に機械装置・システム等を導入するだけで、新製品・新サービスの開発を伴わないものは補助対象事業に該当しません。
また、補助事業の対象となる基本要件のほとんどが従業員の賃上げに関することであり、事業を実施することにより、中小企業の持続的な賃上げや生産性の向上に向けた取り組みを行うことが求められていると言えます。
この審査項目は、本補助金を申請するための前提条件であり、これを満たさない場合は採択されるのは難しいと言えるでしょう。
審査項目②:経営力
本事業により実現したい経営目標が具体化されているか。
外部環境(市場・顧客動向)と、内部環境(ヒト・モノ・カネ・情報)における強み・弱みを分析(SWOT分析)したうえで、効果的な事業になっているか。
会社全体の売上高に対する本事業の売上高が高い水準となることが見込まれるか。
審査項目③:事業性
付加価値の創出や賃上げを実現する目標を宣言し、その実現可能性が高い事業計画であること。
本事業の課題が明確化され、適切な解決方法が示されていること。
本事業の新製品・新サービスや海外需要開拓の対象となる市場の規模や動向の分析がされており、その市場の成長が見込まれること。
本事業の新製品・新サービスや海外需要開拓が顧客に与える価値、ターゲットとなる顧客が明確であり、顧客ニーズの調査・検証を行い、その製品・サービスが顧客から選ばれる理由を理解していること。
本事業の新製品、サービスの競合や代替製品を分析し、それらと差別化され、優位性が示されていること
グローバル枠では、以下の観点でも審査されます。
海外展開に必要な実施体制や計画が明記され、海外事業に係る専門性を申請者の遂行能力又は外部専門家等の関与により有していること。
事前の十分な市場調査分析を行った上で、競争力の高い製品・サービス開発となっていること。
国内の地域経済に寄与し、将来的に国内地域での新たな需要や雇用を創出する視点があること。
ブランディング・プロモーション等の具体的なマーケティング戦略が事業計画書に含まれていること。
a)海外への直接投資を含む計画:メキシコに部品工場を設置するにあたり、取引先の進出状況や現地での材料調達状況を踏まえ事業計画を策定する。
b)海外への輸出を含む計画:自社商品がシンガポールの高齢化社会にニーズがあると外部の調査会社に委託して情報収集する。
c)海外からのインバウンドを含む計画:インドネシアにおいて、ウインタースポーツ需要があることを現地でインタビュー調査により情報収集する。
d)海外企業との共同事業を含む計画:自社の洗剤に興味を持つアメリカのベンチャー企業がいることを民間コンサル経由で情報を入手する。
審査項目④:実現可能性
本事業に必要な技術力を有し、その技術力が競合する他社と比較してより優位な技術力であること。
本事業に必要な社内外の体制(人材・専門的知見・事務処理能力等)や最近の財務状況から、本事業を適切に遂行できると期待できること。また、金融機関等からの十分な資金調達が見込まれること。
本事業の事業化に至るまでの遂行方法、スケジュールや課題の解決方法が明確かつ妥当であること。
投入する補助金交付額等に対して、想定される売上・収益の規模等の費用対効果が高いこと。
審査項目⑤:政策面
地域の事業者等や雇用に対する経済成長(大規模災害からの復興等を含む)を牽引する事業となることが期待できること。
単独では解決が難しい課題について複数の事業者が連携して取り組むことで、高い生産性向上が期待できること。異なる強みを持つ複数の企業等(大学等を含む)が共同体を構成して製品開発を行うなど、経済波及効果が期待できること。
また、事業承継を契機として新しい取り組みを行うなど経営資源の有効活用が期待できること。先端的なデジタル技術・低炭素技術の活用、環境に配慮した事業等、新しいビジネスモデルの構築等を通じて、我が国のイノベーションを牽引し得ること。
成長と分配の好循環を実現させるために有効な投資内容となっていること。
米国の追加関税措置により大きな影響を受ける事業者であること。
地域未来牽引企業
地域未来投資促進法に基づく地域経済牽引事業計画
アトツギ甲子園地方大会出場以上の企業
◎米国の追加関税措置とは?
米トランプ大統領が発表した関税措置で、日本には2025年4月から米国に輸出する自動車・部品に25%の関税が追加され、その他の日本からの輸出品については「相互関税」として24%の関税が課されることが発表されています(2025年5月22日時点)。
それに伴い、2025年4月25日に経済産業省が発表している資料『米国の関税措置に対する国内対応について』には、ものづくり補助金について、関税の影響を受けた事業者を優先採択するとあります。
事業計画書では、米国の関税措置による影響を受けている又は影響を受けることが具体的に見込まれている場合に、具体的な影響の内容の記載が求められています。
政策面の項目では、設備の導入による生産性の向上が、当該事業者だけでなく地域の経済活性化にもつながるかどうかや米国の追加関税措置の影響を受けているかが審査されます。
審査項目⑥:大幅な賃上げに取り組むための事業計画の妥当性(大幅賃上げ特例適用申請者のみ)
大幅な賃上げの取り組み内容が具体的に示されており、その記載内容や算出根拠が妥当なものとなっていること。
一時的な賃上げ計画ではなく、将来にわたり、継続的に利益の増加等を人件費や設備投資等に適切に充当し、企業の成長が見込まれること。
将来にわたって成長するため、従業員間の技術指導や外部開催の研修への参加、資格取得促進等、従業員の部門配置に応じた人材育成に取り組んでいること。また、従業員の能力に応じた人事評価に取り組んでいること。
人事配置等の体制面、販売計画等の営業面の強化に取り組んでいること。
以上の審査項目を総合的に評価し、補助金の交付候補者として採択されます。
各項目において具体的な目標設定とその達成の可能性について、根拠を示して明確にし、アピールできるかが採択への鍵となります。
採択率アップ!加点項目を取りましょう!!
加点を取ると審査において有利となり、採択率が上がるため、積極的に取得することをお勧めしています。
①経営革新計画
申請締切日時点で有効な「経営革新計画」の承認を取得している事業者。
②パートナーシップ構築宣言
「パートナーシップ構築宣言ポータルサイト」において宣言を公表している事業者。(応募締切日前日時点)。
③再生事業者
中小企業活性化協議会等から支援を受け、応募申請時において以下のいずれかに該当していること。
再生計画等を「策定中」の者。
再生計画等を「策定済」かつ応募締切日から遡って3年以内に再生計画等が成立した者。
申請応募締切日時点で有効な「DX認定」を取得している事業者。
⑤健康経営優良法人認定
「健康経営優良法人2025」に認定された事業者。
⑥技術情報管理認証
申請締切日時点で有効な「技術情報管理認証」を取得している事業者。
⑦J-Startup J-Startup地域版
「J-Startup 」「J-Startup地域版」に選定された事業者。
⑧新規輸出1万者 支援プログラム (グローバル枠に申請 する場合のみ対象)
「新規輸出1万者支援プログラムポータルサイト」において登録が完了している事業者。
⑨事業継続力強化計画/ 連携事業継続力強化計画
申請締切日時点で有効な「(連携)事業継続力強化計画」を取得している事業者。
⑩賃上げ
以下の要件を満たす必要があります。
従業員及び役員の給与支給総額の年平均成長率+4.0%以上増加させること。
事業所内最低賃金を毎年3月、地域別最低賃金より+40円以上の水準を満たす目標値を設定し、交付申請時までに全ての従業員又は従業員代表者、役員に対して表明すること。
従業員規模50名以下の中小企業が被用者保険の任意適用に取り組むこと。
⑫えるぼし認定
「えるぼし認定」を取得している事業者。⑬くるみん認定
「くるみん認定」を取得している事業者。
⑭事業承継/M&A
申請締切日を起点にして、過去3年以内に事業承継により有機的一体としての経営資源を引き継いだ事業者。
⑮成長加速マッチングサービス
申請締切日時点において、中小企業庁「成長加速マッチングサービス」で会員登録を行い、挑戦課題を登録している事業者。
③賃上げ加点については、加点として申請して採択されたにも関わらず、その後の事業化状況報告で未達であることが判明すると、他の補助金申請において大幅に減点されるため、加点として申請するかどうかは、慎重に判断しましょう(詳細は下記の減点項目でも記載)。
取得が容易な加点項目に関しては、多くの事業者が取得することが予想できるため、取得しておかないと不利とも言えます。認定に時間がかかるものもあるため、早めに準備を始めましょう。
こんな事業者は注意!減点4項目
過去に補助金に採択されて、補助事業計画を実施中の事業者の方は、減点項目に係らないよう、要件がクリアできているか、事業化が進展できているかを確認しましょう。
①補助金複数回利用者
申請締切日を起点にして、過去3年間に本補助金の交付決定を1回受けている事業者。
②補助要件未達事業者
第1次公募以降本補助金の交付決定を受けて事業を実施したが、基本要件を達成できなかった事業者。対象となる基本要件は、給与支給総額増加要件と最低賃金水準要件です。
③加点項目要件未達事業者
中小企業庁が所管する補助金において、賃上げに関する加点を受けたうえで採択されたにもかかわらず、達成できなければ、今後18か月の間、中小企業が所管する補助金の申請おいて大幅に減点されます。(ただし災害などの影響で未達になったと判断された場合は除きます)
中小企業等が所管する補助金とは?
ものづくり補助金・IT導入補助金・持続化補助金・事業承継・M&А補助金・事業再構築補助金・省力化投資補助金・新事業進出補助金を指します。
④他の補助事業の事業化が進展していない事業者
事業再構築補助金、ものづくり補助金、新事業進出補助金において、直近の事業化状況報告時における事業化段階が3段階以下である事業者。
事業化段階とは?
第1段階:製品・サービス等の販売宣伝に関する活動を行っている
第2段階:注文(契約)が取れている
第3段階:製品・サービス等が1つ以上、販売されている
第4段階:継続的に販売実績があるが利益は上がっていない
第5段階:継続的に販売実績があり利益が上がっている
今回の公募で初めて、他の補助事業の事業化状況が減点項目に加わりました。税金が原資となっている補助金を活用しても効果を出せていない事業者は、補助金受給に相応しくないと判断されるということでしょう。補助事業計画を実施中の事業者の方は、これまで以上に気をつける必要がありそうです。
20次公募でも口頭審査が実施
時間は30分で、申請事業者の代表の方1名で対応します。申請事業者以外の方、例えば事業計画書作成支援者や経営コンサルタントなどの対応や同席は認められません。
提出した事業計画書を用いて、事業内容の適格性、経営力、事業性、実現可能性等の観点について、外部有識者との質疑応答を行います。
まとめ
基本要件や枠に変更はありませんでしたが、審査項目には、多くの事業者が影響を受けるとみられる米国の追加関税措置に関する項目が登場したのが新しい点となりました。
影響を受ける事業者は、採択において有利となる可能性がありますので、活用を検討する価値がありそうです。
審査員に優れた事業計画だと評価されるには、入念に準備をしておく必要がありますので、申請を考えられている事業者の方は早めに準備を進めておくことをお勧めします。
20次公募にて、ものづくり補助金を活用した設備投資をご検討中の事業者の方は、ぜひ一度シェアビジョンへご相談ください。
ものづくり補助金編集部
シェアビジョン株式会社
認定支援機関(認定経営革新等支援機関※)である、シェアビジョン株式会社において、80%以上の採択率を誇る申請書を作成してきたメンバーによる編集部が監修・執筆しています。
当社は、2017年の会社設立以来、ものづくり補助金や事業再構築補助金等の補助金申請サポートをはじめとしたコンサルティングサービスを提供してまいりました。『顧客・従業員のビジョンを共有し、その実現をサポートすることで社会の発展と幸福を追求する』を経営理念とし、中小企業の経営者のビジョンに寄り添い、ビジネスの課題を解決するための手助けをしています。支援してきたクライアントは1,300社以上、業界は製造業、建設業、卸売業、小売業、飲食業など多岐に渡ります。このブログでは、中小企業の経営者にとって有益な情報を分かりやすくお届けしてまいります。
※認定経営革新等支援機関とは?
中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にあると国が認定した経営相談先です。全国各地に3万箇所以上の認定支援機関があり、税理士、税理士法人、公認会計士、中小企業診断士、商工会・商工会議所、金融機関、経営コンサルティング会社等が選出されています。認定支援機関を活用することで、補助金申請だけでなく、財務状況、財務内容、経営状況に関する調査・分析までを支援するため、自社の経営課題の「見える化」に役立ちます。