はじめに
本記事ではものづくり補助金の19次公募の展望や、よくある質問についてまとめています。
過去直近公募回のものづくり補助金のスケジュール
ところが、その後、令和5年度補正予算に基づいて実施された、ものづくり補助金17次・18次公募は、以下のスケジュールで実施され、令和5年度補正予算に基づく公募は、18次公募で終了しています。
17次・18次公募スケジュール
17次公募 | 18次公募 | |
公募開始日 | 2023年12月27日 | 2024年1月31日 |
申請締切日 | 2024年3月1日 | 2024年3月27日 |
採択発表日 | 2024年5月20日 | 2024年6月25日 |
令和7年度予算の概算要求が発表
≪参考≫中小企業庁 令和7年度 中小企業・小規模事業者・地域経済関係 概算要求等ポイント
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/r7/gaisan_point.pdf
国の予算には、本予算とは別に、年度途中で災害の発生や景気対策等、追加で組まれる補正予算があります。中小企業の設備投資を支援するものづくり補助金は、平成29年度以降、補正予算にて実施されてきました。補正予算は通常、11月から12月の間に予算編成が行われ、こちらも翌年1月頃の国会審議を経て4月から予算が執行されます。
結局、今後のものづくり補助金の方向性はどうなる?
(出所:https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/r7/gaisan_point.pdf)
令和7年度概算要求で掲載されたものづくり補助金は、令和5年度補正予算の再掲であったため、今後の展開については詳細待ちとなります。
ただし、2024年5月に行われた第16回産業構造審査会にて製造業の政策の方向性について、「DX税制やものづくり補助金等のDX投資喚起策を中心に製造業DXを進める」とあるように、いくつか今後のものづくり補助金の継続が示唆されている情報があります。
よって、全て終了するという可能性は低いと考えられ、今後も継続される見込みは高いと思われます。令和5年度補正予算に基づいた公募は終了とあるため、令和6年度補正予算にて実施されるとみて情報公表を待ちましょう。
ものづくり補助金の次回公募の有無はいつ発表される?
ものづくり補助金の19次公募の展望
2024年11月20日追加情報
19次公募について、内閣府によると「新しい資本主義実現会議(第30回)」にて来年度も継続を示唆する文言があり、見込みが高くなりました。
詳しくはこちら
≪参考記事≫ものづくり補助金19次公募は実施の見通し
また、この記事では、直近の18次公募の公募要領に基づいて、よくある質問をまとめました。次回公募に向けた準備の参考にしていただければ幸いです。
ものづくり補助金 よくある質問 Q&A
正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」です。経済産業省の管轄で、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援します。
次に申請できるのはいつ?
現在、令和5年度補正予算に基づいた公募は終了しています。第19回公募の時期についてはまだ発表されていませんが、令和6年度補正予算が閣議決定した後、年明けの早いタイミングで公募が開始されるのではないかと予測できます。
応募できる対象者は?
対象は日本国内に本社および補助事業の実施場所を有する中小企業者等で、個人事業主やNPO法人、組合等も含まれます。業種によって、資本金や従業員数が定められており、製造業では、資本金3億円以下、常勤従業員数300人以下の企業が対象となります。
どのような業種でも応募できる?
「ものづくり補助金」という通称から、製造業のイメージが強い補助金ですが、製造業だけでなく、小売業・卸売業・サービス業など、全ての業種の事業者が応募することができます。変わったところでは、動物病院等が採択されている事例もあります。
従業員数はどのように算出する?
パート・アルバイト等を含む、応募申請時点の常勤従業員の数で算出してください。日雇いや2カ月以内の期間を定めて使用される季節雇用者は含まれません。代表者や役員、専従者等も混入しないように注意してください。
個人事業主でも申請できる?
個人事業主も申請することができます。提出書類として、確定申告書、所得税青色申告決算書または所得税白色申告収支内訳書の写しが必要となります。
申請すれば誰でも補助金がもらえる?
条件を満たせば必ずもらえる「給付金」と異なり、審査により採択されなければ、補助金を受け取ることができません。採択率は概ね50%前後で推移していましたが、17次以降は審査が厳格化し、直近18次公募の採択率は35.8%となっています。
申請した額は全額もらえる?
補助対象経費の全額が交付されるとは限りません。採択後に「補助金交付申請」をして、その内容を事務局が精査し、必要に応じて事業者に照会や連絡を行った上で、交付額を決定します。交付されたお金は融資と異なり、原則返済する必要はありません。
どのような枠がありますか?
公募回により申請枠が異なります。18次公募では、デジタル技術等を活用した専用設備を導入する「省力化(オーダーメード)枠」や、新製品やサービスの高付加価値化に取り組む「製品・サービス高付加価値化枠」「グローバル枠」等がありました。
補助金の上限はいくらですか?
公募回、申請枠、従業員数によって異なります。18次公募では最大、省力化(オーダーメード)枠は8,000万円、製品・サービス高付加価値化枠の通常類型は1,250万円、成長分野進出類型(DX・GX)は2,500万円、グローバル枠は4,000万円でした。
補助金申請の要件は?
公募回により異なり、申請枠毎に追加要件があることもあります。基本的には、給与支給総額の増加や、最低賃金の引き上げ、事業者全体の付加価値額を増加させる3~5年の事業計画を策定し、実行する必要があります。
給与総支給額には何が含まれる?
給与支給総額とは、全従業員(非常勤を含む)及び役員に支払った給与等を指します。給料、賃金、賞与及び役員報酬等は含み、福利厚生費、法定福利費や退職金は除きます。
給与支給総額と人件費は何が違う?
人件費は、給与総支給額に加えて、福利厚生費、法定福利費、退職金を含みます。また、人件費には、売上原価に含まれる労務費や一般管理費に含まれる役員給与、従業員給与、賞与及び給与引当金繰入れ、福利厚生費、退職金及び退職給与引当金繰入れ等の費用も含みます。
ものづくり補助金は何回まで申請できる?
複数回応募できますが、過去3年以内に2回以上の交付決定を受けた事業者は申請対象外です。過去3年以内に交付決定を1回受けた事業者は、減点措置の対象となっており、2回目に採択されるのは容易ではありません。加点の取得等への取り組みは必須でしょう。
以前、事業再構築補助金を受け取っていても申請できる?
事業再構築補助金を申請して採択された事業者が、ものづくり補助金にも申請することは可能です。ただし、これまで申請した事業と同一や類似内容の事業は対象外です。また、交付を受けた補助金の実績については、応募申請書に記載する必要があります。
過去に申請して不採択だった場合、再申請は可能?
一度不採択になっても、再申請することができます。ただし、過去の補助事業実績報告書を未提出の事業者は申請できません。
補助対象となる経費は?
機械装置・システム構築費として単価50万円以上の設備投資を行うことが必須です。その他に運搬費や技術導入費、知的財産権等関連経費、外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費、原材料費、広告宣伝・販売促進費等が対象となります。
補助対象にならない経費は?
工場建屋、建築物等の取得費用やこれらを作り上げるための組み立て用部材の取得費用、設置場所の整備工事や基礎工事に要する費用、通信費、飲食・娯楽費用、事務所等の家賃や光熱費、不動産や自動車等車両の購入費・修理費等は対象になりません。
自動車等車両は全て対象外?
自動車等車両については、例外があります。車両に載せる設備及びその設備の設置に必要な費用は補助の対象になり得ます。また、トラッククレーンやブルドーザー、ロードローラー、その他の自走式作業機械並びにトラクター及び農林業用運搬器具は補助対象です。
事業計画書には何を書けばいい?
ホームページにある参考様式に沿って、①補助事業の具体的取組内容 ②将来の展望 ③会社全体の事業計画を記載してください。図表や写真等を用いて、具体的かつ詳細に記載し、なるべく計10ページ以内に収めてください。
事業計画書の他に提出が必要な書類は?
事業計画書の他、補助経費に関する誓約書、賃金引上げ計画の誓約書、決算書等、従業員数の確認書類、労働者名簿の提出が必要です。また、要件や加点によっても必要となる書類があります。最新の公募要領で確認し、不備のないよう余裕をもって準備しましょう。
加点を得るにはどうすればいい?
賃上げやポータルサイトにおいて、パートナーシップ構築宣言を公表している事業者、再生事業者、健康経営優良法人に認定された事業者等には加点があります。女性活躍の推進に取り組み、「えるぼし」や「くるみん」認定を受けている事業者も加点を得られます。
加点を受けるための賃上げ条件は?
①事業計画期間で給与支給総額を年平均成長率6.0%以上増加 ②事業計画期間内の毎年3月、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+50円以上 ③②を満たした上で、さらに事業場内最低賃金を年額+50円以上毎年増額する。以上の3要件を全て満たす必要があります。
事業場内最低賃金の「事業場」とはどこ?
応募申請書に記載された補助事業の実施場所となります。事業場内最低賃金とは、補助事業実施場所で働く従業員に適用する時給額のうち、最も低い額です。また、地域別最低賃金とは、補助事業実施場所が所在する都道府県に適用される最低賃金です。
賃金引上げによる加点を希望する場合、どのような書類が必要?
提出書類はありません。電子申請において給与支給総額を年率平均何%増加させ、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+何円の水準とする計画であるかを入力し、システム上でその賃上げを誓約します。
賃金引上げによる加点を受けて計画が未達だったら? ペナルティはある?
事業化状況報告で未達が報告された場合、その報告を受けてから18カ月、中小企業庁が所管する補助金への申請において大幅に減点されます。
ものづくり補助金の減点項目とは?
補助金は審査による合計点で採択が決定します。応募締切日から過去3年間に、ものづくり補助金の交付決定を1回受けている場合、令和元年度補正予算ものづくり補助金以降に交付決定を受けていて、収益納付実績のない事業者は減点となります。
必要書類を提出した後の流れは?
補助金が一定規模以上の事業者には口頭審査があります。その後、採択となったら、交付申請を行います。交付決定が下りたら、設備を発注し、設備が導入されたら実績報告を行います。実績報告後、交付額が決定し、補助金請求手続きを経て補助金が支払われます。
口頭審査はどのように行われますか?
オンラインで実施され、時間は15分程度です。申請した事業計画について、事業の適格性、革新性、優位性等の他、申請に係る意思決定の背景等、記載のない内容についても聞かれることがあります。
口頭審査はオンラインじゃないとだめ?
オンラインのZoom等で実施します。そのため、安定したインターネットに接続したPCとPC内蔵もしくは外付けのwebカメラ、マイク、スピーカーを準備してください。また、審査当日に本人確認を行うので、顔写真付きの身分証明書も必要となります。
口頭審査を受けるのは誰でもいい?
申請事業者の個人事業主本人、法人代表者、株式会社取締役(社外取締役を除く)、応募時の労働者名簿に記載されている担当者や経理担当者が1名で対応してください。勤務実態のない人や事業計画書作成支援者等の申請事業者以外の対応や同席は認められません。
認定支援機関との連携は必要?
必須ではありませんが、事業計画の策定に際しては、専門的な知識や綿密な経営計画が求められるため、認定支援機関と連携することで採択される可能性が上がります。支援を受ける場合は、申請の際に名称、報酬、契約期間を必ず記載してください。
補助金を受け取った後、報告義務はある?
補助金は、税金が原資となっています。税金が適正に使われていることを証明、検証するために、補助金を受け取った事業者は5年間、事業化状況報告を行う義務があります。報告を行わないと補助金返還等が求められます。
事業化状況報告とは、どのようなもの?
①事業化状況・知的財産権等報告書 ②事業化状況等の実態把握調査票 ③返還計算シート ④直近の決算書 ⑤報告年3月分の賃金台帳を、事業化状況・知的財産権等報告システムから報告する必要があります。
他に補助金を返還しなければならないケースはある?
虚偽報告を行った場合や賃金引上げ等状況の報告から、給与支給総額や事業場内最低賃金の増加目標が達成できていないと認められる場合に返還を求められます。
補助事業終了後5年以内に補助対象者の要件を満たさなくなった場合は?
補助事業実施期間内に大企業になった等、要件を満たさなくなった場合は、補助対象外となり、補助金の交付決定の取り消しや返還が求められます。補助事業実施期間終了後であれば、返還の必要はありません。
収益納付とは何?
補助事業の結果により、収益(収入から経費を引いた額)が生じた場合に、補助金交付額を限度として収益金の一部または全部に相当する額を国庫に延納することです。補助事業後の一定期間内で利益が生じた場合は、規定により返納する義務があります。
補助事業実施場所は、採択されてから決めてもいい?
実施場所を確定してから応募してください。確定していないと補助事業がスムーズに進まない恐れがあります。採択後の交付申請時に実施場所を変更することは、原則認められません。
補助金交付決定後に計画の変更はできる?
交付決定を受けた後、本事業の経費の配分もしくは内容を変更しようとする場合、または中止、廃止をする場合は、事前に事務局の承認を得なければなりません。
採択されたら、すぐに設備を発注していい?
採択されても、交付決定が下りるまでは発注してはいけません。交付申請で提出された書類が審査され、補助対象外経費等が含まれている等の問題がなければ、交付決定の手続きが行われ、交付決定通知書に記載された交付決定日をもって補助事業を始めることができます。
申請書に記載が必要となる基準年度って何?
基準年度とは、応募から交付決定を経て補助事業を実施する年度の直前の年度です。応募の際は基準年度の欄に「事業完了予定の日を含む事業年度の前の事業年度」の決算の実績値を入力してください。実績値が確定していない場合は見込み値を入力してください。
創業して間もない場合の基準年度はどうすればよい?
第1期が基準年度となります。基準年度の欄には見込値を入力してください。見込み値を記入して採択した場合は、交付申請時に実績値が判明次第実績値を報告することになります。
不明点はどこに問い合わせればいい?
お問い合わせ、申請方法、不明点の相談や連絡は、支援を受けている認定支援機関のほか「ものづくり補助金事務局サポートセンター」、電話050‐3821‐7013で午前10時~午後17時まで受け付けています。
まとめ
そのため、令和6年度補正予算にて実施されるとなると、令和5年度補正予算と同じようなスケジュール感(年明けの公募発表、公募締切り、年内の補助事業実施)で行われる可能性が高いと考えられます。
昨今の補助金審査の厳格化や前回公募から時間が空いていること、公募回数が減っていること等から、次回ものづくり補助金の採択率は、かなり厳しいものになると予測できます。そのため、ものづくり補助金の申請を考えている事業者の方は、補助金に精通している認定支援機関等の専門家に協力を仰ぐなどしてしっかりと準備を進めることをお勧めします。
著者
ものづくり補助金編集部
シェアビジョン株式会社
認定支援機関(認定経営革新等支援機関※)である、シェアビジョン株式会社において、80%以上の採択率を誇る申請書を作成してきたメンバーによる編集部が監修・執筆しています。
当社は、2017年の会社設立以来、ものづくり補助金や事業再構築補助金等の補助金申請サポートをはじめとしたコンサルティングサービスを提供してまいりました。『顧客・従業員のビジョンを共有し、その実現をサポートすることで社会の発展と幸福を追求する』を経営理念とし、中小企業の経営者のビジョンに寄り添い、ビジネスの課題を解決するための手助けをしています。支援してきたクライアントは1,300社以上、業界は製造業、建設業、卸売業、小売業、飲食業など多岐に渡ります。このブログでは、中小企業の経営者にとって有益な情報を分かりやすくお届けしてまいります。
※認定経営革新等支援機関とは?
中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にあると国が認定した経営相談先です。全国各地に3万箇所以上の認定支援機関があり、税理士、税理士法人、公認会計士、中小企業診断士、商工会・商工会議所、金融機関、経営コンサルティング会社等が選出されています。認定支援機関を活用することで、補助金申請だけでなく、財務状況、財務内容、経営状況に関する調査・分析までを支援するため、自社の経営課題の「見える化」に役立ちます。