新事業進出補助金第1回公募採択結果発表!

2025/10/08
この記事の重要ポイント

はじめに

今年、新たに創設された「新事業進出補助金(正式名称:中小企業新事業進出補助金)」は、既存事業とは異なる、新市場・高付加価値事業への進出にかかる設備投資等を支援することにより、新規事業への挑戦を促進する意図をもった制度です。

従来の事業再構築補助金の後継とも言われていますが、新たな枠組みでの制度となり、採択の傾向が気になっていた人も多いことと思います。公募要領では、採択発表予定は10月頃とかなり大まかな情報でしたが、2025年10月1日、受付締切7月15日から2ヶ月半経って、第1回公募の採択結果が発表されました。補助金の採択発表は予定と公表されている目安期間の中でも遅いことが多かったので、今回は大方の予想よりやや早い採択発表だったと言えるでしょう。

この記事では、今回の発表を受けて採択結果から見えてくる傾向を解説します。

≪参考≫
中小企業新事業進出補助金『新事業進出補助金 第1回公募の採択結果について』

新事業進出補助金第1回公募と他の補助金との採択率比較

新事業進出補助金第1回公募の応募件数、採択件数、採択率は、以下の通りとなりました。

新事業進出補助金1回公募(2025年7月15日締切)

30%台という採択率は、非常に厳しい数字ですが、審査が厳格化している昨今の補助金傾向からすると、概ね予想通りの結果だったと言えるでしょう。

参考までに、中小企業を支援する代表的な他の補助金の直近の公募結果は、以下のようになっています。

事業再構築補助金13回公募(2025年3月26日締切)

 

ものづくり補助金19次公募(2025年4月25日締切)

 

省力化投資補助金(一般型)2回公募(2025年5月30日締切)


新事業進出補助金1回公募は、事業再構築補助金13回公募、ものづくり補助金19次公募と同程度の採択率でした。厳しい数字ではありますが、可能性がないというほどではなく、厳しくも妥当な水準だったと言えるのではないでしょうか。

省力化投資補助金(一般型)の第2回公募は第1回公募の約1か月後が申請締切であったこともあり、申請数自体少なく、また、採択率は1回公募と同じく高水準となりました。省力化投資補助金(一般型)は、中小企業を支援する国の補助金ではありますが、既存事業の生産性向上の支援を目的とした補助金制度で、他の2つとは目的が大きく異なるため、採択率についても傾向は異なると考えて良いでしょう。

一般的に新しい補助金の第1回公募は、準備が間に合わない、傾向と対策が分からない等の理由から、申請数が少なく、採択率が高く出やすいという傾向がありました。新事業進出補助金も、今後、第2回公募以降に申請数が増えてくると、採択率は更に厳しくなっていくかもしれません。

関税の影響を受けている事業者は加点対象

特筆すべきポイントは、今回の採択件数1,118件の内、関税加点対象が590件あったということです。

公募要領には、審査項目の一つとして、米国の関税措置による影響を受けている又は影響を受けることが具体的に見込まれている場合、影響の内容を具体的に書くということが【任意】として設定されていました。関税の影響については、加点項目として公募要領には明記されていませんが、今回の発表で、明確に加点対象であったことが分かりました。

応募件数の何件が関税加点対象であったかはこのデータからは分かりませんが、採択件数の過半数が関税加点対象だったということは、重要なポイントだと言えるでしょう。

新事業進出補助金第1回公募の業種別採択率

業種別の応募件数、採択件数、採択率は、以下のようになりました。
応募件数、採択件数ともに製造業、卸売業・小売業、建設業の順に多くなっていますが、一番の注目ポイントは、製造業の採択率の高さです。全体採択率37.2%に対し、製造業では51.9%と全体の平均を大きく上回っています。これは、多くの製造業が他の業種と比較して関税の影響を受けやすく、加点の対象となった事業者が多かったのではないかと予測できます。

一方で、宿泊業、飲食サービス業の採択率は24.4%と低くなっています。新事業進出補助金は、「新市場性」と「高付加価値性」が重視される補助金であるのに対し、宿泊業、飲食サービス業は人的サービス中心で、既存事業との差別化が打ち出しにくいという点があったかと思われます。飲食サービス事業者が採択された事業計画名を見ると、食品製造などのプロダクト化での採択が多くなっています。

≪参考≫
中小企業新事業進出補助金『採択者一覧』

補助金申請額の分布

新事業進出補助金の公募枠は1つのみで、従業員数によって補助金額が異なり、補助率は一律1/2となっています。
※()内は賃上げ特例を適用した場合


補助申請額の分布は、以下のようになっています。
≪出典≫中小企業新事業進出補助金『新事業進出補助金 第1回公募の採択結果について』


新事業進出補助金は、補助金額の下限が750万円であるため、対象経費が最低1,500万円の投資が必要です。

補助金申請額の応募件数は、2,000万円~2,500万円が763件と最も多く、次いで1,000万円~1,500万円の510件、 500万円~1,000万円の411件の順で多くなっており、採択件数は、2,000万円~2,500万円の283件、1,000万円~1,500万円の154件、1,500万円~2,000万円の148件の順になっています。

これらを更にまとめると、以下のようになりました。
補助金額が3,000万円以上の高額な補助金額で採択されている企業が全体の26.4%を占めており、補助金額が大きい事業者の採択率が高いという傾向がありました。これは、比較的規模の大きな事業計画に対して、綿密な準備で臨んだ事業計画が評価されたり、加点を取りやすかったりした結果だと思われます。

まとめ

新事業進出補助金1回公募は、全体採択率は37.2%と、厳しい結果となりましたが、製造業に限っていえば、51.9%と製造業の事業者が活用することの多いものづくり補助金に比べると、高い採択率となりました。
また、関税の影響を受けている事業者は、加点対象となり、採択に有利に働くことが分かりました。

採択に向けては、改めて、公募要領における「新事業進出指針」に沿った、事業計画書を策定すること、「加点項目」を取得することが大きな鍵と言えそうです。

新事業進出補助金は、第2回公募が2025年12月19日締め切りとなっており、第3回公募も12月中開始される予定が公表されています。事業計画の策定、申請のための準備は、十分な時間を取って綿密に行うことが重要です。申請を検討されている事業者の方は、どうぞお早めにご相談ください。

筆者・監修

新事業進出補助金編集部

シェアビジョン株式会社

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