新事業進出補助金の前身、事業再構築補助金の創設からこれまでの経緯

2024/12/20

はじめに

令和6年度補正予算では、中小企業小規模事業者関連の持続的な賃上げを実現するための生産性向上・省力化・成長投資支援の一つとして、新事業への進出にかかる支援の推進が挙げられ、新事業進出補助金の創設が発表されました。

この新事業進出補助金は、事業再構築補助金が実施されていた既存基金の活用により1,500億円規模で実施されます。この記事では、新たな補助金「新事業進出補助金」の前身である、事業再構築補助金の創設から終了に至るまでの推移について、解説します。

事業再構築補助金、申請枠の推移

2020年1月に国内でコロナ感染者が確認されて以降、緊急事態宣言が発令され、県をまたいだ移動が制限される等、私たちの生活は大きく変化しました。また世界的なパンデミックは経済活動にも影響を及ぼし、多くの中小企業が深刻な事態に陥りました。

そのような中、ウィズコロナ・ポストコロナ時代の経済環境の変化に対応するために、中小企業等の新分野展開、業態転換、業種転換等の思い切った「事業再構築」の挑戦を支援する補助金として事業再構築補助金が創設され、2021年3月に開始されました。

コロナ禍に苦しむ企業にスピーディーに対応するため、交付決定前の事業開始が認められる事前着手制度が導入されたり、建物費が補助対象経費になったりと、新しい試みが行われました。1者あたりの補助金が数千万円ともなる大規模な支援内容で、12回の公募で8万者を超える事業者が採択されました。

コロナの影響による経済環境が変化していく中で、公募回毎に要件や補助金額なども変化し、申請枠も以下のように推移していきました。

事業再構築補助金の後継「新事業進出補助金」が登場!

事業再構築補助金、要件の変化

補助金は、それぞれの補助金毎に基本要件を設定しています。これは、要件を満たす事業者を支援することで、その補助金が果たす目的を達成するためです。

事業再構築補助金は、「コロナの影響を受けている中小企業を支援する」という目的があったために、「売上減少要件」という、コロナ前とコロナ後を比較して売上が減少していることを示す要件がありました。

事業再構築補助金 売上減少要件
申請前の直近6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること
第6回公募では、グリーン成長枠で売上減少要件が撤廃され、その後も売上減少要件が課されない枠が順次拡張されていきました。このころから、事業再構築補助金の役割・目的は、コロナ禍に苦しむ中小企業の支援という意味合いから、新しい事業へのチャレンジによる付加価値の向上という点に重きが置かれるようになっていきました。

そして第10回公募からは、申請枠の中心であった「通常枠」が「成長枠」となり、売上減少要件が撤廃されました。

令和5年度秋のレビューでの指摘を受け、第12回公募は、申請枠の集約や、事前着手制度の原則廃止、全枠での売上減少要件の撤廃、口頭審査の実施など、さまざまな見直しが行われた上で、実施されました。

また、2023年12月に成立した令和5年度補正予算では、事業再構築補助金の新規予算は計上されず、基金の一部は中小企業省力化投資補助事業(省力化投資補助金)に再編されました。

事業再構築補助金、採択率の推移

採択率については、それまでの第1~10回公募の採択率が約50%前後だったのに対し、第11・12回の採択率はどちらも約26%と非常に厳しくなりました。

第1回から第12回の採択率推移は、以下の通りです。

事業再構築補助金公募回毎の応募件数・採択率の推移
事業再構築補助金は、2023年11月に実施された令和5年度秋のレビューにて、一時的な流行に乗じた類似案件や、事業化の検証が不十分である等の指摘を受け、有識者から抜本的な見直しを求められました。

そのため、2023年12月下旬~2024年1月上旬が予定されていた第11回公募の採択発表は延期となり、2024年2月14日に採択結果が発表されました。

その後、さまざまな見直しが行われた上で、第12回公募が実施されましたが、採択率は第11回と同様非常に厳しいものでした。

そして、事業再構築補助金は、コロナの影響による中小企業支援という役割を終えたとして、第12回公募が最後の公募となり、基金の残りは、省力化投資補助金を経て次の新事業進出補助金に引き継がれることとなりました。

まとめ

事業再構築補助金は、約3年に渡ってコロナの影響を受けた中小企業のチャレンジを支える補助金として実施され、その3年の中で、申請枠や要件も変化していきました。

そして、来年は、企業の成長・拡大を通した生産性向上や賃上げを促すための補助金として、新事業進出補助金が創設されます。

事業再構築補助金と同じく、「既存事業とは異なる、新市場・高付加価値事業への進出」がポイントとなるため、採択に向けては、その指針に沿った取り組みや事業計画の策定が重要になります。

補助金全般の傾向として、審査は厳格化しており、採択されるためには入念な準備が必要です。補助金を活用した設備投資を検討している事業者の方は、どうぞ認定支援機関までご相談ください。

筆者・監修

新事業進出補助金編集部

シェアビジョン株式会社

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