はじめに
この新事業進出補助金は、事業再構築補助金が実施されていた既存基金の活用により1,500億円規模で実施されます。この記事では、新たな補助金「新事業進出補助金」の前身である、事業再構築補助金の創設から終了に至るまでの推移について、解説します。
事業再構築補助金、申請枠の推移
そのような中、ウィズコロナ・ポストコロナ時代の経済環境の変化に対応するために、中小企業等の新分野展開、業態転換、業種転換等の思い切った「事業再構築」の挑戦を支援する補助金として事業再構築補助金が創設され、2021年3月に開始されました。
コロナ禍に苦しむ企業にスピーディーに対応するため、交付決定前の事業開始が認められる事前着手制度が導入されたり、建物費が補助対象経費になったりと、新しい試みが行われました。1者あたりの補助金が数千万円ともなる大規模な支援内容で、12回の公募で8万者を超える事業者が採択されました。
コロナの影響による経済環境が変化していく中で、公募回毎に要件や補助金額なども変化し、申請枠も以下のように推移していきました。
事業再構築補助金の後継「新事業進出補助金」が登場!
公募回 | 公募時期 | 申請枠 |
第1~2回 | 2021年3月~7月 | ・通常枠 |
第3~5回 | 2021年7月~2022年3月 | ・通常枠 |
第6回 | 2022年3月~6月 | ・大規模賃金引上枠 |
第7~9回 | 2022年7月~2023年3月 | ・通常枠 |
第10回 | 2023年3月~6月 | ・成長枠 |
第11回 | 2023年8月~10月 | ・成長枠 |
第12回 | 2024年4月~7月 | ・成長分野進出枠 |
事業再構築補助金、要件の変化
事業再構築補助金は、「コロナの影響を受けている中小企業を支援する」という目的があったために、「売上減少要件」という、コロナ前とコロナ後を比較して売上が減少していることを示す要件がありました。
事業再構築補助金 売上減少要件
申請前の直近6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること
そして第10回公募からは、申請枠の中心であった「通常枠」が「成長枠」となり、売上減少要件が撤廃されました。
令和5年度秋のレビューでの指摘を受け、第12回公募は、申請枠の集約や、事前着手制度の原則廃止、全枠での売上減少要件の撤廃、口頭審査の実施など、さまざまな見直しが行われた上で、実施されました。
また、2023年12月に成立した令和5年度補正予算では、事業再構築補助金の新規予算は計上されず、基金の一部は中小企業省力化投資補助事業(省力化投資補助金)に再編されました。
事業再構築補助金、採択率の推移
第1回から第12回の採択率推移は、以下の通りです。
事業再構築補助金公募回毎の応募件数・採択率の推移
公募回 | 公募締切 | 採択発表 | 応募件数 | 採択件数 | 採択率 |
第1回 | 2021年4月30日 | 2021年6月18日 | 22,229者 | 8,015者 | 36.06% |
第2回 | 2021年7月2日 | 2021年9月2日 | 20,800者 | 9,336者 | 44.88% |
第3回 | 2021年9月21日 | 2021年11月30日 | 20,307者 | 9,021者 | 44.42% |
第4回 | 2021年12月21日 | 2022年3月3日 | 19,673者 | 8,810者 | 44.78% |
第5回 | 2022年3月24日 | 2022年6月9日 | 21,035者 | 9,707者 | 46.15% |
第6回 | 2022年6月30日 | 2022年9月15日 | 15,340者 | 7,669者 | 49.99% |
第7回 | 2022年9月30日 | 2022年12月15日 | 15,132者 | 7,745者 | 51.18% |
第8回 | 2023年1月13日 | 2023年4月6日 | 12,591者 | 6,456者 | 51.27% |
第9回 | 2023年3月24日 | 2023年6月15日 | 9,368者 | 4,259者 | 45.46% |
第10回 | 2023年6月30日 | 2023年9月22日 | 10,821者 | 5,205者 | 48.10% |
第11回 | 2023年10月6日 | 2024年2月13日 | 9,207者 | 2,437者 | 26.47% |
第12回 | 2024年7月26日 | 2024年11月9日 | 7,664者 | 2,031者 | 26.50% |
そのため、2023年12月下旬~2024年1月上旬が予定されていた第11回公募の採択発表は延期となり、2024年2月14日に採択結果が発表されました。
その後、さまざまな見直しが行われた上で、第12回公募が実施されましたが、採択率は第11回と同様非常に厳しいものでした。
そして、事業再構築補助金は、コロナの影響による中小企業支援という役割を終えたとして、第12回公募が最後の公募となり、基金の残りは、省力化投資補助金を経て次の新事業進出補助金に引き継がれることとなりました。
まとめ
そして、来年は、企業の成長・拡大を通した生産性向上や賃上げを促すための補助金として、新事業進出補助金が創設されます。
事業再構築補助金と同じく、「既存事業とは異なる、新市場・高付加価値事業への進出」がポイントとなるため、採択に向けては、その指針に沿った取り組みや事業計画の策定が重要になります。
補助金全般の傾向として、審査は厳格化しており、採択されるためには入念な準備が必要です。補助金を活用した設備投資を検討している事業者の方は、どうぞ認定支援機関までご相談ください。
新事業進出補助金編集部
シェアビジョン株式会社
認定支援機関(認定経営革新等支援機関※)である、シェアビジョン株式会社において、80%以上の採択率を誇る申請書を作成してきたメンバーによる編集部が監修・執筆しています。
当社は、2017年の会社設立以来、ものづくり補助金や事業再構築補助金等の補助金申請サポートをはじめとしたコンサルティングサービスを提供してまいりました。『顧客・従業員のビジョンを共有し、その実現をサポートすることで社会の発展と幸福を追求する』を経営理念とし、中小企業の経営者のビジョンに寄り添い、ビジネスの課題を解決するための手助けをしています。支援してきたクライアントは1,300社以上、業界は製造業、建設業、卸売業、小売業、飲食業など多岐に渡ります。このブログでは、中小企業の経営者にとって有益な情報を分かりやすくお届けしてまいります。
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