徹底解説! 新事業進出補助金の審査ポイント

2025/05/27

はじめに

中小企業が既存事業にとどまらず、新たな市場へと挑戦する機会を後押しする補助制度として、注目されているのが「新事業進出補助金(中小企業新事業進出促進事業)」です。 
しかし、国の予算には上限があり、より良い事業を後押しするという観点から、各補助金にはその目的や趣旨に沿った「審査項目」が設けられています。各審査項目により合致した事業内容であるほど評価が高くなり、採択の可能性が上がります。

新事業進出補助金のホームページでは、事業計画テンプレートがアップされました。これは新事業進出補助金の申請項目を網羅した、事業計画作成用のテンプレートで、記載すべき項目が細かく分けられています。
このテンプレートに沿って準備を進めた上で、審査項目に沿った記載ができているかを改めて確認していきましょう。本記事では新設された新事業進出補助金の審査ポイントについて詳しく解説していきます。

書面審査の審査項目

新事業進出補助金は、書面審査(システム入力)と、一部の事業者のみ対象となる口頭審査(オンライン)にて実施されます。
書面審査の審査項目は、必ず押さえておきたい審査項目①~⑥の基本の項目と、賃上げ特例を希望する際に重要となる⑦大規模な賃上げ計画の妥当性、⑧加点項目、⑨減点項目の計9項目で構成されています。
基本の審査項目と確実に合致した申請書を作成しつつ、加点項目を取得し、減点項目にかからないようにすることが、採択の可能性を引き上げる近道となります。

第1回分の公募要領に記載されている審査項目は以下の通りです。

審査項目①:補助対象事業としての適格性
まずは、大前提として申請内容が新事業進出補助金を用いるにふさわしいかどうかを審査されます。今一度、補助金の目的や基本要件を確認しましょう。審査項目②:新規事業の新市場性・高付加価値性
今回の補助金の核心と言える部分です。記載内容については「新市場性」か「高付加価値性」のどちらかを選択して、記載することになります。
「新市場性」を選択するには、取り組みの内容が、ジャンル・分野の社会における一般的な普及度や認知度が低いものでなくてはいけません。また、それを裏付ける客観的なデータ・統計等を示す必要があります。

新市場性の審査にあたっては、製品等の「性能」「サイズ」「素材」「価格帯」「地域性」「業態」「顧客層」「効果」といった要素は排除されます。

例えば、「高精密小型医療機器部品の製造を行う事業」のジャンル区分は「医療機器部品」であり、「高精密」「小型」は含めません。同様に、「東京都港区で高級焼肉店を経営する事業」は「焼肉店」と区分し、「東京都港区」「高級」は含めません。

そのため、ここで言われている「新市場性」とは、日本初、世界初とまではいかなくても、比較的新しい分野での取り組みが求められることになります。

「新市場性」に該当しない場合は、本事業での取り組みが「高付加価値性」を満たさなくてはなりません。「高付加価値性」を選択すると、新たな取り組みが、一般的な付加価値や相場価格と比較して、高水準の高付加価値化を図るものであるかが審査されます。

また、高付加価値化の源泉となる価値・強みの分析が妥当なものであるかが審査されます。ここでの「高付加価値化の源泉となる価値・強み」とは、既存事業で培ってきた強み(ヒト・モノ・カネ・情報)です。自社の現在の取り組みが、新規事業でも活かせることをアピールしましょう。

この「新市場性」「高付加価値性」のどちらにも該当しない場合には、新事業進出補助金の指針に沿った取り組みといえないため、対象となりません。審査項目の中でも、重要度の高い項目であるため、公募要領や以下の資料を熟読の上、ポイントを押さえた記載を心がけましょう。
審査項目③ 新規事業の有望度
今後、新事業に取り組むに当たって、参入する市場がどれほどの見込みであるのかを示し、市場の将来性をアピールする項目です。自社にとって今回取り組む事業の有望度が高いことを明確に記載しましょう。
また、免許や許認可等の制度的な面で参入可能かどうかを示します。
さらに、代替製品についてきちんと調べられているか、また事業者の優位性が簡単に他社に真似できるものでないかどうかを示す必要があります。

万が一類似のテーマや設備に関する応募が集中した場合は、別途審査が課されることもありますので、差別化や優位性はしっかりと練っておきましょう。

審査項目④:事業の実現可能性
内部・外部の実施体制や、補助事業遂行のための財務状況が万全であることを示しましょう。複数の事業者が連携して申請する場合は連携体各者の財務状況等も考慮されます。
交付申請時点で事業計画書に記載の事業実施スケジュールどおりに進捗していない場合は、遅延の理由や事業実施可能性等を確認されます。事業の遂行が困難であると判断される場合は、採択取消等を行う場合もあるので、現実的なスケジュールを立て、具体的に記載しましょう。

審査項目⑤:公的補助の必要性
費用対効果の高さと、補助の必要性については確実に書き、国からの補助があればこそできる事業であるとアピールしましょう。国が求める社会貢献度の高い事業はより高く評価されます。
また、経済的波及効果や先端的なデジタル技術の活用等に言及できれば、評価が高まるでしょう。

審査項目⑥:政策面
事業者が新事業に取り組むことで国や地域に対して経済的な効果やイノベーションを起こすことができるかどうかが審査されます。

また、2025年4月25日に経済産業省が発表している資料『米国の関税措置に対する国内対応について』には、新事業補助金について、関税の影響を受けた事業者を優先採択するとあります。
事業計画テンプレートにも、米国の関税措置による影響を受けている又は影響を受けることが具体的に見込まれている場合に、具体的な影響の内容の記載欄があります。影響がある場合は、詳細に記載しましょう。

審査項目⑦:大規模な賃上げ計画の妥当性
賃上げ特例要件を用いている事業者が記載する必要のある項目です。かなりの賃上げを求められる特例要件であるため、実現可能性があるか、一時的な賃上げとなっていないか等を確認されます。

採択率アップにつながる加点項目

審査項目⑧:加点項目
以下に示す9項目の加点項目を満たす事業者は、審査で一定程度の加点が行われます。加点項目は応募締切日時点で満たしている必要があることに注意しましょう。加えて、ものづくり補助金においては加点項目についての申請制限が設けられていましたが、新事業進出補助金においては「一定程度の加点」となっており、上限が設けられていないため、なるべく多くの加点を満たせると採択の可能性があがります。
また、以下の加点項目は中小企業庁が実施する他の補助金においても加点項目として扱われていることが多いため、補助金利用を視野にいれている方は取得しておくことをお勧めします。

減点項目に注意!

審査項目⑨:減点項目
 加点項目に対して、3つの減点項目も存在します。こちらは、該当してしまった場合審査において一定もしくは大幅な減点を受ける可能性がありますので、注意しましょう。

①加点項目要件未達事業者
中小企業庁が所轄する補助金(ものづくり補助金、事業再構築補助金等)において、賃上げの加点を受けたうえで採択されたにもかかわらず、加点項目要件を達成できなかった場合には、未達が報告されてから18か月の間本補助金の申請にあたって大幅な減点が行われます。

②過剰投資の抑制
 特定の期間に、類似のテーマ・設備等に関する申請が集中してなされている場合には、一時的流行による過剰投資誘発の恐れがあるため、別途審査が行われます。
過剰投資と判断された申請に関しては、事業計画書に記載されている市場分析の通りに事業を実施することが困難であると考えられるため、大幅な減点を受けてしまいます。
新事業進出補助金の前身である事業再構築補助金では、一時期、シミュレーションゴルフ、セルフエステ、サウナ、フルーツサンド販売店等の特定の内容に偏っているという指摘があり、補助事業の適正使用について批判がありました。安易な流行に乗じた取り組みは、この減点項目にかかる可能性もあるため、注意しましょう。

③他の補助事業の事業化が進展していない事業者
過去に新事業進出補助金、事業再構築補助金、ものづくり補助金を受給しており、直近の事業化状況報告における事業化段階(※)が3段階以下である場合は大幅で減点されます。
※事業化段階とは
 第1段階:製品の販売、又はサービスの提供に関する宣伝等を行っている。 
 第2段階:注文(契約)が取れている。 
 第3段階:製品が1つ以上販売されている、又はサービスが1回以上提供されている。
 第4段階:継続的に販売・提供実績はあるが利益は上がっていない。 
 第5段階:継続的に販売・提供実績があり利益が上がっている。

口頭審査への備えもぬかりなく

口頭審査は一定の基準を満たした事業者の中から、必要に応じて行われます。対象となった場合は、電子申請が完了した事業者から受験日時が案内されます。口頭審査の予約は先着順となるので、早期に申請を完了すると優先的に受験日時を選ぶことができます。口頭審査の対象になったにも関わらず、受験しなかった場合は不採択となるため、注意しましょう。

審査内容としては、本補助金に申請された事業計画について、事業の適格性、優位性、実現可能性、継続可能性等の観点について審査されます。

所要時間は15分程度で、オンラインにて実施されます。審査は申請事業者自身1名が対応しなければならず、事業計画書作成支援者や経営コンサルタントなどの対応・同席は認められませんのでご注意ください。

最後に

新事業進出補助金では、公式サイトにアップされている「事業計画テンプレート」を漏れなく、的確に記載することで、求められている審査項目を押さえることができるでしょう。
その上で、記載した内容が、審査ポイントを押さえられているかを確認することで、新事業進出補助金の採択を勝ち取ることができる確率が上がります。

事業計画のブラッシュアップには、専門家である認定経営革新等支援機関の活用も有効です。新事業進出補助金の申請を検討されている事業者の方は、ぜひ一度、シェアビジョンにご相談ください。
筆者・監修

新事業進出補助金編集部

シェアビジョン株式会社

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