はじめに
「うちの会社でも使える補助金なのかな?」
ポストコロナを見据えた企業の挑戦を支援してきた「事業再構築補助金」の公募が終了し、新たに「新事業進出補助金」が令和7年4月22日から始まりました。
この新しい補助金について、多くの中小企業の経営者の皆様が関心をお持ちのことと思います。特に、これまで事業再構築補助金の活用を考えていた方にとっては、制度がどう変わったのか、気になるところでしょう。
このコラムでは、そんな疑問にお答えするため、新しく始まる「新事業進出補助金」と、これまでの「事業再構築補助金」を比較し、何がどう変わり、何が似ているのか(引き継がれたのか)、そのポイントを分かりやすく解説します。
これまでの「事業再構築補助金」ってどんな制度だった?
<事業再構築補助金>
目的 | ポストコロナに対応した事業再構築をこれから行う事業者を重点的に支援する補助金でした。 |
対象 | 中小企業者等だけでなく、中堅企業等も対象でした。創業1年目の会社でも申請が可能でした。 |
補助下限額 | 100万円と、比較的小さな設備投資でも対象となっていました。 |
補助上限額 | 通常類型は最大6,000万円(上乗せ措置がない場合)でした。 |
補助率 | 企業規模や申請枠によって、1/3~3/4まで異なりました。 |
基本要件 | ①新市場進出、事業転換、業種転換、事業再編、国内回帰又は地域サプライチェーン維持・強靱化のいずれかを行う、思い切った事業の再構築であること |
補助事業実施期間 | 通常類型は、交付決定日から12か月以内(ただし、補助金交付候補者の採択発表日から14か月後の日まで)でした。 |
新しい「新事業進出補助金」ってどんな制度?
<新事業進出補助金>
目的 | 新規事業への挑戦を目指す中小企業の設備投資を促進する補助金です。生産性向上を、賃上げにつなげていくことを目的となっています。 |
対象 | 中小企業者等。中堅企業は対象外です。また、従業員がいない会社や会社を作って1年未満の事業者も対象外となっています。 |
補助下限額 | 750万円と、比較的大きな設備投資が求められています。 |
補助上限額 | 従業員20人以下で2,500万円、101人以上では7,000万円(賃上げ特例適用がない場合)と、事業再構築補助金よりも高くなっています。 |
補助率 | 一律1/2となっています。 |
基本要件 | ①新事業進出指針に示す「新事業進出」の定義に該当する事業であること |
補助事業実施期間 | 交付決定日から 14 か月以内(ただし採択発表日から 16 か月以内)と、事業再構築補助金の通常類型より長くなりました。 |
(1)製品等の新規性要件
⇒既存事業で、過去に製造したことがある製品等の製造は対象になりません。(第1回公募開始日である令和7年4月22日以降に初めて取り組んでいる事業は、「新規性」を有するとみなされます)
(2)市場の新規性要件
⇒新たに取り組む製品の属する市場が、既存事業とは異なる顧客層である必要があります。
(3)新事業売上高要件
⇒新たな製品等の売上高(又は付加価値額)が、応募申請時の総売上高の10%(又は総付加価値額の15%)以上となる計画を策定することが必要です。
基本要件③賃上げ要件と④事業場内最賃水準要件では、応募申請時に目標値を設定する必要があり、目標値未達の場合、補助金返還義務があります。そのため、計画時の目標については、自社の実現可能性についてこれまで以上に慎重に見極める必要があるでしょう。
基本要件⑤の一般事業主行動計画の公表は、事業再構築補助金第13回公募では、加点項目となっていましたが、新事業進出補助金では、全社必須の基本要件となりました。
事業再構築補助金では、金融機関の融資を受ける場合には「金融機関による確認書」、融資を受けない場合には「認定経営革新等支援機関による確認書」のいずれかが必要でしたが、新事業進出補助金では、金融機関から借り入れを行わず、自己資金で行う場合には、いずれの確認書も不要となりました。
補助対象経費はここに注目!
新事業進出補助金では、「機械装置・システム構築費」または「建物費」のいずれかが必ず補助対象経費に含まれていなくてはなりません。
一方で、事業再構築補助金では補助対象となっていた「研修費」は、新事業進出補助金では、補助対象ではないので、注意しましょう。
新しい補助金、うちの会社には合う? 見極めポイント
【こんな会社・計画なら、検討の価値あり!】
計画内容: 今までの事業とは違う新しい製品やサービスを始めて、新しいお客様や市場を開拓したいと考えている。
会社の状況: 中小企業で、会社設立から1年以上経っている。ある程度の投資を行う体力がある。
経営者の考え: 会社の成長だけでなく、従業員の給料をしっかり上げていきたいという思いがある。付加価値額アップ(年率4.0%以上)と、賃上げ・最低賃金アップの目標達成に意欲がある。
会社の取り組み: 子育て支援など、働きやすい環境づくりに既に取り組んでいる、またはこれから取り組む意欲がある。
【申請ができないケース】
資本金10億円以上、または常勤従業員数500人以上(製造業の場合)の中堅企業 等
設立1年未満の会社。
人材育成のための研修費を補助金で賄いたい。
賃上げや最低賃金の引き上げに自信がない、または返還リスクは避けたい。
申請を考えるなら、ここに注意! 頼れる専門家も活用しよう
①早めの準備が肝心!
GビズIDプライムアカウントを持っていない場合は、すぐに申請しましょう。
申請準備には時間がかかります。余裕をもって、早めに準備を始めましょう。
②計画書が命!
誰が見ても「なるほど、これなら儲かりそうだし、給料も上げられそうだ」と思える計画を作るために、分かりやすく具体的な計画書を目指しましょう。
なぜこの市場を狙うのか? なぜこの設備が必要なのか? 売上や利益、賃上げの目標はどうやって達成するのか? データや理由等、明確な根拠を示しましょう。
③要件をしっかり確認!
補助金は、要件を満たしていないと、審査の土俵に乗ることができません。自社及び取り組み内容が指針に沿っているかを、しっかり確認しましょう。
認定支援機関とは、中小企業に対して専門性の高い支援を行う機関として国が認定した、専門家や組織のことです。
今回の「新事業進出補助金」では、事業再構築補助金のように金融機関や認定支援機関の確認書が必須ではなくなりました(融資を受ける場合を除く)。しかし、質の高い事業計画書を作成し、採択の可能性を高めるためには、認定支援機関のサポートを受けることが非常に有効です。
認定支援機関に相談するメリットとは?
専門的なアドバイス: 市場分析、収益計画の策定、賃上げ計画の具体化など、専門的な視点からアドバイスをもらえます。
計画書のブラッシュアップ: 公募要領の趣旨や審査のポイントを踏まえ、より説得力のある事業計画書に仕上げるお手伝いをしてもらえます。
客観的な視点: 自社だけでは気づきにくい課題やリスクを指摘してもらい、計画の精度を高めることができます。
最新情報の提供: 補助金に関する最新情報や採択傾向などを教えてもらえる場合もあります。
まとめ:新しいチャンスを活かすために
新しい制度では、賃上げや最低賃金の引き上げが「絶対条件」となり、その達成が求められます。会社の成長と従業員の幸せを本気で考える企業にとっては、大きなチャンスとも言えます。
このコラムを参考に、まずは新しい補助金制度をしっかり理解し、自社の計画がそれに合っているか、そして条件を満たせるかを見極めてみてください。
その上で、「よし、挑戦しよう!」と決めたなら、しっかりと準備を進め、この新しいチャンスを会社の未来を切り拓く力に変えていきましょう。
新事業進出補助金編集部
シェアビジョン株式会社
認定支援機関(認定経営革新等支援機関※)である、シェアビジョン株式会社において、80%以上の採択率を誇る申請書を作成してきたメンバーによる編集部が監修・執筆しています。
当社は、2017年の会社設立以来、ものづくり補助金や事業再構築補助金等の補助金申請サポートをはじめとしたコンサルティングサービスを提供してまいりました。『顧客・従業員のビジョンを共有し、その実現をサポートすることで社会の発展と幸福を追求する』を経営理念とし、中小企業の経営者のビジョンに寄り添い、ビジネスの課題を解決するための手助けをしています。支援してきたクライアントは1,300社以上、業界は製造業、建設業、卸売業、小売業、飲食業など多岐に渡ります。このブログでは、中小企業の経営者にとって有益な情報を分かりやすくお届けしてまいります。
※認定経営革新等支援機関とは?
中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にあると国が認定した経営相談先です。全国各地に3万箇所以上の認定支援機関があり、税理士、税理士法人、公認会計士、中小企業診断士、商工会・商工会議所、金融機関、経営コンサルティング会社等が選出されています。認定支援機関を活用することで、補助金申請だけでなく、財務状況、財務内容、経営状況に関する調査・分析までを支援するため、自社の経営課題の「見える化」に役立ちます。