新事業進出指針をわかりやすく解説!

2025/07/01
この記事のポイント

はじめに

補助金は、国や政府が政策目標を実現するために、事業者の取り組みに対して資金の一部を給付する制度です。そのため、補助金毎に指針が定められており、その指針に沿った取り組みに対して審査が行われ、それぞれの予算の中で、支援する優先順位の高い順に採択されます。

補助金には、さまざまな要件があり、採択されるためにはそれらを満たした上で、高い評価を受けるための審査ポイントを押さえていく必要がありますが、新事業進出補助金では、その大前提となるのが「新事業進出指針」になります。

この記事では、新事業進出指針について、わかりやすく解説していきたいと思います。

新事業進出指針、3つの要件

新事業進出指針は、以下の3つの要件で構成されています。
以下で、詳しく見ていきましょう。


要件➀:製品等の新規性

新事業進出補助金は、既存事業とは異なる新しい事業に進出するための補助金であるため、過去に取り組んだ実績のある製品やサービスについては、対象となりません。

「新規性」と聞くとハードルが高いように思われますが、ここでの「新規性」とは、自社にとっての新規性であり、世の中における新規性(日本初・世界初)ではないので、申請する事業を過去に行っていなければ、新規性は満たしていると言えます。

<製品等の新規性要件に該当しない例>
・増産 ・再製造 ・製造方法の変更 ・性能が変わらない改変

ここでは、本補助金の第1回公募開始日である、令和7年4月22日以降に初めて取り組んでいる事業が、新規性を有しているとみなされます。

計画内容や社内体制の検討・支援機関や取引先等への相談、市場調査などは、事業の開始とはみなされないため、令和7年4月22日より前から行っていても問題ありません。

令和7年4月22日より前に、製品・商品の販売や、サービスの宣伝を始めている取り組みについては、すでに事業を実施しているとみなされ、対象とならないため、注意しましょう。

また、新事業進出補助金は、中小企業による大胆な新事業進出を支援する観点から、容易に製造ができる、既存の製品を改良する、既存の製品を組み合わせて新製品を作る等の取り組みは、相対的に評価が低くなる場合があるため、採択されるのは難しいと思われます。

事業計画書では、今回の新しい取り組みが容易ではないことをアピールすることが大切です。



要件②:市場の新規性


新事業進出補助金では、製品等の新規性に加え、この事業での取り組みが企業にとって既存事業とは異なる顧客層に向けられていることが求められます。

具体的には、既存事業の顧客層と異なるニーズや属性を持つ顧客層を対象とする市場である必要があります。

ここでの属性とは、法人・個人の違いや、業種、行動特性等を指しています。

例えば、アイスクリームを提供していた事業者が、新たなメニューとしてかき氷を販売する場合は、単純に従来の顧客がアイスクリームの代わりにかき氷を購入すると考えられるため、顧客層は変わりません。

また、既存の取引先からの要請により、新たに別の製品を製造する場合も、顧客層は変わらないため、対象外となります。



要件③:新事業売上高10%以上

新たな製品やサービスの売上高が、事業計画期間最終年度において、申請時の総売上高の10%以上、または付加価値額の15%以上となることが求められます。

具体的な算出方法や根拠については、収支計画表を作成し、詳細に説明することが必要です。
売上高の10%(又は総付加価値額の15%)は申請するための最低条件です。新たな取組みの売上高の割合がより大きい方が、審査においてより高い評価を受けることができる場合があります。実現可能な範囲で、より高い目標を立てられると採択の可能性が高まるでしょう。

また、売上規模の大きい事業者では、この新事業売上高要件を満たすことが難しい場合もあるかと思われます。応募申請時の直近の事業年度の売上高が10億円以上であり、かつ、同事業年度の売上高のうち、新事業進出を行う事業部門の売上高が3億円以上である場合には、会社全体の売上ではなく、応募申請時の当該事業部門の売上高の10%(又は総付加価値額の15%)以上となることが見込まれる事業計画を策定することでも、要件を満たします。


製品等と市場の新規性を満たす例

この3つの要件のうち、③の新事業売上高要件については記載の通りですが、わかりにくいのは①と②の新規性についての考え方かと思います。では、これらの新規性を満たすとはどういうことか、挙げられている例を見てみましょう。

例1:製造業①

ガソリン車の部品を製造していた事業者が、車両部品の製造で培った技術を活かして、新たに半導体製造装置の部品の製造に着手する



例2:製造業②


航空機用部品を製造していた事業者が、航空機部品の製造で培った技術を活かして、新たに医療機器部品の製造に着手する



例3:建設業

注文住宅の建設を行っていた事業者が、建設業で培った木材の知見を活かして、新たにオーダーメイドの木材家具の製造に取り組む


例4:印刷業


販促物の印刷を行っていた事業者が、既存事業での顧客対応力を活かして、新たに食堂等の内装工事事業に取り組む


例5:情報サービス業

アプリやWEBサイトの開発を行っていた事業者が、既存事業でのノウハウを活かして、地域の特産物等を取り扱う地域商社型のECサイトの運営に取り組む

まとめ

補助金は、税金を原資として国の政策を実現するために実施されています。そのため、採択されるためには、補助金の目的や指針をしっかり理解して、それに沿った事業計画を立てることが重要です。審査項目のポイントを押さえることも重要ですが、大前提となる指針の確認を疎かにしないようにしましょう。

新たな事業への挑戦には、必ず不安とリスクが伴います。これまでのやり方を変えることは、成功してきた企業ほど大きな決断を要します。しかし、環境が大きく変化する昨今、現状にとどまることこそが最大のリスクになると言えるかもしれません。

「新事業進出指針」は、単に補助金の審査基準を示すものだけではありません。自社にとって何が新しいのか、どの市場に可能性があるのか、そしてその挑戦がどれほどのインパクトをもたらすのか。それらを明確にし、事業を根本から見直すきっかけを与えてくれるものにもなり得ます。

企業の成長・拡大のために、新事業へ前向きに挑戦しようという事業者の方は、ぜひご相談ください。
筆者・監修

新事業進出補助金編集部

シェアビジョン株式会社

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