ものづくり補助金 省力化(オーダーメイド)枠(17次公募)について徹底解説

2024/01/25

ものづくり補助金 省力化(オーダーメイド)枠(17次公募)においてはじめに

令和5年12月27日ものづくり補助金総合サイトにて、ものづくり補助金17次締切の公募要領が発表されました。今回は新設された「省力化(オーダーメイド)枠」が公募対象となります。

省力化(オーダーメイド)枠は、中小企業及び小規模事業者が人手不足の解消等を目的として設定された枠です。生産工程の一部、または全部をDX化し完全自動化、24時間操業を実現することで生産性の向上や業務の効率化を目指します。

17次締切の公募では、今回新設された省力化(オーダーメイド)枠のみの募集となり、従来の「製品・サービス高付加価値化枠」及び「グローバル枠」の公募はありません。「製品・サービス高付加価値化枠」及び「グローバル枠」に応募したい場合は、18次締切の公募開始まで待つ必要があります。

なお、18次締切では引き続き「省力化(オーダーメイド)枠」の公募も合わせて行われる予定です。注意点として、17次締切の公募に応募した事業者は18次締切の公募には応募できませんので、よく確認した上で応募する必要があります。

ものづくり補助金 省力化(オーダーメイド)枠(17次公募)導入の背景

ものづくり補助金 省力化(オーダーメイド)枠(17次公募)が導入された背景にあるのが、中小企業及び小規模事業者の深刻な人手不足です。日本銀行「全国企業短期経済観測調査」によると、2020年の3月から9月にかけて雇用人員判断D.Iが一度は大幅に改善したものの、2020年9月以降は右肩下がりとなっています。

さらに2023年の9月には、2005年以降より最低水準を記録した2018年12月から2019年の3月にかけての値をさらに下回る結果となっています。こういったマクロ要因から、中小企業及び小規模事業者の深刻な人手不足感は大企業以上に高まっています。
こういった市場背景もあり、ものづくり補助金 省力化(オーダーメイド)枠(17次公募)が導入されました。

ものづくり補助金 省力化(オーダーメイド)枠(17次公募)補助上限額と補助率

今回新設された「ものづくり補助金 省力化(オーダーメイド)枠(17次公募)」の補助上限額と補助率は以下の通りとなっています。
■補助上限額
なお括弧内の金額は、従業員の大幅な賃上げに取り組む事業者において、大幅賃上げに係る補助上限引き上げの特例が適用された場合の補助金額となります。

従業員の人数に関わらず補助率は一律中小企業が2分の1以内、小規模事業者・再生事業者が3分の2以内となっています。注意点として、1,500万円までの補助金額であれば補助率は2分の1ですが、1,500万円を超える場合は3分の1となります。

ものづくり補助金 省力化(オーダーメイド)枠(17次公募)補助金額が1500万円を超える場合の補助金額を計算

上項目「ものづくり補助金 省力化(オーダーメイド)枠(17次公募)補助上限額と補助率」でも解説した通り、1,500万円までの補助金であれば補助率は2分の1ですが、1,500万円を超える補助金額に関しては補助率が3分の1となる点に注意が必要です。
上図のように、従業員21人以上の中小企業において6,000万円の設備投資を行う場合、3,000万円分に関しては補助率が2分の1で補助金額は1,500万円になります。残りの3,000万円分の補助金に関しては補助率が3分の1となるため1,000万円になります。

合計で補助金は2,500万円となり、6,000万円のうちの3,500万円分に関しては自己負担ですので自社で用意する必要があります。

投資金額全額にたいして半分の補助金額が受け取れるわけではありませんので、勘違いして投資資金を多めに見積もらないように注意する必要があります。

ちなみに、この例で挙げた従業員21~50人の中小企業が、補助上限額である3,000万円を受け取ろうと思うと、7,500万円以上の設備投資が必要になります(大幅賃上げを行わない場合)。

ものづくり補助金 省力化(オーダーメイド)枠(17次公募)の対象事業を徹底解説

ものづくり補助金 省力化(オーダーメイド)枠(17次公募)では、対象事業が以下のように定義されています。
‘’人手不足の解消に向けて、デジタル技術等を活用した専用設備(オーダーメイド設備)の導入等により、革新的な生産プロセス・サービス提供方法の効率化・高度化を図る取り組みに必要な設備・システム投資等を支援‘’
つまりICTやIoT、ロボットやAIなどの「DX」、いわゆるデジタル技術を活用して、生産工程の自動化や効率化を図ろうとする事業者が対象となります。こういった指針により、汎用性の高いロボット単体での導入や、デジタル技術等を活用しない単なる機械装置のみの導入は対象外となります。

具体的な事例としては、熟練の技術者が手作業で行っていた作業工程にAIを組み込んだ自動のロボットアームを配置し、完全自動化及び24時間操業を実現したい、といった事業者などが該当します。これらのシステムを導入するうえで重要なポイントが「SIer(システムインテグレータ)」などと連携を図りつつ事業に応じた「革新的な」自社専用のシステムを構築する、ということです。
※SIer(システムインテグレータ)とは
System Integratorを略してSIer(エスアイアー)と呼ばれており、情報システムの企画、構築、運用などの業務をシステムの顧客から一括して請け負う情報通信企業のことを指します。
しかし、ITの知識や活用ノウハウについて精通したエンジニアが存在せず、システムの設計や運営をするのが難しい企業も多いでしょう。そこで今回の補助金では、外部SIerの活用等が提案されています。

つまりシステムの導入に関して、補助金にも命名されているように「オーダーメイド」である必要があり、なおかつ「革新的」でなければならないのです。革新的とは、競合他社がまだ取り入れていないようなシステム、もしくは競合他社とは一線を画すようなシステムのことを言います。

競合他社がすでに使用しているありきたりな既製品のシステムをそのまま導入するだけでは低い評価を受けてしまう可能性があります。革新的とは言っても、世界初とか日本初といった高いレベルである必要はなく、競合他社が未だ取り入れていないような技術や業界では斬新、もしくは真新しい、といったレベルの革新性があれば十分です。

ものづくり補助金 省力化(オーダーメイド)枠(17次公募)の活用例

ものづくり補助金 省力化(オーダーメイド)枠(17次公募)の活用例としては以下などがあります。
製造業の活用例
■製造業×多関節ロボットの活用例 従来、海外の生産拠点で職人が手作業で行っていた組立工程を国内に集約するにあたり、AIや3Dカメラ、センサー等を用いた多関節ロボットを導入。

組立に必要な全ての部品を供給するシステムを構築したことで、切替ロス無しで、流れてきた部品に依った、製品の1個流し生産を実現することが可能になった。 
⇒人手不足・組み立て動作ロスの解消
サービス業(小売・卸売)の活用例
■サービス業(小売・卸売)×多関節ロボットの活用例
飲料陳列や在庫品出し作業において、AIシステム化された陳列棚の在庫管理システムと、連動して動く自動搬送ロボットを導入。

3Dカメラ技術を使用してAIが自動で商品棚の在庫量を可視化することで、従業員は遠隔で不足している商品の種類と数を把握し、従業員からの指示に従って、ロボットが売り場に自動で商品を搬送し、商品棚に陳列を行う。

⇒人手不足の解消
食品製造業の活用例
■食品製造業×多関節ロボットの活用例
ハンドラベラーを使い、手作業で冷凍商品のラベル貼付作業を行っていたが、納品時間の関係で深夜に渡り作業が発生したり、多人数での分散作業であることから、商品の管理ミスや不良品がでることが課題となっていた。

ロボット導入により箱単位でのラベルの自動貼付や箱の供給・排出が全自動で行えるようになり、作業工数の削減と作業のライン化を実現。 

⇒人手不足・手作業の負担軽減
物流サービス業の活用例
■物流サービス業×自動荷役・積替ロボットの活用例
取扱商品が多種多様で在庫や入出荷タイミングが不規則な物流の集荷業務において、商品の保管規模に応じ、弾力的に荷役作業をロボット化できる単機能小型ロボットユニットを導入。

当日の出荷指示データを基に決められた全カートの積載パターンに沿って、AGVがパレット/カートを運搬、ロボットが商品をつかみ、トラックバースへ運搬するまでを全自動化した。
⇒高齢化・人手不足対応

ものづくり補助金 省力化(オーダーメイド)枠(17次公募)の追加要件を徹底解説

ものづくり補助金 省力化(オーダーメイド)枠(17次公募)では、基本要件に加えて以下の追加要件を満たす必要があります。
労働生産性2倍以上の事業計画を策定
補助金内定後に実施する補助事業において、3年から5年の事業計画期間内に設備投資前の状態と設備投資後の状態を比較して「労働生産性が2倍以上になる事業計画を策定する」という条件が追加要件に盛り込まれました。

労働生産性とは「付加価値額÷(労働人数×労働時間)」となりますが、この計算結果が設備導入前と比べて設備導入後では2倍になっていなければなりません。

なお、付加価値額の算出が困難な場合には、生産量で計算します。また、完全自動化の場合は、(労働人数×労働時間)を便宜的に「0.1」にするとあります。つまり、完全自動化の取り組みは、労働生産性が10倍になったと言えるということになります。
投資回収可能な事業計画の策定
投資回収可能な事業計画の策定も明示することが追加要件に盛り込まれました。つまり3年から5年の事業計画期間内に、労働コストが削減できた分で設備投資額を回収できることが説明できなくてはなりません。

回収するための原資は自動化によって削減できた「削減工数×人件費単価」で求めることができ、これがいわゆる労働コストとなります。つまり、この削減できた分の労働コストで設備投資額を回収できることの証明をする必要がある、ということになります。

これらの数値を以下の公式に当てはめて計算すると、おおよその投資回収年数を割り出せますので、割り出せた数値が3年から5年の間に収まるようにします。

■投資回収年数=投資額÷(削減工数×人件費単価)
外部SIerの活用について
補助事業を実施するにあたって、自社独自の専用システムを外部SIer(システムインテグレータ)に依頼する場合は、事業計画期間である3年から5年の保守及びメンテナンス契約を締結する必要があります。外部SIer(システムインテグレータ)に依頼せず、自社で開発を行う場合はこの限りではありません。

この要件については、申請時ではなく、事業終了後の実績報告時点で確認されることになっています。
金融機関からの確認書について
設備投資の資金調達として、金融機関から借り入れを予定している場合は金融機関からの確認書を事前にもらう必要があります。採択前に余裕を持って金融機関に「ものづくり補助金 省力化(オーダーメイド)枠」の事業計画を行う旨の相談を行い、確認書を発行してもらえるように手配します。金融機関からの借り入れを行わず、設備投資資金を自社で用意できる場合はこの限りではありません。
省力化(オーダーメイド)枠ならではの審査項目に注目
ものづくり補助金 省力化(オーダーメイド)枠(17次公募)では従来までの「技術面」「事業化面」「政策面」などの書類審査の他に「口頭審査」が加わりました。また技術面と事業化面においても省力化(オーダーメイド)枠のみの条件として、新たな条件が追加されています。
技術面における追加審査内容
上項目「ものづくり補助金 省力化(オーダーメイド)枠(17次公募)の対象事業を徹底解説」でも解説した通り、省力化(オーダーメイド)枠では自社が導入しようとする設備がオーダーメイドで、なおかつ革新的なシステムである必要があります。そのため審査内容では以下の点が重視されます。
いずれも革新的、革新性といったものが重要なポイントとなってきます。事業化面における追加審査内容
事業化面の審査においては基本的に従来までとあまり変わりませんが、ひとつだけ追記されている審査条件があります。それが「事業内容と費用の整合性」です。事業の費用対効果があるか否かといったことと合わせて、事業内容と費用に整合性が取れているかといったことが審査内容に追加されています。

つまり、申請した補助金が「当該事業の実施に本当に必要不可欠なのか」ということです。例えば「せっかく補助金を申請するのだから、ついでにあれも追加しよう、これも追加しよう」といった具合に、補助対象経費に不要なものを色々追加すると減点対象となってしまう可能性があります。こういったことから、補助金の申請には本当に事業実施に必要不可欠なものだけを計上するようにします。
追加された口頭審査
ものづくり補助金 省力化(オーダーメイド)枠(17次公募)では「口頭審査」が導入されました。補助金の申請金額が一定規模以上の場合にオンラインで口頭審査を行うというものです。

この一定規模という基準は明示されていませんので詳細は分かりません。そのため事務局から連絡が来たときのために、自社が行う事業についてしっかり応対できるようにしておく必要があります。

口頭審査期間:2024年4月1日(月)~2024年4月12日(金)

口頭審査を受ける場合、応対するのは企業の代表者や取締役などでなければなりません。外部コンサルタントなどが応対したり、同席したりすることはできませんので、代表者や担当者が事業内容についてしっかり把握し、応対できるようにしておく必要があります。

まとめ

本記事では「ものづくり補助金 省力化(オーダーメイド)枠(17次公募)」について解説しました。今回の補助金枠では「革新的」「デジタル技術の導入」といった点に加え、「自社専用でのシステム等の構築」に重点が置かれました。補助金額も大幅に引き上げられ、中小企業の人手不足の現状を政府は深刻に受けとめています。今回の補助金制度を利用して省力化に取り組みたいという事業者の方は、ぜひ一度、認定支援機関にご相談ください。
著者

ものづくり補助金編集部

シェアビジョン株式会社