はじめに
ここでは、対象になる経費・ならない経費について、整理していきましょう。
省力化(オーダーメイド)枠で補助対象となる事業とは
省力化(オーダーメイド)枠は、従来の補助金制度では支援しきれなかったニーズに応えるべく、創設された新たな申請枠です。人手不足の解消に向けて、デジタル技術等を活用した専用設備(オーダーメイド設備)の導入等が対象となります。
デジタル技術とは、ICTやIoT、AI、ロボットやセンサー等が該当しますが、ロボット単体の導入などではなく、外部のシステムインテグレータ(SIer)との連携などによりロボットシステム等を構築する必要があります。
具体的には、熟練技術者が手作業で行っていた組立工程に、システムインテグレータ(SIer)と共同で開発したAIや画像判別技術を用いた自動組立ロボットを導入し、完全自動化・24時間操業を実現。組立工程における生産性が向上するとともに、熟練技術者は付加価値の高い業務に従事することが可能となるといった、活用例が挙げられています。
そのため、17次公募の省力化(オーダーメイド)枠では、以下の審査ポイントを押さえた事業内容でなければ、採択される見込みは低いと言えるでしょう。
システム開発については汎用的に利用できるパッケージシステムを元に、顧客の希望に合わせて機能を追加するなどのカスタマイズを行う開発方式や、システムやソフトウェアをゼロからオーダーメイドで開発する開発方式となっており、オーダーメイドの取組になっているか。
人手不足の解消に向けて、デジタル技術等を活用した専用設備(オーダーメイド設備)の導入等により、革新的な生産プロセス・サービス提供方法の効率化・高度化を図る取り組みに必要な設備・システム投資等となっているか。
この要件が押さえられていることを確認できたら、何が補助対象経費になって、何が補助経費にならないかを確認していきましょう。
補助対象経費の詳細区分について解説
機械装置・システム構築費
技術導入費
専門家経費
運搬費
クラウドサービス利用費
原材料費
外注費
知的財産権等関連経費
機械装置・システム構築費とは、ものづくり補助金の中心となる補助対象で、事業で利用する機械装置や工具・器具、ソフトウェアやシステムに関する経費が該当します。
ソフトウェアやシステムについては、補助対象外と認識されている方もいらっしゃるので、注意が必要です。
公募要領には、下記のとおり記載があります。
専ら補助事業のために使用される機械・装置、工具・器具(測定工具・検査工具、電子計算機、デジタル複合機等)の購入、製作、借用に要する経費
専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築、借用に要する経費
①若しくは②と一体で行う、改良・修繕又は裾付けに要する経費
しかし、借用(リース・レンタル)は交付決定から補助事業終了まで(最長10ヶ月)が対象になります。その期間を超えて借用する場合は、契約上の金額全てを補助してもらえるわけではないことを念頭に置いて、申請しましょう。
なお、補助対象経費全般にわたる必須事項として、「必ず単価50万円(税抜き)以上の機械装置等を取得して納品・検収等を行う」ということが定められています。また、同一代表者・役員が含まれている事業者、資本関係がある事業者を機械装置・システム構築費の発注先とすることはできません。加えて、本事業で購入する機械装置等を担保に金融機関から借入を行う場合は、事務局への事前申請が必要です。なお、担保権実行時には国庫納付が必要です。
✕ 開発要員などの人件費は補助対象経費になりません。
ソフトウェアや機械設備の制作に要する費用も対象となることを先述しましたが、申請者である事業者の従業員に支払う人件費は対象となりません。
一方、外部の開発業者に委託する場合の外注費は対象となります。
よって、自社内での従業員による開発の場合は補助額が少なくなる可能性があります。
✕ 事務用パソコン・タブレット・スマートフォンなど汎用性があり、目的外使用になり得るもの
ものづくり補助金の対象となる機械装置・システム構築費は、対象事業のために使用することが明確に確認・区別できるものとなります。
そのため、パソコン・タブレット端末・スマートフォンなどの汎用性が高く、対象事業を区別することが難しい設備は補助の対象となりません。
上記に限らず、自動車やプリンタなど、汎用性が高い設備については補助対象外となります。
△ 改良・修繕、据付工事費も補助対象経費
改良・修繕とは、本事業で購入した機械設備の機能を高める・又は耐久性を増すために行うものが対象となります。そのため、本事業で購入したもの以外に行う改良、修繕費用はものづくり補助金の対象外です。
また、同様に据付け工事の対象となるのは、本事業で購入した機械・装置の設置と一体で捉えられる軽微なもののみが対象となります。その他で購入したものの据付工事費はものづくり補助金の対象となりませんし、また、据付工事であっても、設置場所の整備工事や基礎工事は補助対象とはなりません。
✕ 不動産の購入費・工場建屋、構築物、簡易建物(ビニールハウス、コンテナ、ドームハウス等)の取得費用
ものづくり補助金では、不動産の購入費および建物の取得に係る費用は補助対象になりません。
✕ 太陽光発電を行うためのソーラーパネル
再生エネルギーの発電を行うための発電設備やその附属設備などは補助対象になりません。
✕ 自動車等の車両の購入費・修理費・車検費用は対象外
△ 公道を自走することができない車両は対象となる
ものづくり補助金では、基本的に車両の取得に係る費用は補助対象外となります。しかし、事業所や作業所内のみで走行し、公道を自走することができないカートやブルドーザー等(ナンバープレートがない車両)は、取り組みに必要なものであると判断されれば、補助対象となります。
△ 中古品も補助対象となるが注意が必要
ものづくり補助金では、2022年より購入する機械装置が中古品であっても対象となるようになりました。
しかし、中古品には厳しい制限があり、3者以上の中古品流通事業者から型式や年式が記載された相見積もりを取得しなければなりません。
この条件をクリアすれば、中古市場において広く流通していない中古機械設備など、その価格設定の適正性が明確でない中古品の購入費でも補助対象となります。
②技術導入費
本事業の実施に必要な知的財産権等の導入に要する経費
上限額は、補助対象経費総額(税抜き)の3分の1となっています。また技術導入費支出先に専門家経費、外注費を併せて支払うことはできません。
③専門家経費
本事業の実施のために依頼した専門家に支払われる経費
)や国内旅費等の経費を補助対象とすることができます。
ただ、価格の妥当性を証明するために複数の見積書を取得すること、1日5万円を上限とすること、外注費と専門家経費の相手先は同一にできないことなど、諸々注意点があります。
※専門家への謝金単価は、以下の通りです(消費税抜き)。
大学教授、弁護士、弁理士、公認会計士、医師:1日5万円以下
大学准教授、技術士、中小企業診断士、ITコーディネータ:1日4万円以下
補助金の応募申請時に事業計画書の作成を支援した者は、専門家経費の補助対象外となります。
④運搬費
運搬料、宅配・郵送料等に要する経費
⑤クラウドサービス利用費
クラウドサービスの利用に関する経費
⑥原材料費
試作品の開発に必要な原材料及び副資材の購入に要する経費
終了時には使い切ることを原則とします。また、原材料費を補助対象経費として計上する場合は、受払簿(任意様式)を作成し、その受払いを明確にするとともに、試作・開発等の途上において発生した仕損じ品やテストピース等を保管(保管が困難なものは写真撮影により代用)しておく必要があります。
⑦外注費
新製品・サービスの開発に必要な加工や設計(デザイン)・検査等の一部を外注(請負、委託等)する場合の経費
本事業で開発・導入した製品・サービス及びシステム構築に係るサイバーセキュリティ対策のために、ペネトレーションテスト(侵入テスト)を実施するための費用や、アプリケーションやサーバー、ネットワークに脆弱性がないかを診断する脆弱性診断(セキュリティ診断)も対象となります。ただし、市販のウイルスソフトの購入費については補助対象外となります。
⑧知的財産権等関連経費
新製品・サービスの事業化に当たって必要となる特許権等の知的財産権等の取得に要する弁理士の手続代行費用、外国特許出願のための翻訳料等の知的財産権等取得に関連する経費
なお、知的財産権等関連経費を使用できるのは、本事業の成果に限定されます。
本事業の成果と関係なく、別途で発明したものなどは補助対象に含めることができません。
また、ものづくり補助金の事業期間内に出願手続きを完了していない場合も、補助対象にはなりませんので注意が必要です。
補助対象外とならないために発注・支払い時期に要注意!
また、補助金交付候補者として採択後、交付申請手続きの際には、本事業における発注先(海外企業からの調達を行う場合も含む)の選定にあたって、入手価格の妥当性を証明できるよう見積書を取得する必要があります。さらに、単価50万円(税抜き)以上の物件等については原則として2社以上から同一条件による見積をとることが必要です。したがって、申請の準備段階にて予め複数者から見積書を取得いただくと、採択後、円滑に事業を開始いただけます。ただし、発注内容の性質上2社以上から見積をとることが困難な場合は、該当する企業等を随意の契約先とすることができます。その場合、該当企業等を随意契約の対象とする理由書が必要となります。
まとめ
ものづくり補助金、省力化(オーダーメイド)枠への申請を検討されている方は、一度認定支援機関にご相談ください。
ものづくり補助金編集部
シェアビジョン株式会社
認定支援機関(認定経営革新等支援機関※)である、シェアビジョン株式会社において、80%以上の採択率を誇る申請書を作成してきたメンバーによる編集部が監修・執筆しています。
当社は、2017年の会社設立以来、ものづくり補助金や事業再構築補助金等の補助金申請サポートをはじめとしたコンサルティングサービスを提供してまいりました。『顧客・従業員のビジョンを共有し、その実現をサポートすることで社会の発展と幸福を追求する』を経営理念とし、中小企業の経営者のビジョンに寄り添い、ビジネスの課題を解決するための手助けをしています。支援してきたクライアントは1,300社以上、業界は製造業、建設業、卸売業、小売業、飲食業など多岐に渡ります。このブログでは、中小企業の経営者にとって有益な情報を分かりやすくお届けしてまいります。
※認定経営革新等支援機関とは?
中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にあると国が認定した経営相談先です。全国各地に3万箇所以上の認定支援機関があり、税理士、税理士法人、公認会計士、中小企業診断士、商工会・商工会議所、金融機関、経営コンサルティング会社等が選出されています。認定支援機関を活用することで、補助金申請だけでなく、財務状況、財務内容、経営状況に関する調査・分析までを支援するため、自社の経営課題の「見える化」に役立ちます。