事業再構築補助金 製造業が申請する場合の注意点

2022/04/26
今回は、製造業が事業再構築補助金を申請する場合の注意点について解説します。

事業再構築補助金は、設備投資等の支援を受けられる補助金ですが、単に「コロナ禍で社内売上が減少した」「これまで製造していた製品等を増産する」「同じ設備をもう1台追加する」といったような場合においては、申請の対象にはなりません。 

申請要件の一つである製品などの新規要件として、事業再構築指針の手引きにも「過去に製造等した実績がないこと」と明記されています。
例えば、前述の例以外にも、
などは、該当しないとされています。

このようにたくさんの非該当例が列挙されると、申請するハードルは高いのではないかと、考えてしまうかもしれません。しかし、そのようなことはありません。 
これまで製造した実績のない製品にチャレンジする場合であれば、要件を満たすと考えられます。また、過去の実績の基準は5年程度を目安とするとされています。 
例えば、試作のみでこれまでに販売や売上実績がないケース、テストマーケティングなど実証的に行ったことはあるものの継続的な売上には至っていないケースであって、更なる追加の改善等を通じて事業再構築を図る場合は「過去に製造等した実績がない場合」に含まれます。 
なお、「新規性」とは、事業再構築に取り組む中小企業等自身にとっての新規性であり、世の中における新規性(日本初・世界初)ではありません。2020年4月以降に新たに取り組んでいる事業については、新規性を有するものとみなされます。

また、上記の製品の新規性要件とともに、市場の新規性要件も求められます。これは、「既存製品等と新製品等の代替性が低いこと」と明記されています。 
既存の製品等とは別の製品等であっても、対象とする市場が同一である場合は市場の新規性要件を満たしません。 
市場の新規性要件を満たすためには、新製品等を販売した際に、既存製品等の需要が単純に置き換わるのではなく、売上が販売前と比べて大きく減少しないことや、むしろ相乗効果により増大することを事業計画において示す必要があります。 
ただし、こちらにおいても同様に、事業再構築に取り組む中小企業等自身にとっての新規性であり、世の中における新規性(日本初・世界初)ではありません。

申請にあたり、正しく申請要件を理解し、適切な申請枠(新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換等)にて申請を行うことが、採択のカギとなります。しかしながら、これらの注意点は「補助事業構築指針の手引き」等にも記載されているものの、膨大な量の手引きをよく読んで、手引きに沿って手続きを行うことは簡単ではありません。通常の業務を行いながらの手続きは負担が大きいため、認定支援専門機関等へ相談されることをお勧めします。
著者

船着 貴弘

シェアビジョン株式会社取締役