そこで今回は事業再構築補助金とものづくり補助金との制度の違いについて解説します。
各制度の違いを下記の観点から解説します。
予算規模
目的
申請要件
対象者
補助額・補助率
補助対象経費
予算規模
もともと予算規模に関しては事業再構築補助金の方がはるかに大きく、令和二年度第三次補正予算では1兆1,485万円が計上されており、これまで総額2兆3000億円の予算が計上されています。
目的
「ポストコロナ・ウィズコロナの時代の経済社会の変化に対応するため、中小企業等の思い切った事業再構築を支援することで、日本経済の構造転換を促すこと」
つまり、新たな事業を構築する・事業を再編するという新しい取り組みに対しての補助金といえるでしょう。
一方で、ものづくり補助金の目的は下記の通り公表されています。
「革新的製品・サービスの開発又は生産プロセス等の改善に必要な設備投資等を支援します。また、特に、大幅な賃上げに取り組む事業者へのインセンティブを強化するとともに、海外でのブランド確立などの取組への支援を強化します」
ものづくり補助金は既存の事業の生産性をあげるという既存の取り組みに対しての補助金といえます。
つまり、端的に言えば既存の事業を伸ばしたい場合はものづくり補助金、新たな事業に挑戦したい場合は事業再構築補助金が適しているといえるでしょう。
申請要件
事業再構築補助金は、以下の要件を満たした事業者でなければ申請や受給ができません。
1. 事業者自身で事業再構築指針に沿った事業計画を作成し、認定経営革新等支援機関の確認を受けること。
補助金額が3,000万円を超える案件は金融機関(銀行、信金、ファンド等)の確認も受けること。(金融機関が認定経営革新等支援機関を兼ねる場合は、金融機関のみで構いません。)
2. 付加価値額を向上させること
補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0~5.0%(申請枠により異なる)以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0~5.0%(申請枠により異なる)以上増加させることが必要です。
この2点は必須ですが、さらに以下の8点のうち、申請枠ごとに定められた要件を満たさなくては申請することが出来ません。
製品等(製品・商品等)の新規性要件
市場の新規性要件
新事業売上高10%等要件
売上高構成比要件
組織再編要件
その他の事業再構築要件
海外製造等要件
導入設備の先進性要件
事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加
給与支給総額を年率平均1.5%以上増加
事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にする
→この要件をすべて満たす3~5年の事業計画を策定していること。
つまり、事業再構築補助金の方が認定支援機関の協力や事業の再構築などの要件があるため、申請要件が厳しく、該当するかどうかの詳細の確認が必要となります。
対象者
中堅企業とは資本金が10億円未満でなおかつ中小企業よりも大きな企業のことを指します。つまり、ものづくり補助金で対象とならなかった中堅企業はチャンスといえます。
補助額・補助率
中小企業の場合、事業再構築補助金の成長枠(旧・通常枠)は補助率2/3、補助額が100万円~7,000万円となっています。
一方で、ものづくり補助金の通常枠は補助率が1/2(小規模・再生事業者は2/3)、補助額は1,250万円が上限となっています。
事業再構築補助金のグリーン成長枠の場合は、エントリー枠で最大8,000万円、スタンダード枠で最大1億円支給されることに対し、ものづくり補助金のグリーン枠では、エントリーで1,250万円、スタンダードで2,000万円、アドバンスで4,000万円がそれぞれ最大の支給額です。
補助対象経費の違い
事業再構築補助金の補助対象経費は主に下記の通りです。
建物費 ※建物の新築については必要性が認められた場合に限る。
機械装置・システム構築費 (リース料を含む)
技術導入費
専門家経費
運搬費
クラウドサービス利用費
外注費
知的財産権等関連経費
広告宣伝・販売促進費
研修費 ※上限額=補助対象経費総額(税抜き)の3分の1
廃業費(産業構造転換枠に申請し、既存事業の廃止を行う場合のみ)※上限額=補助対象経費総額の2分の1又は2,000 万円の小さい額
機械装置・システム構築費=単価50万円(税抜き)以上の設備投資を行うことが必須
技術導入費※上限額=補助対象経費総額(税抜き)の3分の1
専門家経費※上限額=補助対象経費総額(税抜き)の2分の1
運搬費
クラウドサービス利用費
原材料費
外注費※上限額=補助対象経費総額(税抜き)の2分の1
知的財産権等関連経費※上限額=補助対象経費総額(税抜き)の3分の1
比較してみると、事業再構築補助金では大きな支出を伴いやすい建物費、広告宣伝費・販売促進費等が対象となるほか、研修費も補助の対象となることが判ります。
以上の違いを参考にして、事業再構築補助金もしくはものづくり補助金、どちらの補助金に申請するか検討する必要があります。
なお、事業再構築補助金とものづくり補助金は別事業であれば、併用が可能となっています。例えば「事業再構築補助金で新しい事業に取り組みたい。同時にものづくり補助金で既存事業の強化を図りたい」というケースは両方の補助金を申請できますので、お知りおきください。
船着 貴弘
シェアビジョン株式会社取締役
1976年12月生まれ。 2000年立命館大学卒業後、株式会社エフアンドエム入社(東証JASDAQ上場)。主に税理士・公認会計士向けサービスの営業企画部門担当及びファイナンシャル・プランナー(FP)部門担当。真の顧客のためのアドバイスや金融商品の取扱いを広めることに社会的意義を見出す。その後、FP部門の譲渡に伴い、2015年に譲渡先である総合保険代理店へ。保険代理店においても、継続しFP部門担当を務めるとともに、業務基幹システムの導入等を経営企画室にて行う。2017年に総合保険代理店を退社し、シェアビジョン株式会社取締役に就任。現在に至る。