この記事の注目ポイント
ものづくり補助金、IT導入補助金、省力化投資補助金(一般型)の3つの補助金で最賃引上げ要件が緩和
改定後の地域別最低賃金未満の従業員が30%以上いる事業者は、補助率アップのチャンス
改定後の地域別最低賃金未満の従業員が30%以上いる事業者は、加点措置による採択可能性アップ
事業場内最低賃金を63円以上引き上げる事業者にも加点措置が追加
はじめに
そこで国としても、中小企業や小規模事業者が、持続的な賃上げ原資を確保できるよう支援策を強化するとしています。9月9日には、経済産業省より、価格転嫁対策や補助金、税制面での支援策が公表されました。
賃上げ原資確保に向けた価格転嫁対策の強化
① 改正下請法(取適法)・振興法の着実な執行
② 発注側企業等における取引慣行の改善
③ 幅広い業界での取引適正化の要請・働きかけの継続賃上げ原資確保に向けた補助金等による支援
① 地域の社会機能を担う小規模事業者の販路開拓等を支援する持続化補助金等
② 賃上げ促進税制による赤字企業も含めた賃上げ支援
③ 100億企業等に対する成長加速化支援
④ 健全な新陳代謝や経営資源の有効活用を進める事業承継、M&A、再生支援等中小・小規模企業の生産性向上における賃上げ支援機能の強化
① ものづくり補助金、IT導入補助金、省化投資補助金(一般型)の要件緩和
② ものづくり補助金、IT導入補助金、省力化投資補助金(一般型)の審査での優遇
③ 周知・相談時の厚生労働省との連携強化
ものづくり補助金は次回22次公募から適用の可能性大
ものづくり補助金は、現在21次公募が開始されており、10月3日から申請開始、10月24日が申請締切となっています。現段階で、どの公募から適用されるかは明言されていませんが、公募途中で要件が変更になることは考えにくいでしょう。一方で、地域別最低賃金の改定は10月以降各都道府県で順次発効となり、国としてもスピーディな支援を目指していることを考えると、次回22次公募から適用されるのではないかと予想しています。
ものづくり補助金22次公募 スケジュール予想
公募開始 | 2025年10月下旬(予想) |
申請開始 | 2026年1月上旬(予想) |
申請締切 | 2026年1月下旬(予想) |
採択発表 | 2026年4月下旬(予想) |
最低賃金引上げ特例の対象企業が拡大
≪現行≫
2023年10月~2024年9月までの間で、3ヶ月以上、地域別最賃+50円以内で雇用している従業員が、全従業員数の30%以上いること
≪改定後≫
一定期間において、3ヶ月以上改定後の地域別最賃未満で雇用している従業員が、全従業員数の30%以上いること
現在、東京都の最低賃金は1,163円、改定後は1,226円です。
改定前では、一定の期間において1,163円+50円=1,213円以下で雇用している従業員が30人以上いなければ、対象になりませんでした。
今回の要件緩和により、東京都の改定後の最低賃金1,226円以下で雇用している従業員が30人いれば、補助率引上げの対象となります。
この要件緩和により、これまでの制度では特例適用対象外でも、新たに対象となる場合もあるので、改めて自社の状況を確認してみてください。

加点項目の追加による審査での優遇
≪新たに導入される加点措置≫
①上述の最低賃金引上げ特例の対象となっている(一定期間において、3ヶ月以上改定後の地域別最賃未満で雇用している従業員が、全従業員数の30%以上いる)事業者
②一定期間において、事業場内最賃を「全国目安で示された最低賃金の引上げ額(63円)」以上の賃上げをする事業者
②について補足すると、地域別最低賃金は、まず中央最低賃金審議会が示す引上げ目安をもとに、各地方最低賃金審議会で話し合われ、最終的には各都道府県の労働局長が具体的な額を決定します。この目安額は、地域によって63円と64円で提示されていましたが、多くの地域で目安額以上の引上げで決定しました。
今回の大幅賃上げの発表を受け、厳しい経営状況においても、全国的な最低賃金の引上げ幅以上に賃上げの努力を行った企業を応援するため、②の要件を満たす場合に、採択審査において加点措置を実施されることになりました。
この②の項目は、事業場内最低賃金に関する加点です。①に該当しない事業者であっても、事業場内最低賃金の引上げによって、加点を得ることができます。

まとめ
賃上げ原資の確保のためには、価格体系の見直しや取引先との交渉、販路の新規開拓など、収益基盤を強化するアプローチのほか、設備投資を通した業務効率化等、コスト削減を図ることも大切です。
賃上げによるコスト増加は経営を圧迫する課題ではありますが、冒頭に述べたように、国としても中小企業の賃上げ原資確保に向けた支援に向けて動いています。ものづくり補助金をはじめとした公的支援制度を上手に活用して、企業の成長へつなげていきましょう。
ものづくり補助金編集部
シェアビジョン株式会社
認定支援機関(認定経営革新等支援機関※)である、シェアビジョン株式会社において、80%以上の採択率を誇る申請書を作成してきたメンバーによる編集部が監修・執筆しています。
当社は、2017年の会社設立以来、ものづくり補助金や事業再構築補助金等の補助金申請サポートをはじめとしたコンサルティングサービスを提供してまいりました。『顧客・従業員のビジョンを共有し、その実現をサポートすることで社会の発展と幸福を追求する』を経営理念とし、中小企業の経営者のビジョンに寄り添い、ビジネスの課題を解決するための手助けをしています。支援してきたクライアントは1,300社以上、業界は製造業、建設業、卸売業、小売業、飲食業など多岐に渡ります。このブログでは、中小企業の経営者にとって有益な情報を分かりやすくお届けしてまいります。
※認定経営革新等支援機関とは?
中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にあると国が認定した経営相談先です。全国各地に3万箇所以上の認定支援機関があり、税理士、税理士法人、公認会計士、中小企業診断士、商工会・商工会議所、金融機関、経営コンサルティング会社等が選出されています。認定支援機関を活用することで、補助金申請だけでなく、財務状況、財務内容、経営状況に関する調査・分析までを支援するため、自社の経営課題の「見える化」に役立ちます。