事業再構築補助金は、設備投資等の支援を受けられる補助金ですが、採択されて、補助金を受け取って終わり、というような簡単なものではありません。国の税金で行われている事業ということもあり、不正がないよう細かく確認するための書類の提出や、事業が申請した計画通りに実行されているかを5年にわたって報告する義務があります。
これらの手続き、報告の義務は、飲食店に限ったことではありませんが、飲食店が行う事業再構築の取り組み内容は、導入する設備の種類や数が多く、それに伴い必要となる書類も多くなるため、手続きも煩雑になる傾向があります。
国が行う補助金の制度では、交付決定前に設備の発注や導入を行った場合は、補助金の交付対象になりません。事業再構築補助金も原則としては同様ですが、コロナ禍において影響を受けた事業者を速やかに支援するため、事前着手という制度があります。事前着手が承認されると、令和3年12月20日以降に発注等を行った経費に関しては、交付決定前であっても補助対象経費とすることができます。ただし、事前着手が承認された場合でも、補助金の採択が約束される訳ではありません。
飲食店は、この事前着手制度を利用するケースが多いのですが、補助金のルールに沿った手続きを踏んでいないと、交付申請で差し戻しとなり、予定していた交付金額が受け取れないということもあります。
例えば、交付申請で提出する見積書、相見積書が用意できない、用意できたとしても必要な記載が漏れていて取り直しが求められることは往々にしてあります。事前着手をしていると、購入してから交付申請時までに長期間が経過しており、他社への依頼が難しくなるからです。また、補助金の支払いは、基本的に銀行への現金振込で行う必要がありますが、支払いをカードでしたり、ネットショップで購入したりして対象経費と認められないというケースもあります。
また、補助事業の手引きにも記載されていますが、補助金で購入した設備等には管理番号等を記載したラベル等を貼って管理することが求められます。実績報告書には、この管理番号等を記載したラベルを貼付した設備の写真を撮って提出する必要がありますが、飲食店で導入する設備は、種類や数が多いことからも、煩雑な作業となります。
認定支援機関の中には、採択までしか支援していないところもあり、その場合は、報告を含めた書類の準備を全て自社で行うことになります。この事業化状況報告(補助事業完了日の属する年度の終了後を初回として、以降5年間(合計6回)、1年間の事業化の状況や付加価値額の増加状況等について報告)が行われない場合には、補助金の交付取消や返還が求められる場合があることが、公募要領に明記されています。
また、補助事業終了後の事業計画期間内に事業を継続できなくなった場合も、残存簿価相当額等により、補助金交付額を上限として返還が求められます。
これらの注意点は、「補助事業の手引き」にも記載されていますが、70ページを超える手引きをよく読んで、手引きに沿って手続きを行うことは簡単ではありません。多くの飲食店では、経理や総務といった事務手続きを専任で行う担当者がいないことも多く、通常の店舗営業をしながらの手続きは負担が大きいことも念頭に置いておく必要があるでしょう。