ものづくり補助金は今後も継続?令和7年度補正予算閣議決定解説

2025/12/09

この記事の注目ポイント

はじめに

2025年11月28日、政府は「「強い経済」を実現する総合経済対策」の裏付けとなる、令和7年度補正予算案を閣議決定しました。

エネルギー・人件費の高騰、深刻化する人手不足、デジタル化の遅れなど、経営環境が大きく変化する中で、今回の補正予算は“攻め”と“守り”の双方を支える重要な位置づけとなっています。

本コラムでは、今回の補正予算で注目すべき中小企業向け補助金のポイントを整理してお伝えします。

令和7年度補正予算の経済対策関連費は17兆円超

高市政権での経済対策は、①生活の安全保障・物価高への対応、②危機管理投資・成長投資による強い経済の実現、③防衛力と外交力の強化の3本柱で構成されています。

補正予算の一般会計の歳出総額は 約 18兆3,034億円となり、そのうち経済対策関連経費として17兆7,028億円が計上されています。
≪参考≫
財務省 令和7年度補正予算(第1号)の概要

このうち、2.7兆円が経済産業省に割り当てられました。予備費を除く3つの経済対策における予算規模や概要は、次の通りです。

経済産業省関係令和7年度補正予算案

※国庫債務負担行為による複数年度分含めると、3.1兆円

≪参考≫経済産業省関係 令和7年度補正予算案の概要

中小企業支援は1兆円を上回る規模

ここから、中小企業・小規模事業者等関連予算としては総額8,364億円が割り当てられており、前年の令和6年度補正予算に続き、既存基金の活用を含め、1兆円を上回る規模の補正予算が計上されています。

≪参考≫
中小企業庁 令和7年度補正予算案(中小企業・小規模事業者等関連予算)

中小企業・小規模事業者等関連予算としては、「1. 成長投資支援」「2. 生産性向上・省力化投資支援」「3. 伴走支援」「4. 取引適正化」「5. 資金繰り支援」「6. 災害支援」と、6つの項目が挙げられています。

ここでは、中小企業が活用できる補助金との関係が深い、1と2の項目を中心に、経済産業省から発表されているPR資料の内容を含めて、解説します。

≪参考≫令和7年度補正予算案の事業概要(PR資料)中小企業・小規模事業者関連予算抜粋

ものづくり補助金23次公募の行方

ものづくり補助金は、これまでIT導入補助金や持続化補助金と同じ、「中小企業生産性革命事業」の予算の中で実施されてきました。中小企業庁が発表した資料に「ものづくり補助金」という言葉はありませんでしたが、今回の補正予算から、ものづくり補助金の内容は、中小企業生産性革命事業のパッケージからは外れ、既存基金の活用により継続されます。

中小企業支援のための項目① 生産性向上支援の拡充

●中小企業成長加速化補助金の拡充

中小企業成長加速化補助金は、売上高100億円を目指す成長志向型の中小企業の大胆な設備投資を支援するため、令和6年度補正予算から始まった新しい補助金です。令和7年度補正予算でも、中小企業生産性革命推進事業(予算3,400億円)のうちで、2次公募が実施されます。
2次公募では、補助金申請時に100億宣言が公表されていることが必須となります。補助金申請を検討されている事業者の方は、早めに手続きを進めることをお勧めします。

≪参考≫
100億企業成長ポータル 中小企業成長加速化補助金の2次公募に向けた状況について

●大規模成長投資支援

・中堅・中小・スタートアップ企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金
今年は、「中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金」として、3・4次公募が実施されました。
令和7年度補正予算ではスタートアップ企業が追加されています。中堅・中小・スタートアップ企業が、人手不足に対応するための省力化等による労働生産性の抜本的な向上と事業規模の拡大を図るために行う工場等の拠点新設や大規模な設備投資に対して、補助されます。新規公募分として基金2,000億円を措置され、1,000億円程度が100億宣言企業向けに確保されています。
 
ここでも100億宣言企業向けに予算が確保される等、政府が地域の雇用を支える100億企業の創出に力を入れていることが分かります。

・地域企業経営人材確保支援事業給付金
 着実な事業成長等を実行可能な経営体制を整備するため、転籍・兼業・副業・出向等により、中堅・中小・スタートアップ企業が、大企業から経営人材を受け入れた場合に、給付金を支給されます。転籍の場合は、給付上限額 最大450万円(地域によって変動)、兼業・副業・出向の場合は給付上限額 200万円となっています。

中小企業支援のための項目② 生産性向上・省⼒化投資支援

●生産性向上の支援(生産性革命推進事業のうち、デジタル化・AI導入補助金、持続化補助金、事業承継・M&A補助金)

生産性向上に向けて、デジタル化や、販路開拓、事業承継・M&Aに係る設備投資等を後押しするとともに、物価高や米国関税影響を踏まえたソフト支援が実施されます。生産性革命推進事業としては、令和6年度補正予算と同額の3,400億円が措置されています。

これまで、生産性革命推進事業に含まれていた「ものづくり補助金」は、次の項目で記載する新事業進出補助金と同じく既存基金の活用により実施されます。また、IT導入補助金は、デジタル化・AI導入補助金という名称で、これまで同様、ITツールの導入が補助される見込みです。

●革新的製品等開発や新事業進出支援


中小企業等の革新的製品・サービス開発や海外を含む新市場への進出等に係る設備投資等の支援は、既存基金の活用により1,200億円規模で実施されます。現在、第2回公募が実施されている「新事業進出補助金」は継続し、これまでものづくり補助金で支援されてきた革新的製品等開発は、こちらで実施される見込みです。現在、ものづくり補助金22次公募が2026年1月30日申請締切で実施されていますが、そこに申請が間に合わない事業者の方も、次の公募(名称が変わる可能性もあるため23次公募となるかは分かりませんが)があるとして準備を進めると良いでしょう。

●省⼒化投資支援

省力化投資補助金は、既存基金の活用により1,800億円規模が措置されており、補助上限額などが見直され、継続して実施される見込みです。

省力化投資補助金は、2024年にカタログ注文型のみでスタートしましたが、製品登録や販売事業者の登録が進まず、その後、大幅に制度が見直され、2025年から一般型の公募が始まりました。2025年は、第3回公募まで採択発表が行われ、第4回公募まで締切が終わっています。また、2026年2月下旬締切で第5回公募が実施されることが発表されています。
現在は、製品カタログに登録されている製品も増加しており、2026年はカタログ注文型の活用も進むと思われます。

中小企業支援のための項目③ 省エネ補助金

また中小企業に限らず活用できる補助金として、省エネ補助金があります。令和7年度補正予算案では二番目の柱として挙げられている「2.危機管理投資・成長投資による強い経済の実現」のなかで、「(2)エネルギー・資源安全保障の強化」として、予算が計上されています。

①省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費 
工場・事業場全体で大幅な省エネを図る設備更新(先進型設備や省エネ効果の高い設備の組み合わせ導入等)や、脱炭素につながる電化・燃料転換を伴う設備更新等へ支援は、550 億円、国庫債務負担行為を含め 2,275億円規模と、昨年から250億円増加しています。

②省エネルギー投資促進支援事業費補助金 
SIIが予め定めたエネルギー消費効率等の基準を満たし、登録されている指定設備の導入ができる「省エネ補助金(Ⅲ 設備単位型)」が含まれるこちらの補助金には、125 億円、国庫債務負担行為を含め 175 億円が割り当てられ、継続して支援が行われる見込みです。具体的には、省エネ性能の高いユーテリティ設備、生産設備等への更新等が支援されます。

おわりに

令和7年度補正予算が閣議決定され、中小企業支援策が本格的に動き出しました。物価高騰や人手不足、賃上げ要求の高まりなど、中小企業を取り巻く環境は、厳しさを増しています。そのような中、政府でも中小企業支援をはじめとした、経済支援策を積極的に打ち出しています。中でも、100億企業の創出について、今回の補正予算案に加え、令和7年度税制改正の流れからも、支援を強化していることが見て取れます。

製造業を中心に、中小企業の設備投資支援で活用されてきた「ものづくり補助金」についても、継続して実施されることがわかりました。今年度実施された補助金は、来年度も概ね継続して実施されるものと考えて、自社で活用できるか否かの検討を進めてよいでしょう。

これらの補正予算案は現在、臨時国会で審議されており、政府では会期中(12月17日)での成立を目指しています。
予算成立後、それぞれの補助金についての詳細が発表されていきますので、詳細が分かり次第、またこちらでもお知らせしていきます。
著者

ものづくり補助金編集部

シェアビジョン株式会社