「ものづくり補助金」の歴史、傾向と対策

2023/02/22

ものづくり補助金

ものづくり補助金とは、中小企業等による生産性向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援する補助金です。2013年に「ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金」という名前で始まり、以降名前を変えながら補正予算額で毎年継続して実施されているこの補助金が、総じて「ものづくり補助金」と呼ばれています。この記事では、「ものづくり補助金」のこれまでの歴史と、これから考える傾向と対策について説明します。

これまでの歴史

・H24.「ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金」

ものづくり・商業・サービスの分野で環境等の成長分野へ参入するなど、革新的な取組にチャレンジする中小企業・小規模事業者に対し、地方産業競争力協議会とも連携しつつ、試作品・新サービス開発、設備投資等を支援することを目的とした、平成24年度補正「ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金」が公募されました。補助上限額が1,000万円となり、この時は設備投資なしの試作品開発も可能な補助金でした。

・H25.「中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業」

平成25年度補正「中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業」という名称に変更になり、製造業だけでなく、サービス業や卸・小売業なども申請できる補助金になり、革新的なものづくり・サービスの提供等にチャレンジする中小企業・小規模事業者に対し、地方産業競争力協議会とも連携しつつ、試作品開発・設備投資等を支援します。
「ものづくり技術」の他に「革新的サービス」という類型が新設され、「成長分野型」、「一般型」、「小規模事業者型」の3種の型に対し、それぞれ「ものづくり技術」「革新的サービス」の2類型で応募が可能になりました。「成長分野型」と「一般型」は設備投資が必要であり、「小規模事業者型」は設備投資が対象外となっています。

・H26.「ものづくり・商業・サービス革新補助金」

平成26年度補正 「ものづくり・商業・サービス革新補助金」という名称になり、国内外のニーズに対応したサービスやものづくりの新事業を創出するため、認定支援機関やよろず支援拠点等と連携して、革新的な設備投資やサービス・試作品の開発を行う中小企業を支援します。
新たに「ものづくり技術」、「革新的サービス」、「共同設備投資」の3類型となり、「ものづくり技術」はその中で、「一般型」と「コンパクト型」に分けられ、「コンパクト型」のみ設備投資不可、その他は設備投資が必要となりました。

・H27.「ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金」

平成27年度補正「ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金」という名称になり、国内外のニーズに対応するため、認定支援機関と連携し、革新的なサービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行う中小、小規模事業者の支援をします。
「革新的サービス・ものづくり開発支援」「サービス・ものづくり高度生産性向上支援」の2つの取り組みとなり、「革新的サービス・ものづくり開発支援」は「一般型」と「小規模型」の2つに分けられます。国内に開発拠点をもつ中小企業が対象者となり、いずれも「認定支援機関」による確認が必要です。申請数24,011件に対し7,729件が採択され、採択率は32.1%でした。

・H28.「革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金」

平成28年度補正「革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金」という名称になり、経営力向上のための革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行う中小企業・小規模事業者の設備投資を支援し、経済基盤を強化していきます。
対象類型として、「革新サービス」と「ものづくり技術」があり、この2種の類型それぞれに、上記の3種の事業類型及びその細分類があり、「小規模型」は、「設備投資のみ」と「試作開発等」の2つに分けられます。「第四次産業革命型」は、「IoT・AI・ロボットを用いた設備投資」を行うことが要件となっており、「小規模型」の「試作開発等」以外は、設備投資が必要です。加点ポイントとしては、TPP加盟国等へ海外展開することやIT化に取り組むことが挙げられ、申請数15,547件に対し6,157件が採択され、採択率は39.6%でした。

・H29.「ものづくり・商業・サービス経営力向上支援事業」

平成29年度補正「ものづくり・商業・サービス経営力向上支援事業」という名称になり、生産性向上に向けて革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援し、国内経済基盤を強化していきます。
認定支援機関の全面バックアップが必須であり、また、いずれの事業も専門家を活用する場合、補助上限額が30万円アップの措置があります。申請数17,275件に対し9,518件が採択され、採択率は55.0%でした。

・H.30「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」

平成30年度補正「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」という名称になり、中小企業・小規模事業者が取り組む生産性向上を目的とした革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を補助し、足腰の強い経済を構築します。
一般型、小規模型共に、補助上限額30万円アップや補助率2/3へアップの優遇措置があります。認定支援機関の全面バックアップを得た事業を行う中小企業・小規模事業者等が対象者となっており、申請数14,927件に対して、7,468件が採択され、採択率は50.0%でした。

・H.31「ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金」

平成31年度補正「ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金」という名称になり、中小企業・小規模事業者及びNPO等が連携して取り組む、生産性向上や地域経済への波及効果拡大につながる革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援します。
認定支援機関の全面バックアップ受けた中小企業・小規模事業者やNPOの連携体で2から10者で構成されていることが助成金・補助金の対象者となっており、申請数139件344者に対し96件238者が採択されました。

・R1.「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」(1次)

令和元年度補正「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」として、中小企業・小規模事業者等が行う革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善のための設備投資や、中小企業・小規模事業者グループによる新規ビジネスモデルの構築を支援し、生産性向上を図り取り組みです。
一般型とグローバル型は加点要件があります。過去3年間にものづくり補助金に採択されている場合は、原点対象となり、採択されにくくなります。また、新型コロナウイルスの影響を受けた事業者には、特別措置が設けられています。申請数2,287件に対し1,429件が採択され、採択率は62.5%でした。

・R1.「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」(12次)

令和元年度補正・令和三年度補正「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」として、中小企業・小規模事業者等が今後の働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入等に対応するために取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行い生産性を向上させるための設備投資等を支援します。
対象となる類型は2種あり、加えて一般型には4種の枠があります。いずれも単価50万円以上の設備投資が必須です。一般型の申請数が3,200件に対し1,885件が採択され、採択率が58.9%でした。また、グローバル展開型は、申請数56件に対し22件採択され、採択率が39.3%でした。

2次締切から11次締切までの採択結果(一般型)は、下記のとおりです。
申請数は1次締切から4次締切まで増え続け、ピークでは1万件を超えました。その後、約5,000件前後で推移しています。採択率は1次締切では62.5%と高かったものの、応募者数の増加に従って低下し、4次締切分31.5%となりました。その後徐々に採択率を伸ばし、60%を超えることが増えて高い採択率を維持しています。

以上のことから、ものづくり補助金は年々変化しており、新しくデジタル枠が新設される等デジタル化にも注力しています。申請数が約5,000件前後で推移しており、採択を勝ち取るには、審査項目をしっかり押さえ、審査項目をしっかり押さえ、加点項目を可能な限り多く確保することが必要です。ものづくり補助金の申請を検討されていましたら、認定支援機関にご相談ください。
著者

石原 景太

シェアビジョン株式会社