事業再構築補助金をはじめとするそもそもの補助金のしくみ

2022/01/20
 そもそもの補助金制度のしくみや基礎知識について、解説します。

 「補助金」というと、漠然と「お金がもらえる制度」と考える方も多いかもしれませんが、これから補助金申請するなら、制度の趣旨を正しく理解する必要があります。それこそが、補助金採択への第一歩となるでしょう。

補助金は政策実現のための支援金
 はじめに、大きな話になりますが、日本政府は常に国内外の課題を検討して、国をよりよくするために政策目標を立て、実行しています。また、経済産業省の外局として中小企業の育成・発展を担う中小企業は、対象を製造業に限らず、現在事業活動を行っている中小企業やこれから事業を起こそうと思っている起業家をさまざまな角度から支援する対策を展開しています。
 しかし当然のことながら、国や地方自治体、公務員だけの力では中小企業の課題を解決するという目標を実現することはできません。そこで政策目標を達成するために、趣旨に合致した事業を選定し、その実行にかかるお金を給付して取り組みを促すのが補助金です。
 国の政策に合致する会社の事業展開・拡大をサポートすることで政策の効果を大きくしていくために、国は補助金を出して企業を支援しています。
 一方、そもそも補助金は税金を原資としているため、当然のことながら規定に従った適正な予算執行が求められます。以下、補助金の3つのポイントを整理します。

1 政策と事業計画が合致するものを
 補助金は国の政策ごとにさまざまなジャンルが募集されています。当然のことながら補助金ごとに制度がめざす目的や趣旨は異なっており、公募の方法、採択の基準、採択後の事業実施方法などもばらばらです。
 前述の通り、補助金は政府が政策を実行するための手段の1つであり、政策に合致する企業を選び、支援する制度です。そのため、補助金ごとの趣旨を把握することが補助金受給への第一歩となります。
 補助金制度の目的と仕組みを確認し、そのうえで自社の事業計画と照らし合わせて合致するものがあったら、その補助金こそ応募するべきものであると言えます。時間と手間をかけて具体的な検討・準備を始める価値があると考えられます。

2 事業費の一部を「後払い」が基本
 多くの補助金は、事業にかかるすべての経費が支払われるわけではなく、公募要領に明記されている「補助の対象となる経費」の一部が補助の対象となります。事業にかかる人件費や事業の成果の広報費まで対象とする制度も、設備しか対象とならない制度もありますので、必ずしもすべての経費が交付されるわけではないので、事前に募集要項なので補助対象となる経費・補助の割合・上限額などを確認しておきましょう。
 また、ほとんどの補助金は事業完了後、事業実施報告書が証拠書類などを確認してからの後払いとなっています。先に事業にかかった費用の全額を立て替え払いする必要があるので、支払を受けるまでのキャッシュフローについて、事前にしっかり計画を立てておきたいものです。

3 3度の審査
 たとえば、事業再構築補助金では、補助金に採択されてから補助金を受けるまでに審査が3度行われます。1度目は補助金の対象となるかどうかを審査する「事業計画書」。一般的に言われている審査とはこのことで、補助金の公募要領に則ってわかりやすくまとめた申請書を提出して審査を受けます。
2度目は、採択が決定してから採択が決定してから申請する「交付申請書」です。最初に提出した申請書をもとに、具体的な実施計画を盛りこみ、作り直して提出します。それが承認されれば、「交付決定」が出て、設備発注などの事業をスタートできます。
 3度目の審査は補助事業完了後です。事業は計画通りに正しく実施されたか、経費は適切に使われていたか、補助対象費用以外のものに支出していないか、などを「補助事業報告書」と添付する証拠書類から確認します。
 確認しておくべきは、補助額が決定するのは「確定検査」と呼ばれる3度目の審査を受けてからということです。つまり、採択された時点では全額を受け取れる確約はありません。
 

補助金と助成金の違い
 少し話は脱線しますが、国や地方自治体から企業に支払われる補助金として、補助金と助成金がまとめて扱われる場合が多いですが、その違いについて解説します。

1 補助金
 補助金は主に経済産業省が主体となり、産業振興や強化すべき政策を推進するために実施する制度です。政策の目的に合致する事業を公募し、審査を経て交付されるので、申請したすべての会社が受け取れるわけではありません。公募期間も数週間から2ヵ月程度と短めに設定されており、期間中に指定の様式で申請書類を提出した場合に審査を受けることができます。審査は「その補助金を活用してどれだけ活性化するか」「政策の目的を達成できるか」など補助金ごとの指標で行われ、その審査基準は公募要領で公表されるのが一般的です。
 補助金は税金を原資としており、金額は数10万~数億円までかなり額が大きいものもあります。なお、補助事業による収益が出た場合には、収益納付という返還義務が発生するものもあるので、事前に調査しておきたいポイントです。

2 助成金
 助成金は厚生労働省が管轄し、主に人への投資に取り組む場合に交付を受けられます。財源は雇用保険料から確保されており、金額は10万円~数10万円程度のものが多いです。
 補助金ほど高額ではありませんが、条件と申請形式を満たしていれば先着順で受給できて、返還義務もありません。複数組み合わせて申請できれば年間数百万円の助成金を受けられるケースもあります。例年数10種類の助成金が募集されるので、うまく情報収集し、条件に合致するものにおいては申請を検討してください。
著者

小嶋 潤

シェアビジョン株式会社