事業再構築補助金 事務局はどんなメンバー?

2021/12/23

1.事務局と補助事業者(基金) 

事業再構築補助金の事業委託先等について解説します。 経済産業省と中小企業庁は2021年2月12日、事業再構築補助金の事務局を決定しました。応募事業者3件の中から選ばれたのは、人材派遣大手パソナグループです。事務局委託費は当初399億円でしたが、緊急事態宣言特別枠が新たに加わるなどしたため、委託費は420億9673万円となっています。パソナは以下のような業務を行います。
一方、1兆円を超える基金を管理する基金設置法人は、独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)です。基金設置法人は、経済産業省と中小企業庁が2回公募したものの、応募はありませんでした。その結果、外部有識者による審査委員会の承諾のうえで複数の団体に対して打診を行い、中小機構に決定しました。中小機構は以下のような業務を行っています。
事務局であるパソナと中小機構は委託契約を締結し、補助金の公募、審査・採択、交付決定に係る業務を担当しています。事業再構築補助金の履行体制は次の通りです。
次に、パソナからの再委託先について解説します。 再委託先は、システム関係、コールセンター関係、広報関係に大別されます。 システム関係で再委託されたのは、日本システムウエア株式会社です。22億円で事業管理システムの構築・改修・保守運営業務、システム操作に関するサポートセンター業務などを担います。 さらにシステム関係の再委託先(2次)としてNSWテクノサービス(クラウドの構築・保守管理業務など)、株式会社ワールドスカイ(セキュリティ診断の企画・設計・管理業務など)、再々委託先(3次)として株式会社レオンテクノロジー(セキュリティ診断の実作業など)と連携しています。コールセンター関係で再委託されたのは、トランスコスモス株式会社です。事業に関する問い合わせ全般を対応するコールセンター業務などを担います。広報関係は株式会社エージーと株式会社ラーニングスクエアに再委託されています。株式会社エージーは、専用サイトの設計・制作・デザインと、事業周知チラシ・パンフレットの制作・デザインなどを担います。イーストクリエイティブに再々委託(3次)され、専用サイトのサーバーの保守・管理、コーディング・保守・管理などを担います。また、株式会社ラーニングスクエアは事業解説動画の制作業務などを担います。

2.事務局採用の経緯 

事業再構築補助金の事務局にパソナが採用された経緯を解説します。令和3年1月28日、中小企業庁経営支援部から、令和2年度「中小企業等事業再構築促進事業」に係る事務局募集要領が発出されました。まず、応募資格は次の要件のすべてを満たす企業・団体等となっています。 
これらの応募要件をクリアし、応募したのは次の3社でした。
この中から、第三者の有識者で構成される委員会で審査が行われ決定しました。なお、応募期間締切後に、必要に応じて提案に関するヒアリングを実施されています。審査基準は以下のとおりで、これに基づいて総合的な評価が行われました。
これらの審査基準により、5人の審査員が審査した結果、以下の結果になっています。(令和3年2月12日経済産業省中小企業庁経営支援部公表の公募審査(採択)結果より) 
上表の通り、株式会社パソナは平均87.2点を獲得して最高点となりました。 
また「大規模な補助金事業の実績を踏まえて具体的な提案がなされており、確実かつ早期の運用が可能と判断した。 実施体制についても、根拠に基づいて算出された要員が提案されている」という評価コメントも掲載されています。 

審査員はどんな人?

補助金の審査をする審査員は、一般的には外部の有識者によって実施されています。この外部の有識者とは、主に国などから委託を受ける税理士等の士業が中心となります。なかでも事業再構築補助金で事業計画を審査する審査員は、中小企業診断士がメインで行っています。審査は一般的に、一つの事業計画に対し、3~4名の体制でチェックを行います。例えば、2名が事業面、残りの2名が技術面や政策面を審査し、項目ごとに点数をつけていき、その合計点の上位から採択されます。また、審査員である外部識者は、本来の仕事もあるので多忙です。前もって申請書を熟読することは難しいうえ、限られた時間のなかで多くの申請書に目を通す必要があることから、ざっと読んで判りにくい申請書は低く評価される可能性があります。さらに、応募されてくる全ての事業内容に精通していることはまず不可能なので、事業計画は業界経験や知識がない方でも分かりやすく、見やすくなるように努力する必要があります。
著者

船着 貴弘

シェアビジョン株式会社取締役