事業再構築補助金の後継!「新事業進出補助金」創設

2024/12/09
この記事のポイント
  • ● 2025年、事業再構築補助金の後継「新事業進出補助金」が創設
  • ● 売上高100億円を目指す「中小企業成長加速化補助金」も登場
  • ● 省力化投資補助金はカタログ型以外のオーダーメイド形式が登場

はじめに

先日、新たな経済対策「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」の財源の裏付けとなる令和6年度補正予算が閣議決定され、現在、臨時国会で審議されています。

また、2024年12月6日には、中小企業庁のHPにて「令和6年度補正予算案 中小企業・小規模事業者等関連ポイント」が発表され、新たに事業再構築補助金の後継となる「新事業進出補助金」創設が明記されました。
事業再構築補助金は、2021年3月から始まり、多くの中小企業が注目・活用していた補助金でしたが、令和5年度補正予算では新規予算は計上されず、カタログ型の設備投資を支援する省力化投資補助金に基金が再編され、2024年7月の12回公募の締切以降、13回以降の公募が実施されるかは不確定なままでした。

基金の予算はまだ残っているため、あと数回の公募が実施されるのではないかという見方もありましたが、その既存基金の活用により、新補助金が創設されることになりました。

この記事では、事業再構築補助金のこれまでの推移を振り返りつつ、後継として新たに創設される「新事業進出補助金」と、中小企業生産性革命推進事業の一部として創設される「中小企業成長加速化補助金」や、現在公募受付中の省力化投資補助金について、中小企業庁の発表からポイントを解説します。

事業再構築補助金の推移

事業再構築補助金は、ウィズコロナ・ポストコロナ時代の経済環境の変化に対応するために、中小企業等の新分野展開、業態転換、業種転換等の思い切った「事業再構築」の挑戦を支援する補助金として、2021年3月に開始されました。

コロナ禍に苦しむ企業にスピーディーに対応するため、交付決定前の事業開始が認められる事前着手制度が導入されたり、建物費が補助対象経費になったりと、新しい試みが行われました。1者あたりの補助金が数千万円ともなる大規模な支援内容で、これまで12回の公募で8万者を超える事業者が採択されています。

コロナの影響による経済環境が変化していく中で、公募回毎に要件や補助金額なども変化し、申請枠も以下のように推移していきました。
事業再構築補助金は、2023年11月に実施された令和5年度秋のレビューにて、一時的な流行に乗じた類似案件や、事業化の検証が不十分である等の指摘を受け、有識者から抜本的な見直しを求められました。

そのため、2023年12月下旬~2024年1月上旬が予定されていた第11回公募の採択発表は延期となり、2024年2月14日に採択結果が発表されました。

採択率についても、それまでの第1~10回公募の採択率が約50%前後だったのに対し、第11・12回の採択率はどちらも約26%と非常に厳しくなりました。

第1回から第12回の採択率推移は、以下の記事でまとめています。
令和5年度秋のレビューでの指摘を受け、第12回公募は、申請枠の集約や、事前着手制度の原則廃止、全枠での売上減少要件の撤廃、口頭審査の実施など、さまざまな見直しが行われた上で、実施されました。

また、2023年12月に成立した令和5年度補正予算では、事業再構築補助金の新規予算は計上されず、基金の一部は中小企業省力化投資補助事業(省力化投資補助金)に再編されました。

事業再構築補助金の後継「新事業進出補助金」が登場!

2024年11月9日の第12回公募の採択発表以降も、事業再構築補助金13回公募の実施の有無については、具体的な発表がありませんでしたが、採択者数から推察できる予算の消化状況から、あと1回程度は実施されるのではないかという予想もありました。

2024年12月6日の中小企業庁の発表により、新事業進出補助金の創設が明記されました。
これは、既存基金を活用して1,500億円規模で行われるとされており、事業再構築補助金で活用されなかった分の予算が当てられると考えられます。

また、12月5日に中小機構が効率的・効果的な事業実施手法の情報提供を呼び掛けている資料には新事業進出補助金の事業目的と事業概要が掲載されていました。
人手不足や賃上げといった昨今の経済社会の変化の中で、中小企業等が成長する過程においては既存事業の拡大に加え、新たな事業の柱となる新事業への挑戦が重要。既存事業と異なる事業への前向きな挑戦であって、新市場・高付加価値事業への進出を後押しすることで、中小企業等が企業規模の拡大・付加価値向上を通じた生産性向上を図り、賃上げにつなげていくことを目的とする。
企業の成長・拡大を通した生産性向上や賃上げを促すために、中小企業等が行う、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への新規参入にかかる設備投資等を支援。
事業目的からも、企業の成長・拡大に向けた新規事業への挑戦(新規性)や賃上げ要件が主な要件として挙げられており、新市場進出という積極的な成長を検討している企業にとっては、注目の補助金になると言えるでしょう。

また、補助対象経費として、建物費が記載されています。建物費が対象となる補助金は限られるため、建物への設備投資を検討されている事業者にとってはチャンスとなります。ただ、事業再構築補助金でも後半は建物費の計上が厳しく審査されるようになったため、必要性を伝えるための綿密な事業計画が必須となります。

事業再構築補助金の後継と言っても、要件や申請枠の見直しではなく、全く新しい補助金となるため、事務局の公募から実施される可能性もあります。詳細はこれから明らかになっていくと思いますが、公募開始までは少し時間がかかるかもしれません。

生産性革命推進事業にも新補助金が創設

また、「新事業進出補助金」のほかに、中小企業生産性革命推進事業(ものづくり補助金、IT導入補助金、持続化補助金、事業承継・M&A(引継ぎ)補助金の4補助金の総称)の一部として、「中小企業成長加速化補助金」という、新たな補助金が創設されることも明記されました。
この補助金では、売上高100億円を目指す中小企業への設備投資支援や、中小機構による多様な経営課題(M&A・海外展開・人材育成等)への支援等が行われるようです。

この補助金には、中小企業生産性革命推進事業の令和6年度補正予算3,400億円のうちの1,000億円が充てられるとの情報があります。

省力化投資補助金は大幅改善の見込み

省力化投資補助金は、現在公募受付が随時行われていますが、活用できる製品カタログの拡充が十分でないことから、活用が想定通りに進んでいないと思われます。そのためか、現在進行中のカタログ型とは別の形で、省力化補助金の運用改善・拡充が行われる見通しです。
具体的には、個別発注でのオーダーメイド形式の省力化補助金が新設されるようです。カタログに登録されていない省力化製品でも活用できれば、今以上の業種・業態の事業者にとっても活用しやすい補助金に見直されると考えられます。これは、カタログ型と同じ省力化投資補助金の既存基金が活用されます。

まとめ

事業再構築補助金については、次の公募の有無について明言できない時期が続いていましたが、今回の中小企業庁の発表により、新補助金として、名称も変わって実施されることが明らかになりました。

従来の事業再構築補助金は補助金額も規模が大きく、新しい市場への挑戦を目論む企業にとっては魅力高い補助金でした。今回創設される「新事業進出補助金」の補助金額等はまだ明らかになっていませんが、こちらも人気の補助金になるのではと予想されます。

事業再構築補助金の第11回・12回公募は、非常に厳しい採択率でしたが、不採択の理由の一つとして、「事業再構築指針に沿った取組みだと読み取れない」という指摘がありました。補助金の採択にあたっては、申請する補助金の目的や指針に合わせて、説得力のある事業計画が作れるかどうかが重要になります。

新事業進出補助金をはじめ、その他、補助金を活用した設備投資を検討されている事業者の方は、ぜひ一度、認定支援機関にご相談ください。