第12回公募採択に向けた事業計画書作成のポイント

2024/05/27
【この記事の重要ポイント】

はじめに

事業再構築補助金は、令和5年度の秋のレビューにて、一時的な流行に乗じた類似案件や、事業化の検証が不十分である等の指摘を受けました。その結果、審査中であった第11回公募の採択発表は、予定よりも大幅に遅れ、採択率も26.47%と非常に厳しい審査結果となりました。・第11回公募の各申請枠による応募と採択結果
第11回公募は、前回よりも応募が1,614件減少し、全体の採択率は26.5%と前回の48.1%と比べて大幅に低下しました(21.6%減)。大幅に採択率が低下した要因は公表されておりませんが、2023年10月13日に事務局より「事業再構築補助金申請書の要件不備」について通知があり、「事業再構築指針で定められた必須要件を満たしていない等の理由で、評価が著しく低い申請が散見されます」との記載がありました。秋のレビューでの指摘を受け、第11回公募でも審査が厳格化されたと考えて良いでしょう。

第12回公募において採択されるためには、事業再構築指針で定められた必須要件を満たすとともに、公表された審査項目に沿った計画書を作成することが重要です。

そこで本記事では、第12回公募に向けた事業計画書作成のポイントについて、説明します。

審査項目を押さえた事業計画の策定を

事業再構築補助金に採択されるためには、補助金の趣旨に合致した事業計画であることが必要です。そのため、補助金の趣旨に合致した事業計画であるかを判断するにあたって、審査項目が設定されています。

第12回公募では、審査項目が大幅に変更となりました。公表されている審査項目のうち、全ての申請枠に共通するのは「補助対象事業としての適格性」「新規事業の有望度」「事業の実現可能性」「公的補助の必要性」「政策点」の5項目です。事業計画作成の際には、これらの項目をおさえて記載することが重要です
・補助対象事業としての適格性
①補助対象事業(各事業類型)の要件を満たすか。補助事業終了後3~5年で付加価値額を年平均成長率3.0%~5.0%(事業類型により異なる)以上の増加等を達成する取組みであるか。

補助対象事業の要件は、各事業類型によって定められています。事業計画を策定する前に、自社の取り組みが、申請する事業類型の要件を満たしているかを確認しましょう。
②事業再構築指針に沿った取組みであるか。

事業再構築補助金では、事業再構築指針で定められた必須要件を満たすことが申請条件となっていますので、まず自社の新事業がどの類型に該当するのかを考えたうえで、その内容を事業計画書に落とし込んでいく必要があります。

まず1ページ目で、製品・サービスに事業者にとっての新規性があること、及び新製品・新サービスを通して既存事業と異なる市場に進出すること等、取り組む事業が、事業再構築指針に沿っていることを、明確に示さなくてはなりません。

1ページ目の内容で、この前提要件を満たしていないと判断された場合には、不採択となり、以降の事業計画書自体が審査の対象外となるため、非常に重要な項目となります。
・新規事業の有望度
①補助事業で取り組む新規事業が、自社がアプローチ可能な範囲の中で、継続的に売上・利益を確保できるだけの規模を有しているか。成長が見込まれる市場か。

補助事業で取り組む新規事業が進出する市場が、成長が見込まれる市場であることを示します。グラフ等を使って市場規模を客観的な数値で示すことができると、説得力が増します。また、その市場で自社が継続的に売上を確保できることを、具体的なターゲット等を示して、アピールします。

②補助事業で取り組む新規事業が、自社にとって参入可能な事業であるか。
免許や許認可等が必要な事業であれば、その取得状況や取得予定を記載し、制度的にも参入障壁をクリアできることを、明確にします。
また、ビジネスモデル上、調達先の変更が起こりにくい事業ではなく、新規参入の余地があることを記載します。

③競合分析を実施した上で、顧客ニーズを基に、競合他社と比較して、自社に明確な優位性を確立する差別化が可能か。
競合分析は、審査項目の中でも特に重要な項目です。分析の手法としては、「5フォース分析」「PEST分析」「3C分析」「SWOT分析」「4P分析」等があります。これらのフレームワークを使って、自社が置かれている状況を客観的に分析し、その上で、競合他社との競争にどう打ち勝っていけるかという優位性をアピールします。

・事業の実現可能性
①事業化に向けて、中長期での補助事業の課題を検証できているか。また、事業化に至るまでの遂行方法、スケジュールや課題の解決方法が明確かつ妥当か。

事業再構築補助金だけに関わらず、補助金は国民の税金が原資となっているため、事務局ではそれが有効に正しく活用されるかどうかを見極める必要があります。そのため、取り組む事業が問題なく実現できることを明確に示すことが重要です。
現在の課題や、取り組む上で発生すると予想される課題に対し、どのように解決し、対応していくかを示します。また、いつ、何をするのかという、実施スケジュールも明確に記載します。

②最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか。金融機関等からの十分な資金の調達が見込めるか。

財務状況からも事業の実現可能性について評価されます。自己資本比率や流動比率などから、自社の財務体質に問題がないことをアピールします。決算書の営業利益が思わしくない場合は、その要因を具体的に記載した上で、今期の着地見込などから、財務状況に問題なく、補助事業が遂行できることを記載すると良いでしょう。また、相談している金融機関等があれば、具体的な名称を挙げ、資金調達の見込みについても記載するようにします。

③補助事業を適切に遂行し得る体制(人材、事務処理能力等)を確保出来ているか。
(第三者に過度に依存している事業ではないか。過度な多角化を行っているなど経営資源の確保が困難な状態となっていないか。)

社内体制等を記載した上で、誰がどのような役割を担っていくかを明確に記載し、問題なく補助事業を遂行できることを示します。

・公的補助の必要性
①川上・川下への経済波及効果が大きい事業や社会的インフラを担う事業、新たな雇用を
生み出す事業など、国が補助する積極的な理由がある事業はより高く評価。

国の政策に沿った事業は、高く評価されます。経済波及効果の大きさや、社会的意義、脱炭素社会実現への貢献等、取り組む事業の中に、国の政策と一致する内容があれば、積極的にアピールしましょう。

②補助事業として費用対効果(補助金の投入額に対して増額が想定される付加価値額の規模、生産性の向上、その実現性、事業の継続可能性等)が高いか。

付加価値額の増加について、申請類型の要件を満たすことはもちろんですが、売上増加の計画に対して、投入する金額が大き過ぎないかを検証する必要があります。事業の内容により一概には言えませんが、投資額が3年以内に回収できるような計画が立てられると良いでしょう。

③先端的なデジタル技術の活用、新しいビジネスモデルの構築等を通じて、地域やサプライチェーンのイノベーションに貢献し得る事業か。

④本補助金を活用して新たに取り組む事業の内容が、ポストコロナ時代の経済社会の変化に対応した、感染症等の危機に強い事業になっているか。

⑤国からの補助がなくとも、自社単独で容易に事業を実施できるものではないか。 
補助金があるからこそ、思い切った事業再構築にチャレンジできるという、必要性をアピールします。

・過剰投資の抑制
2023年11月に発表された秋のレビューでは、シミュレーションゴルフ、セルフエステ、サウナ、フルーツサンド販売店等の特定の内容に偏っているという指摘がありました。そこで、第12回公募では、一定期間に特定のトピックの申請が集中した場合、一時的流行による過剰投資となる可能性があるため、別途審査が行われます。その結果、過剰投資と判断された申請に関しては、大幅な減点となるため、採択される可能性が非常に低くなると考えられます。

加点項目の取得は積極的に

事業再構築補助金の審査項目には、一定の要件を満たすことで審査上の加点を得られる加点項目があります。事業再構築補助金の採択の可否は事業計画書に基づいて審査されますが、加点項目を満たしていると審査において有利となることから、採択の可能性も高まります。

第12回公募に基づく審査項目は以下の通りです。
①のコロナ借換加点は、応募申請時に既往債務を抱えていることが条件になっており、返済が完了している場合は加点とならないので、注意が必要です。

⑨⑩の賃上げについての加点は、加点を受けた上で採択されたにもかかわらず、その加点要件を達成できなかった場合は、次に申請する他の補助金(ものづくり補助金、IT導入補助金、小規模事業者持続化補助金、省力化投資補助金等)申請において大幅に減点されます。そのため、加点として申請するかどうかは実現性を考慮して、慎重に決める必要があるでしょう。

事業再構築補助金で設けられている加点項目取得のハードルはさまざまですが、なかには比較的に取得しやすい項目もあるため、第12回公募の申請を予定している場合は、加点項目の取得も見据えて早期に準備を始めることが必要です。

口頭審査の実施

第12回公募から、一定の審査基準を満たした事業者の中から、口頭審査が実施されることになりました。審査基準の詳細や、どの程度の割合で実施されるかは明らかになっていません。口頭審査は、電子申請が完了した事業者から受験日時の予約案内がされます。後の方になると、選択できる日時が限られてしまいます。口頭審査の対象になったにも関わらず、口頭審査を決まった日時に受けることができなかった場合は、不採択となってしまうため、早めに申請を行うことをお勧めします。

まとめ

事業再構築補助金の第12回公募は審査の厳格化が明言されており、第11回公募の採択率を鑑みても、採択率は厳しくなることが予想されます。まずは、公募要領をしっかりと読み込むことで、事業再構築の目的や趣旨を理解し、説得力があるかつ実現可能性が高い計画書作成を目指しましょう。

事業再構築補助金第12回公募の申請を検討されておりましたら、ぜひお早めに認定支援機関までご相談ください。
著者

事業再構築補助金編集部