【この記事の重要ポイント】
第12回公募では、審査項目が大幅に刷新。採択されるためには、審査項目を押さえた、事業計画書の作成が重要。
加点項目は、一つでも多い方が有利。取得できる項目がないか、必ず確認すべき。取得には時間がかかるものもある。
はじめに
件数 | 成長枠 | グリーン | 産業構造 | 最低 | 物価高騰 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|
応募件数 | 2,508 | 597 | 242 | 189 | 5,671 | 9,207 |
採択件数 | 698 | 187 | 53 | 48 | 1,451 | 2,437 |
採択率 | 27.8% | 31.3% | 21.9% | 25.3% | 25.5% | 26.5% |
第12回公募において採択されるためには、事業再構築指針で定められた必須要件を満たすとともに、公表された審査項目に沿った計画書を作成することが重要です。
そこで本記事では、第12回公募に向けた事業計画書作成のポイントについて、説明します。
審査項目を押さえた事業計画の策定を
第12回公募では、審査項目が大幅に変更となりました。公表されている審査項目のうち、全ての申請枠に共通するのは「補助対象事業としての適格性」「新規事業の有望度」「事業の実現可能性」「公的補助の必要性」「政策点」の5項目です。事業計画作成の際には、これらの項目をおさえて記載することが重要です。・補助対象事業としての適格性
①補助対象事業(各事業類型)の要件を満たすか。補助事業終了後3~5年で付加価値額を年平均成長率3.0%~5.0%(事業類型により異なる)以上の増加等を達成する取組みであるか。
補助対象事業の要件は、各事業類型によって定められています。事業計画を策定する前に、自社の取り組みが、申請する事業類型の要件を満たしているかを確認しましょう。
参考記事:「事業再構築補助金第12回公募 コロナ回復加速化枠を徹底解説!」
参考記事:「12回公募が発表!サプライチェーン強靭化枠が実施に」
事業再構築補助金では、事業再構築指針で定められた必須要件を満たすことが申請条件となっていますので、まず自社の新事業がどの類型に該当するのかを考えたうえで、その内容を事業計画書に落とし込んでいく必要があります。
まず1ページ目で、製品・サービスに事業者にとっての新規性があること、及び新製品・新サービスを通して既存事業と異なる市場に進出すること等、取り組む事業が、事業再構築指針に沿っていることを、明確に示さなくてはなりません。
1ページ目の内容で、この前提要件を満たしていないと判断された場合には、不採択となり、以降の事業計画書自体が審査の対象外となるため、非常に重要な項目となります。
①補助事業で取り組む新規事業が、自社がアプローチ可能な範囲の中で、継続的に売上・利益を確保できるだけの規模を有しているか。成長が見込まれる市場か。
補助事業で取り組む新規事業が進出する市場が、成長が見込まれる市場であることを示します。グラフ等を使って市場規模を客観的な数値で示すことができると、説得力が増します。また、その市場で自社が継続的に売上を確保できることを、具体的なターゲット等を示して、アピールします。
②補助事業で取り組む新規事業が、自社にとって参入可能な事業であるか。
免許・許認可等の制度的な参入障壁をクリアできるか。
ビジネスモデル上調達先の変更が起こりにくい事業ではないか。
また、ビジネスモデル上、調達先の変更が起こりにくい事業ではなく、新規参入の余地があることを記載します。
③競合分析を実施した上で、顧客ニーズを基に、競合他社と比較して、自社に明確な優位性を確立する差別化が可能か。
代替製品・サービスを含め、競合は網羅的に調査されているか。
比較する競合は適切に取捨選択できているか。
顧客が商品やサービスの購入を決める際に重視する要素や判断基準は明らかか。
自社が参入して、顧客が商品やサービスの購入を決める際に重視する要素や判断基準を充足できるか。
自社の優位性が、容易に模倣可能なもの(導入する機械装置そのもの、営業時間等)となっていないか。
・事業の実現可能性
①事業化に向けて、中長期での補助事業の課題を検証できているか。また、事業化に至るまでの遂行方法、スケジュールや課題の解決方法が明確かつ妥当か。
事業再構築補助金だけに関わらず、補助金は国民の税金が原資となっているため、事務局ではそれが有効に正しく活用されるかどうかを見極める必要があります。そのため、取り組む事業が問題なく実現できることを明確に示すことが重要です。
現在の課題や、取り組む上で発生すると予想される課題に対し、どのように解決し、対応していくかを示します。また、いつ、何をするのかという、実施スケジュールも明確に記載します。
②最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか。金融機関等からの十分な資金の調達が見込めるか。
財務状況からも事業の実現可能性について評価されます。自己資本比率や流動比率などから、自社の財務体質に問題がないことをアピールします。決算書の営業利益が思わしくない場合は、その要因を具体的に記載した上で、今期の着地見込などから、財務状況に問題なく、補助事業が遂行できることを記載すると良いでしょう。また、相談している金融機関等があれば、具体的な名称を挙げ、資金調達の見込みについても記載するようにします。
③補助事業を適切に遂行し得る体制(人材、事務処理能力等)を確保出来ているか。
(第三者に過度に依存している事業ではないか。過度な多角化を行っているなど経営資源の確保が困難な状態となっていないか。)
社内体制等を記載した上で、誰がどのような役割を担っていくかを明確に記載し、問題なく補助事業を遂行できることを示します。
・公的補助の必要性
①川上・川下への経済波及効果が大きい事業や社会的インフラを担う事業、新たな雇用を
生み出す事業など、国が補助する積極的な理由がある事業はより高く評価。
国の政策に沿った事業は、高く評価されます。経済波及効果の大きさや、社会的意義、脱炭素社会実現への貢献等、取り組む事業の中に、国の政策と一致する内容があれば、積極的にアピールしましょう。
②補助事業として費用対効果(補助金の投入額に対して増額が想定される付加価値額の規模、生産性の向上、その実現性、事業の継続可能性等)が高いか。
付加価値額の増加について、申請類型の要件を満たすことはもちろんですが、売上増加の計画に対して、投入する金額が大き過ぎないかを検証する必要があります。事業の内容により一概には言えませんが、投資額が3年以内に回収できるような計画が立てられると良いでしょう。
③先端的なデジタル技術の活用、新しいビジネスモデルの構築等を通じて、地域やサプライチェーンのイノベーションに貢献し得る事業か。
④本補助金を活用して新たに取り組む事業の内容が、ポストコロナ時代の経済社会の変化に対応した、感染症等の危機に強い事業になっているか。
⑤国からの補助がなくとも、自社単独で容易に事業を実施できるものではないか。
補助金があるからこそ、思い切った事業再構築にチャレンジできるという、必要性をアピールします。
・過剰投資の抑制
2023年11月に発表された秋のレビューでは、シミュレーションゴルフ、セルフエステ、サウナ、フルーツサンド販売店等の特定の内容に偏っているという指摘がありました。そこで、第12回公募では、一定期間に特定のトピックの申請が集中した場合、一時的流行による過剰投資となる可能性があるため、別途審査が行われます。その結果、過剰投資と判断された申請に関しては、大幅な減点となるため、採択される可能性が非常に低くなると考えられます。
加点項目の取得は積極的に
第12回公募に基づく審査項目は以下の通りです。
加点項目 |
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①コロナで抱えた債務の借り換えを行っている事業者に対する加点(コロナ借換加点) |
②コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)申請事業者に対する加点 |
③経済産業省が行う EBPM の取組への協力に対する加点 |
④パートナーシップ構築宣言を行っている事業者に対する加点 |
⑤事業再生を行う者(再生事業者)に対する加点 |
⑥特定事業者であり、中小企業者でない者に対する加点 |
⑦サプライチェーン加点 |
⑧健康経営優良法人に認定された事業者に対する加点 |
⑨大幅な賃上げを実施する事業者に対する加点 |
⑩事業場内最低賃金引上げを実施する事業者に対する加点 |
⑪ワーク・ライフ・バランス等の取組に対する加点 |
⑫技術情報管理認証制度の認証を取得している事業者に対する加点 |
⑨⑩の賃上げについての加点は、加点を受けた上で採択されたにもかかわらず、その加点要件を達成できなかった場合は、次に申請する他の補助金(ものづくり補助金、IT導入補助金、小規模事業者持続化補助金、省力化投資補助金等)申請において大幅に減点されます。そのため、加点として申請するかどうかは実現性を考慮して、慎重に決める必要があるでしょう。
事業再構築補助金で設けられている加点項目取得のハードルはさまざまですが、なかには比較的に取得しやすい項目もあるため、第12回公募の申請を予定している場合は、加点項目の取得も見据えて早期に準備を始めることが必要です。
口頭審査の実施
まとめ
事業再構築補助金第12回公募の申請を検討されておりましたら、ぜひお早めに認定支援機関までご相談ください。
事業再構築補助金編集部
認定支援機関(認定経営革新等支援機関※)である、シェアビジョン株式会社において、80%以上の採択率を誇る申請書を作成してきたメンバーによる編集部が監修・執筆しています。
当社は、2017年の会社設立以来、ものづくり補助金や事業再構築補助金等の補助金申請サポートをはじめとしたコンサルティングサービスを提供してまいりました。『顧客・従業員のビジョンを共有し、その実現をサポートすることで社会の発展と幸福を追求する』を経営理念とし、中小企業の経営者のビジョンに寄り添い、ビジネスの課題を解決するための手助けをしています。支援してきたクライアントは1,300社以上、業界は製造業、建設業、卸売業、小売業、飲食業など多岐に渡ります。このブログでは、中小企業の経営者にとって有益な情報を分かりやすくお届けしてまいります。
※認定経営革新等支援機関とは?
中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にあると国が認定した経営相談先です。全国各地に3万箇所以上の認定支援機関があり、税理士、税理士法人、公認会計士、中小企業診断士、商工会・商工会議所、金融機関、経営コンサルティング会社等が選出されています。認定支援機関を活用することで、補助金申請だけでなく、財務状況、財務内容、経営状況に関する調査・分析までを支援するため、自社の経営課題の「見える化」に役立ちます。