事業再構築補助金第12回公募 成長分野進出枠を徹底解説!

2024/05/01

はじめに

事業再構築補助金は、昨年11月の行政事業レビューにおける有識者からの指摘を踏まえ、抜本的な見直しを行った上で、2024年4月23日(火)から第12回公募を実施することが発表されました。
第12回公募では、複雑との指摘もあった支援枠を5枠→3枠へ簡素な形に見直し、全ての申請枠においてコロナ債務を抱える事業者に加点措置を講じ、支援を重点化することになりました。

第11回公募から第12回公募における申請枠の変更は以下の通りです。
本記事では、成長分野進出枠(通常類型、GX進出類型)について、説明します。

全枠共通の必須要件

事業再構築補助金第12回公募では、全枠共通の必須要件が設けられています。まずはこの、全枠共通の必須要件から確認していきましょう。
共通要件
①の事業再構築指針に示す「事業再構築」とは、「新市場進出」「事業転換」「業種転換」「事業再編」「国内回帰」「地域サプライチェーン維持・強靭化」の6類型を指します。「国内回帰」「地域サプライチェーン維持・強靭化」はサプライチェーン強靭化枠の申請でのみ選択可能であるので、成長分野進出枠では、「新市場進出」「事業転換」「業種転換」「事業再編」から選択することになります。既存事業を拡大させるだけでなく、新たな製品等で新たな市場に進出する、主な事業を転換する、主な事業を転換するといった、新たな取り組みが必要となります。②は、第11回までの公募から変更点があります。これまでは、認定経営革新等支援機関の確認を受けていることが要件で、補助金額が 3,000 万円を超える案件にはそれに加え金融機関の確認を受けていることが要件となっていました。
第12回公募では、補助金額に関わらず、金融機関等から借り入れをして補助事業を実施する場合は、借入先の金融機関等による事業計画の確認を受ける必要があります。自己資金のみで補助事業を実施する場合は、認定経営革新等支援機関による事業計画の確認のみで要件を満たします。

③の年平均成長率の要件は、3.0~5.0%の間で申請類型により異なる数値が設定されています。

事業再構築補助金第12回公募では、第11回公募の「成長枠」が見直され、新たに「成長分野進出枠」に変更となりました。以下で、それぞれの類型について解説していきます。

成長分野進出枠(通常類型)

成長分野進出枠における通常類型では、ポストコロナに対応した、成長分野への大胆な事業再構築にこれから取り組む事業者や、国内市場縮小等の構造的な課題に直面している業種・業態の事業者が取り組む事業再構築を支援します。

・補助金額・補助率等
※短期な大幅な賃上げとは、補助事業期間内に事業場内最低賃金を年額45円以上の水準で引上げること、補助事業期間内に給与支給総額を年平均6%以上増加させることの両方が必要となります。
・補助対象要件
共通要件①②に加え、
③の付加価値額要件では、補助事業終了後3~5 年で付加価値額の年平均成長率4.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年平均成長率 4.0%以上増加する見込みの事業計画を策定することが必要になります。

また、成長分野進出枠(通常類型)では、【市場拡大要件】か【市場縮小要件】のどちらかを満たす必要があります。

【市場拡大要件】は、取り組む事業が、過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属していることが必要になります。業界団体が要件を満たすことについて示した場合、その業種・業態が指定業種として指定されます。第11回公募までに公表された業種・業態は引き続き対象となります。

製造業や卸売業の多くやインバウンド顧客をターゲットとした宿泊業等が対象となっています。指定された業種・業態以外であっても、応募時に要件を満たす業種・業態であることについて、客観的な統計等で示すことで、事務局の審査で認められた場合が対象となりますが、まずは自社が取り組む事業がリストに入っているかどうかを、確認しましょう。
【市場拡大要件】で申請する場合には、事業終了後3~5年で給与支給総額を年平均成長率2%以上増加させることも必須要件となります。

【市場縮小要件】は、現在の主たる事業が過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上縮小する業種・業態に属しており、当該業種・業態とは別の業種・業態の新規事業を実施すること、又は地域における基幹大企業が撤退することにより、市町村内総生産の10%以上が失われると見込まれる地域で事業を実施しており、当該基幹大企業との直接取引額が売上高10%以上を占めることが要件になります。

成長分野進出枠(GX進出類型)

成長分野進出枠におけるGX進出類型では、ポストコロナに対応した、グリーン成長戦略「実行計画」14 分野の課題の解決に資する取組をこれから行う事業者の事業再構築を支援します。 
グリーン成長戦略「実行計画」14 分野とは
グリーン成長戦略とは、太陽光発電やバイオ燃料などの「グリーンエネルギー」を積極的に導入・拡大することで、環境を保護しながら産業構造を変革し、社会経済を大きく成長させようとする国の政策です。脱炭素社会を目指して、政府が現時点で考えるエネルギー政策とこれからのエネルギー需給の見通しが2050年までのロードマップとして示されており、これから成長が期待される産業(14分野)に対し高い目標が設定されています。
グリーン成長戦略における14分野は以下の通りです。
・補助金額・補助率等
※短期な大幅な賃上げとは、補助事業期間内に事業場内最低賃金を年額45円以上の水準で引上げること、補助事業期間内に給与支給総額を年平均6%以上増加させることの両方が必要となります。
・補助対象要件
共通要件①②に加え、
③の付加価値額要件では、補助事業終了後3~5 年で付加価値額の年平均成長率4.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年平均成長率 4.0%以上増加する見込みの事業計画を策定することが必要になります。

また、事業終了後3~5年で給与支給総額を年平均成長率2%以上増加させること、グリーン成長戦略「実行計画」14 分野に掲げられた課題の解決に資する取り組みであることも必須要件となります。

補助事業実施期間が、成長分野進出枠(通常類型)よりも2か月長く設定されているので、導入予定設備の納期に時間がかかることが分かっている場合は、この枠で申請できないか検討してみても良いかもしれません。

事業再構築補助金は、基本的に1回しか活用できませんが(申請して不採択になった場合は、何度でも申請できます)、これまでに(第1回~11回公募)にグリーン成長枠以外で採択されている補助金交付候補者として採択されている又は交付決定を受けている事業者でも、この成長分野進出枠(GX進出類型)で以下の要件を満たせば、2回目の申請が可能となります。
ただし、過去にグリーン成長枠で補助金交付候補者として採択されている事業者は、応募することはできません。また、支援を受けることができる回数は2回が上限となります。

GX進出類型に関わる変更点として、過去公募回のグリーン成長枠で提出が求められていた「研究開発・技術開発計画書」又は「人材育成計画書」が今回公募では不要になりました。

第12回公募での申請に向けた注意点

①上乗せ措置の申請
「成長分野進出枠(通常類型、GX進出類型)」に申請する場合、「卒業促進上乗せ措置」または「中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置」に同時に申請することが可能です。

②事前着手制度の廃止
第11回公募まで実施していた事前着手制度ですが、第12回公募回からは原則廃止となります(経過措置として、一部の申請枠で、今回の公募回のみ認められるケースがありますが、成長分野進出枠は全て対象外です)。いかなる理由であっても事前着手は認められないため、事業の開始(導入設備の発注等)は、交付決定後に行わなければ補助金を受け取ることができません。

③口頭審査の実施
口頭審査は、一定の審査基準を満たした事業者の中から必要に応じて行われます。本事業に申請された事業計画について、事業の適格性、革新性、優位性、実現可能性等の観点について審査されます。
【口頭審査期間:調整中】

④第12回公募の実施スケジュール
第12回公募におけるスケジュールは以下の通りです。
2024年4月23日(火)より第12回公募が開始されました。申請開始日は現時点で調整中となっていますが、応募締切は2024年7月26日(金)までとなり、約3ヵ月と余裕のあるスケジュールになっていると言えます。しかし、第12回公募以降のスケジュールについては未定となっており、多くの事業者が第12回公募にて申請されることが予想されるため、採択の可能性を上げるためには、事業計画書の策定にしっかりと時間をかけて準備することが重要です。

まとめ

事業再構築補助金第12回公募での「成長分野進出枠」は、第11回公募までの「成長枠」「産業構造転換枠」「グリーン成長枠(エントリー)(スタンダード)」が、集約された申請枠となります。補助金額も大きく、対象となる事業者の数も多いため、申請数は最も多くなると思われます。

事業再構築補助金の活用をお考えの事業者の方は、第12回公募での申請をご検討の上、申請についてお困りでしたら、どうぞお早めに認定支援機関までご相談ください。
著者

事業再構築補助金編集部