事業再構築補助金第12回公募要領が発表!

2024/04/26

はじめに

3月末には公募が再開されると見込まれていた事業再構築補助金の第12回公募ですが、2024年4月23日、公募要領が発表されました。

 

第12回公募までの主な経緯は、以下の記事に記載しています。

参考記事:事業再構築補助金第12回公募に向けて

 

第12回公募の再開がここまで遅くなったのも、抜本的見直しの体制構築に時間がかかったということでしょう。

 

このコラムでは、公募要領から分かった主な変更点等を解説していきます。


事業再構築補助金第12回公募の実施スケジュール

公募開始日は、2024年4月23日となっています。事業再構築補助金の補助対象者は、日本国内に本社を有する中小企業者等及び中堅企業等となっています。公募開始時点で、補助対象者としての要件を満たしている必要があります。

公募締切は、2024年7月26日となっています。補助金申請準備には約2か月の時間がかかるとされていますが、今回の公募回では、公募発表から締切まで3か月ほどあるため、すぐに準備を始めれば、比較的余裕のあるスケジュールであると言えるでしょう。

採択発表は、2024年10月下旬~11月上旬頃(予定)となっています。その後交付申請を行い、交付決定後に設備の発注を行うとなると(実際の採択発表日や設備の納期等にもよりますが)、設備の導入は2025年2月以降になると見込んでおいた方が良さそうです。

事業再構築補助金第12回公募での主な変更点

●支援枠の集約

事業再構築補助金は、これまでも公募回により公募枠の変更が繰り返されてきましたが、第10回公募では、「成長枠」「グリーン成長枠」「産業構造転換枠」「サプライチェーン強靭化枠」「最低賃金枠」「物価高騰対策・回復再生応援枠」と6つの公募枠がありました(第11回公募は、「サプライチェーン強靭化枠」を除く公募枠で実施されました)。

第12回公募では、グリーン成長枠が廃止され、成長分野進出枠の中でGX進出類型として設置されました。また、コロナで債務を抱える事業者の取組を重点的に支援するよう、コロナ回復加速化枠が設置されました。第12回公募は、以下の3つの枠、5つの類型のいずれかでの申請になります。
①成長分野進出枠
成長分野進出枠(通常類型)
成長分野への大胆な事業再構築に取り組む事業者や、国内市場縮小等の構造的な課題に直面している業種・業態の事業者が取り組む事業再構築を支援。
この枠では、【市場拡大要件】となる、取り組む事業が、過去~今後のいずれか 10 年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属していることか、【市場縮小要件】となる現在の主たる事業が過去~今後のいずれか 10 年間で、市場規模が 10%以上縮小する業種・業態に属しており、当該業種・業態とは別の業種・業態の新規事業を実施することのどちらかを満たす必要があります。また、【市場拡大要件】を選択する場合は、事業終了後3~5年で給与支給総額を年平均成長率2%以上増加させることも要件となります。

成長分野進出枠(GX進出類型)
ポストコロナに対応した、グリーン成長戦略「実行計画」14 分野の課題の解決に資する取組をこれから行う事業者の事業再構築を支援。
過去(第1回~11回公募)にグリーン成長枠以外で採択されている事業者でも、既に事業再構築補助金で取り組んでいる又は取り組む予定の補助事業とは異なる事業内容であることを示す【別事業要件】と、既存の事業再構築を行いながら新たに取り組む事業再構築を行うだけの体制や資金力があることを示す【能力評価要件】を満たせば、グリーン成長枠で2回目の申請が可能となります。

GX進出類型に関わる変更点として、過去公募回のグリーン成長枠で提出が求められていた「研究開発・技術開発計画書」又は「人材育成計画書」が今回公募では不要になりました。

成長分野進出枠では、いずれの補助上限額、補助率において()内は、短期に大幅な賃上げを行う場合に適用される補助上限額、補助率になります。大幅な賃上げとは、事業終了時点で①事業場内最低賃金+45円、②給与支給総額+6%を達成すること、両方を満たす必要があります。

②コロナ回復加速化枠
コロナ回復加速化枠(通常類型)
今なおコロナの影響を受け、コロナで抱えた債務の借り換えを行っている事業者や、事業再生に取り組む事業者の事業再構築を支援。

この申請枠は、コロナで債務を抱える事業者の取組を重点的に支援するために設置されたため、「コロナ借換保証※等で既往債務を借り換えていること」または、「再生事業者であること」が必須要件になります。 ※コロナ借換保証等については、後述

コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)
コロナ禍が終息した今、最低賃金引上げの影響を大きく受ける事業者の事業再構築を支援。
この申請枠は、対象経費や補助事業実施期間も他の申請枠とは大きく異なるため、公募要領も別になっています。詳細は、別の記事で解説していきます。

●事前着手制度の原則廃止

交付決定前に補助事業を開始された場合は、原則として補助金の交付対象とはなりません。事業再構築補助金では、例外的に交付決定前に開始した事業でも交付対象となる、事前着手制度が導入されていましたが、今回から事前着手制度の原則廃止となりました。

ただし、今回の公募に限り、第10回、第11回公募の物価高騰対策・回復再生応援枠又は最低賃金枠での不採択者はコロナ回復加速化枠に、第10回公募でのサプライチェーン強靭化枠での不採択者はサプライチェーン強靭化枠への申請が可能となりました。

この制度により対象となる経費は、事前着手申請が認定され、令和4年12月2日以降に発注または購入したものになります。これまで同様、交付決定前に事前着手申請が認定されたとしても、採択されるとは限りません。

●全申請枠で売上減少要件の撤廃

第10回公募まで、事業再構築補助金には、事業の継続が困難となっていることを証明する「売上高等減少要件」が全枠共通の必須要件として含まれていました。

第11回公募からは、「売上高等減少要件」が必須要件から撤廃され、売上高が減少していない事業者でも申請が可能になっていましたが、「最低賃金枠」および「物価高騰対策・回復再生応援枠」の対象要件には、「売上高等減少要件」が含まれていました。

第12回公募からは、全ての申請枠で売上減少要件が撤廃されました。

●コロナ債務を抱える事業者への加点措置

第12回公募では、コロナ債務を抱える事業者への加点措置が導入されました。応募申請時において、コロナ借換保証等で既往債務を借り換えていることにより、どの申請枠で応募しても加点の対象となります。

※コロナ借換保証等とは、下記の制度を指します。
(1)伴走支援型特別保証(コロナ借換保証)
(2)コロナ経営改善サポート保証
(3)新型コロナウイルス感染症特別貸付
(4)生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付
(5)新型コロナ対策資本性劣後ローン
(6)生活衛生新型コロナ対策資本性劣後ローン
(7)[新型コロナ関連]マル経融資
(8)[新型コロナ関連]生活衛生改善貸付
(9)[新型コロナ関連]沖縄雇用・経営基盤強化資金

これは、応募申請時において、既往債務を借り換えていることが必要で、過去に上記の制度を利用した実績があっても、完済している場合は対象になりません。

また、コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)に申請すること自体が加点の対象となっているため、要件を満たせば、こちらで申請するのが最も採択される可能性が高くなりそうです。

●採択審査システムにおけるAI での類似案件排除機能を強化

第12回公募では、採択審査システムにAIが導入されることが発表されました。これにより、事業計画書の文章及び添付画像ファイルの情報解析によって重複率を算出し、それを踏まえて、審査を行うとされています。これまで一時的流行による特定のトピックに偏っていた類似案件を排除する機能が強化され、審査が厳格化されます。
また、一時的流行による過剰投資誘発の恐れがあると、別途審査が行われます。審査によって、過剰投資と判断された場合は大幅な減点が実施されてしまいます。

●口頭審査の実施

「一定の基準」を満たした事業者の中から、必要に応じて口頭審査が実施されます。審査内容としては事業の適格性や革新性、優位性、実現可能性等の観点からzoom等のオンラインにて15分程度行われます。
どのような基準なのかや口頭審査期間については発表されていませんが、電子申請が完了した先着順で日時の予約ができます。ただし、都合の良い日時に空きがなくても個別の相談はできないうえ、口頭審査の対象になって受験しなければ不採択となってしまうため、早めの申請が望ましいと言えます。

●その他

成長分野進出枠(通常類型)及び(GX進出類型)と、コロナ回復加速化枠(通常類型)及び(最低賃金類型)では、「卒業促進上乗せ措置」または「中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置」を追加で申請することができます。

まとめ

事業再構築補助金第12回公募では、ポストコロナに対応した事業再構築をこれから行う事業者を支援する「成長分野進出枠」、今なおコロナの影響を受ける事業者を支援する「コロナ回復加速化枠」、国内サプライチェーンの強靭化に資する取組みをこれから行う事業者を支援する「サプライチェーン強靭化枠」に申請の枠組みが集約されました。第12回公募における詳しい内容については、今後のコラムでも解説していきます。

第11回公募の採択発表から時間が空き、さらに第12回公募以降の実施スケジュールは未定であるため、今回の第12回公募には多くの事業者の応募が集まることが予想できます。また、第11回公募の採択率が低かったことを考えると、事業計画書の策定において、採択される可能性を高めるには、入念な準備が重要となります。事業再構築補助金の活用を検討している事業者の方は、どうぞお早めにご相談ください。
著者

事業再構築補助金編集部