新築建物の対象可否は?事業再構築補助金第6回採択結果から解説

2022/10/18
事業再構築補助金を活用して建物を新築する場合は新築の必要性が認められた場合のみ補助対象となるか判断されます。第6回公募の採択結果から新築建物が対象可否となるかどうかの傾向について事例をもとに解説します。

事業再構築補助金の新築建物の考え方

第6回公募の改正事項にて、原則として建物の新築費用は補助対象経費外になりました。
しかし、新築費用が必ずしも全て対象外経費になったわけではありません。

建物を新築する場合、新築することが補助事業の実施に真に必要不可欠であり、既存の建物を改築する等の代替手段がないことを「新築の必要性に関する説明書」を添付書類として提出しなければなりません。このように、新築として建屋を建設する場合は注意が必要となります。

第6回採択結果から対象可否を解説

令和4年9月に採択発表のあった事業再構築補助金第6回の採択結果から、採択時は新築の建物が経費として入っている場合でも、事象に該当するか可否することなく合否判断されます。
よって、新築の建物が含まれている場合、「条件付き採択」という形で採択となります。

対象可否の判断について
新築建物の対象可否について、採択後の交付申請時に見積書・相見積書を添付し、交付申請書を提出した後に審査されます。そのため、採択されたとしても交付申請書の内容によって新築の建物は対象外経費となる場合があります。

新築が必要である理由

①建物の実施に必要不可欠であること
建物を新築しないと補助事業の実施ができないということを示す必要があります。そのため、近隣のテナント等を賃借や内装工事を行えば事業が開始できる場合は、新築の必要性が低いと捉えられ、棄却される可能性が高いと言えます。

②既存の建物を改築する等の代替手段が無いこと
既存の建物をそもそも所有していない、既存建物はあるが補助事業とは全く異なる商圏で計画が達成困難、既存建物の改修が構造的に不可能や著しく事業が困難である場合は、合理的な説明が求められます。

新築の必要性を認めるケース

〈事例①〉
生鮮魚介類の加工業を手掛けている事業者が、新たに冷凍加工食品事業に進出するため、新たに冷凍倉庫が必要になる。
加工工場から最も近い冷凍倉庫の空きスペースまでは車でも一定の時間を要するため、その場合冷凍輸送費が発生し補助事業の採算が取れない。(輸送費のコスト増加によって経済上合理的でない)
よって、既存の加工工場に隣接する場所に冷凍倉庫を新設することが最も経済効率的である。

〈事例②〉
山間部の農家が、畑から採れたての野菜を用いて新たにレストラン運営を行うため、新たに店舗が必要となる。
当該農家は現在所有している事業用の建物が無いうえ、事業の実施を計画している地域に購入が可能な既存の建物が無い。(補助事業実施に必要不可欠、代替性なしに該当)
加えて、ブランド構築の観点からは、畑に隣接する場所でレストラン運営を行うことが最も望ましいため、新たにレストラン用の建物を新築することが必要不可欠になる。

新築の必要性が認められないケース

〈事例①〉
温泉旅館を営む事業者がワーケーション需要に応える新事業を行うため、温泉客向けの既存の宿泊施設では対応できないため、ワーケーション向けの離れの新築を検討。
→しかし、既存事業がコロナによる需要減少で客室の稼働率が下がっているため、既存事業を縮小し、空いている客室を改修することでワーケーション需要を受け入れる体制を整えることができる。
→ワーケーション向けの宿泊施設を新築する必要性はない。
(新築ではなく、「既存宿泊施設の改修)であれば、対象経費となる可能性があると考えられます。)

〈事例②〉
本社建物と工場を別にする金属製品製造事業者が、新たに金属製品販売業に進出するため、人員を増強して新たな営業部門を設置する。老朽化した本社建物が手狭になるため、既存の本社建物を取り壊して建て替えることを検証。
→しかし、新たな営業部門用のオフィススペースは、既存の貸しオフィスの賃貸やリモートワークで代替可能であり、本社建物の老朽化は補助事業と無関係であるため、本社建物の建て替えは必要ない。

事業再構築補助金は第8回公募が最終となる可能性があります。事業再構築を検討されており、お考えの建物が対象経費となり得るかわからない方は認定支援機関にご相談ください。
著者

小林 卓矢

シェアビジョン株式会社代表取締役