事業再構築補助金第12回公募に向けて

2024/03/29

はじめに

事業再構築補助金は、コロナ禍で売上が落ち込んだ中小企業に業態転換や新事業への進出を促すため、2兆4,000億円の予算を確保して2021年3月に開始しました。1者あたりの補助金が数千万円ともなる大規模な支援内容で、これまで11回の公募で約8万者が採択されてきました。

事業再構築補助金12回公募概要

事業再構築補助金はコロナ禍での中小企業支援を目的に実施されていましたが、内容の大幅な見直しが求められ、2024年2月中旬の第11回公募採択発表以降、新規公募を中断しています。第12回公募は実施の見込みですが、スケジュール等は明らかになっていません。

見直しが求められた補助金体制

事業再構築補助金は、特例的に事前着手が認められたり、建物が補助対象となったりと過去に例を見ない補助金制度でしたが、流行に乗っかる安易な事業計画の申請が相次いだり、コンサルティング会社が作った同じ計画書の使いまわしが疑われる申請があったりといった問題も多発していました。

そこで、2023年11月に内閣官房行政改革推進本部事務局が実施した「令和5年度秋の年次公開検証(「秋のレビュー」)」にて、有識者から抜本的な見直しを求められました。これにより、当初2023年12月下旬~2024年1月上旬が予定されていた採択発表は延期となり、12月8日には、審査に時間を要しているとして、採択発表が2024年1月下旬~2月上旬頃へ延期される旨が通知されました。

最終的に、採択結果は2月13日に発表されましたが、応募のあった9,207者のうち、採択されたのは2,437者となり、採択率は26.47%となりました第1回から第10回公募までの採択率は、約50%前後で推移していたことを考えると、審査が非常に厳格化したことがうかがえます

事業再構築補助金12回公募変更点予測まとめ

① 6つから3つへの支援枠の集約
② 事前着手制度の廃止
③ 審査の厳格化
④ 借り換え保証付き融資を受けた事業者への大幅加点

第12回公募に向けた制度の見直し① 支援枠の集約
2023年11月28日付の日刊工業新聞によると、「成長枠」「グリーン成長枠」「産業構造転換枠」「サプライチェーン強靭化枠」「物価高騰対策・回復再生応援枠」「最低賃金枠」と6つあった支援枠を、①成長分野進出枠、②コロナ回復加速化枠、③サプライチェーン強靭化枠の3枠に集約すると報じられています。

また、ニッキンオンラインによると、見直し前に枠を設けて支援していた事業者のGX(グリーントランスフォーメーション)や賃上げは、①②の枠内に類型を作って申請を促す形になりそうです。

第12回公募に向けた制度の見直し② 事前着手制度の廃止
これまでの補助金は、採択後交付決定がされてから、発注などの補助事業を始めるのが原則でしたが、事業再構築補助金では、コロナ禍で苦しい状況の中小企業等をスピーディーに支援するため、交付決定前でも補助事業を開始することができる、事前着手制度が特例的に設けられていました。しかし、既存事業に使われる施設の改修など、補助対象として認められない資金の使い方が目立ったとして、事前着手制度は廃止になりそうです。

第12回公募に向けた制度の見直し③ 審査の厳格化
令和5年度秋のレビューでは、サウナやシミュレーションゴルフ、セルフエステなど一時的な流行に乗った事業の申請が増加したことや効果の検証が不十分であること等が指摘されました。これを受け、今後の採択審査ではAIを活用して同じ計画書の使い回しなどを防止し、一定期間に特定のトピックの申請が集中した場合に、これを検知し、審査を厳格化するといいます。

事業再構築補助金自体に厳しい目が向けられていることからも、事業計画にはこれまで以上の説得力と実現性が求められるでしょう。また、採択率も厳しくなることが予測できるため、設備投資の内容によっては、省力化投資補助事業 カタログ枠、IT導入補助金、省エネ補助金等、他の補助金を活用することも選択肢となってくるかもしれません。

第12回公募に向けた制度の見直し④ 加点の変更
加点とは、公募要領に記載されている加点項目に関して、事務局が設定している審査基準をクリアすることにより、審査項目の点数に、点数が加算されることを指します。補助金の審査では、複数の審査員が審査項目に対して点数をつけ、その点数によって、採択・不採択が決定しますが、加点が多ければ、それだけ採択される可能性が高まります。

第11回公募での加点は、以下の通りでした。

①大きく売上が減少しており業況が厳しい事業者に対する加点
2022 年 1 月以降のいずれかの月の売上高が対 2019~2021 年の同月比で 30%以上減少 していること(又は、2022 年 1 月以降のいずれかの月の付加価値額が、対 2019~2021 年の同月比で 45%以上減少していること)。

②最低賃金枠申請事業者に対する加点
指定の要件を満たし、最低賃金枠に申請すること。

③経済産業省が行う EBPM の取組への協力に対する加点
データに基づく政策効果検証・事業改善を進める観点から、経済産業省が行う EBPM の取 組に対して、採否に関わらず、継続的な情報提供が見込まれるものであるか。

④パートナーシップ構築宣言を行っている事業者に対する加点 ※成長枠、グリーン成長枠
「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイト(https://www.biz-partnership.jp)において宣言を公表している事業者。

⑤再生事業者に対する加点

⑥特定事業者であり、中小企業者でない者に対する加点

⑦サプライチェーン加点
複数の事業者が連携して事業に取り組む場合であって、同じサプライチェーンに属する事
業者が、以下を満たし、連携して申請すること。 
⑧健康経営優良法人に認定された事業者に対する加点
令和 4 年度に健康経営優良法人に認定されていること。
※健康経営優良法人認定事務局ポータルサイト
https://www.kenko-keiei.jp/

⑨大幅な賃上げを実施する事業者に対する加点 ※成長枠、グリーン成長枠
事業実施期間終了後3~5 年で以下の基準以上の賃上げを実施すること(賃上げ幅が大き いほど追加で加点)。
1.給与支給総額年率平均3% 
2.給与支給総額年率平均4% 
3.給与支給総額年率平均5%

⑩事業場内最低賃金引上げを実施する事業者に対する加点 ※最低賃金枠
事業計画期間終了までの間、事業場内最低賃金を以下の水準とすること(水準が高いほど 追加で加点)。
1.地域別最低賃金より+30 円以上
2.地域別最低賃金より+50 円以上

⑪ワーク・ライフ・バランス等の取組に対する加点
応募申請時点で、以下のいずれかに該当すること。
1. 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)に基づく認定
(えるぼし1段階目~3段階目又はプラチナえるぼしのいずれかの認定)を受けている者又は従業員数 100 人以下であって、「女性の活躍推進データベース」に女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を公表している者
※厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」
https://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/positivedb/

2. 次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づく認定(くるみん、トライくるみん又はプラチナくるみんのいずれかの認定)を受けた者又は従業員数 100 人以下であって、「一般事業主行動計画公表サイト(両立支援のひろば)」に次世代法に基づく一般事業主行動計画を公表している者
※厚生労働省「一般事業主行動計画公表サイト(両立支援のひろば)」
https://ryouritsu.mhlw.go.jp/hiroba/search_int.php) 
第12回公募においても、これらの多くの加点項目は継続される可能性が高いと思われます。

また、ニッキンオンラインによると、事業再構築補助金の第12回公募では、審査では借り換え保証付き融資を受けた事業者への大幅な加点を検討していると言います。中小企業庁は、100%保証のゼロゼロ融資などを、保証付きのまま借り換えられる制度の利用期限を6月末まで延長しました。中小企業庁によれば2022年6月末時点の融資実績は全国で約234万件、42兆円とされており、このコロナ関連融資の返済を開始する事業者の返済開始時期が2023年7月~2024年4月に集中しているため、返済に向けた収益力の回復や借換保証制度の活用を含めた資金繰りの検討が課題となっていました。
これを加点項目とすることで、この資金繰り支援策と再構築補助金を併用できる環境を整え、事業者の立ち直りを後押ししたいという政府の考えが伺えます。

事業再構築補助金はいつまで

事業再構築補助金は、第12回公募を行うことまでは発表されていますが、それ以降については未だ発表がありません。令和5年度補正予算として新たに計上された予算はなく、すでに計上されている予算での実施となります。また、事業再構築補助金の予算は、省力化投資補助事業(カタログ枠)に再編されることになっているため、第12回公募がラストチャンスになる可能性もあります。事業再構築補助金の活用を検討されている事業者の方は、第12回公募に向け万全の準備を行っていくことをお勧めします。

まとめ

事業再構築補助金は、「ポストコロナ・ウィズコロナの時代の経済社会の変化に対応するために中小企業等の事業再構築を支援することで、日本経済の構造転換を促す」という趣旨の補助金でしたが、令和5年秋のレビューにて、「新型コロナ対策としての役割は終わりつつあるので、基金のうちそれにかかる部分は廃止し、もしくは抜本的に事業を構築し直すべき」等の指摘を受け、大幅な見直しが求められました。そのため、第11回の採択発表から、第12回の公募要領発表までに時間がかかっていますが、3月末には発表となる可能性が高いでしょう。また、事業再構築補助金は第12回公募がラストチャンスになる可能性もあります。事業再構築補助金の活用を検討されている事業者の方は、お早めにご相談ください。
著者

事業再構築補助金編集部