事業再構築補助金は、2022年12月に令和4年度第2次補正予算が成立し、令和5年度も引き続き継続することが予定されました。
第10回公募から補助率や補助金額が大幅に変更されており、事業再構築補助金を利用したいと考えている事業者は、注意が必要です。
この記事では、事業再構築補助金第10回公募の変更点を説明し、第11回の公募についてスケジュールを推測していきます。
第10回公募の実施スケジュール
公募開始 | 令和5年3月30日(木) |
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応募締切 | 令和5年6月30日(金)18:00まで(厳守) |
採択発表 | 8月下旬~9月上旬予定 |
各申請枠の全体像(第10回公募以降)
第10回公募からの主な変更点
第9回公募までコロナの影響で業状が厳しい事業者を支援する枠として募集された「通常枠」は、第10回公募から市場規模が10%以上拡大する業種・業態への転換を支援する「成長枠」に変更されました。主な変更点は以下の3つです。
①必須要件から「売上高減少要件」が撤廃
これまで、事業再構築補助金には、事業の継続が困難となっていることを証明する「売上高等減少要件」が全枠共通の必須要件として含まれていました。
しかし、令和5年度からは、「売上高等減少要件」が必須要件から撤廃され、売上高が減少していない事業者でも申請が可能になりました。
※「最低賃金枠」および「物価高騰対策・回復再生応援枠」の対象要件には、「売上高等減少要件」が含まれています。
②一部補助上限額の引上げ
③補助率の引き下げ
・補助上限額、補助率の比較
2.グリーン成長枠の拡充
グリーン分野での事業再構築を通じて高い成長を目指す事業者を対象とした「グリーン成長枠」を継続して、要件を緩和した類型(エントリー)を創設しました。
3.大幅賃上げ・規模拡大へのインセンティブ
成長枠とグリーン成長枠のみを対象に、上乗せ枠を設けて更なる支援措置を行います。
4.産業構造転換枠の創設
産業構造転換枠は、国内市場の縮小等の産業構造の変化などにより、事業再構築が強く求められる業種・業態の事業者に対し、補助率を引上げる等により重点的に支援されます。
また、対象経費に廃業費が追加され、廃業費がある場合は補助上限額が最大2,000万円上乗せされます。
5.サプライチェーン強靭化枠の創設
サプライチェーン強靭化枠は、海外で製造する部品等の国内回帰を進め、国内サプライチェーンの強靱化および地域産業の活性化に取り組む事業者を対象として、サプライチェーン強靱化枠を新設し、補助上限額を最大5億円まで引き上げて支援されます。
6.業況が厳しい事業者への支援
第9回公募までの、回復・再生応援枠と緊急対策枠を統合し、新たに「物価高騰対策・回復再生応援枠」として措置します。コロナや物価高等により業況が厳しい事業者や、最低賃金引上げの影響を大きく受ける事業者を引き続き手厚く支援します。
7.一部申請類型における複数回採択
事業再構築補助金では、原則として1事業者につき採択は1回ですが、グリーン成長枠は過去に採択された事業者でも、再度申請し採択されることが可能になっています。
今回から、これに加えて産業構造転換枠とサプライチェーン強靱化枠についても、一定の条件下で過去採択された事業者の再申請・採択を可能とします。ただし、支援を受けることができる回数は2回が上限です。
8.その他
①社会福祉法人の補助対象範囲拡大
「介護職員の働く環境改善に向けた政策パッケージ」の一環として、介護事業の生産性向上を支援するため、社会福祉法人においては、公的保険制度の範囲外で行う事業を収益事業とみなすこととし、補助対象となる法人の範囲を拡大します。
②労働者協同組合を補助対象者に追加
ⅰ)令和4年10月1日に施行された「労働者協同組合法」に基づき設立された労働者協同組合を、補助対象者に追加します。※従業員数が300人以下である者に限る。
ⅱ)なお、同法において、NPO法人又は企業組合は、同法の施行後3年以内に労働者協同組合に組織変更可能とされているところ、第9回までに採択されたNPO法人又は企業組合が労働者協同組合に組織変更することも認めることとします。
③事前着手制度の対象期間及び対象類型の見直し
ⅰ)交付決定前に事業に着手できる「事前着手承認制度」の対象期間を、令和4年度第二次補正予算の成立日である2022年12月2日以降に見直します。
ⅱ)この制度を活用できる事業類型を最低賃金枠、物価高騰対策・回復再生応援枠、サプライチェーン強靱化枠に限定します。
④産業雇用安定助成金との連携
業況の厳しい事業者が行う事業再構築を人材の育成・確保の面から効果的に促すため、令和5年度より産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)(仮称)が創設される予定です。
第10回公募から、「事業再構築補助金」は大きく変わりました。
なお、次回第11回の公募については、2021年から2.3カ月ごとに新しい公募が始まっていることから、申請開始は7月上旬、締め切りは9月下旬~10月上旬になると考えられます。
事業再構築補助金の申請を検討されている方は、認定支援機関にご相談ください。
著者
小林 卓矢
シェアビジョン株式会社代表取締役
1979年5月生まれ。 2002年に明治学院大学卒業後、株式会社エフアンドエム(東証JASDAQ上場)へ入社。 事業本部長として、中小企業向けに事業計画策定による金融支援から各種補助金申請のコンサルティングサービスの新規事業を立ち上げ、ものづくり補助金では2000社以上の企業を支援する。経済産業省主催の中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン策定検討会に検討委員として、ガイドライン策定にも関与。 入社当初の起業の目標を実現すべく、2017年5月にシェアビジョン株式会社を設立し、現在に至る。